蒸気機関車技術の発展とは? わかりやすく解説

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蒸気機関車技術の発展

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/03 01:45 UTC 版)

鉄道車両の歴史」の記事における「蒸気機関車技術の発展」の解説

ジョージ・スチーブンソンは、馬車鉄道延長で4 フィート 8.5 インチ (1,435 mm) の標準軌定めた。しかし満足な機関車造るためにはこれでは不足であるとの主張もあった。イザムバード・キングダム・ブルネルは、グレート・ウェスタン鉄道建設に際して7 フィート 0.25 インチ (2,140 mm) の広軌採用した。これにより、当時工作精度でも余裕持って機関車製造することができ、安定して高速走行をすることも可能になった。こうして標準軌広軌の「軌間戦争」が勃発した広軌機関車確かに技術的に優れており、高速性能でも牽引性能でも優秀であった。しかし、既に標準軌鉄道網大きく延びており、標準軌広軌接続する地点乗り換えをしなければならず、貨物積み替えをしなければならない手間対す苦情は、常に少数派広軌の側に持ち込まれた。技術的に優れていても、経済的現実的な問題により広軌軌間戦争敗北することになり、ブルネル亡き後グレート・ウェスタン鉄道でも標準軌への改軌進められていった最終的に1892年5月20日広軌蒸気機関車グレート・ブリテン号」が牽引するロンドンパディントン駅10時15分出発するペンザンス行き急行「コーニッシュマン号」を最後に、わずか2日間という速度改軌工事が行われて最後広軌線路イギリスから消滅した一方この頃逆に狭軌鉄道技術開発行われていた。蒸気機関車実用的に動かすためには標準軌最小であると当初考えられていたが、やがて建設費抑えたいという要求から狭軌開発された。世界で最初実用狭軌鉄道は、ベルギーアントウェルペンとセントニコルスの間に1844年11月開通した軌間は3 フィート9 インチメートル法丸めた1,100 mmであった。またノルウェーでは3 フィート 6 インチ (1,067 mm) の狭軌鉄道開通し、これは日本オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカなどに影響することになった。ただしベルギーノルウェーではその後標準軌改軌されている。狭軌建設費安く抑えられるため、山がちな国や発展途上国植民地などで広く採用されることになった工作精度の低い時代には、ピストン車輪高速回転させることができず、低い回転数で高い速度を出すためには大きな動輪を必要とした。このため、1軸の動輪極端に大きく作った「シングルドライバー型」 (single driver) が発展していった。しかし動輪大型化には限界があり、また1軸のみの動輪では牽引力不足するため、やがて新しい形式の機関車開発されていった新形式は、主に車軸の数を増やしていく方向発展した。そしてその発展は主にアメリカ牽引していた。初期には貧弱な線路対応するために機関車技術発展させていたが、やがてアメリカ線路世界でも最高レベル規格のものへ改良されていき、その中で世界最大クラス蒸気機関車用いられるようになっていった。その過程新しい車軸配置機関車次々投入され4-6-0テンホイラー」(Ten-Wheeler、1854年)、2-6-0「モーガル」(Mogul1860年)、2-8-0コンソリデーション」(Consolidation1866年)、2-10-0デカポッド」(Decapod、1867年)、2-8-2ミカド」(Mikado1883年)、4-6-2パシフィック」(Pacific1889年)、4-4-2アトランティック」(Atlantic1894年)と発展していった。 ボイラーでの蒸気発生量増やすためには、火室広げて石炭を燃やす面積増やす必要があるこのため動輪後ろ従輪取り付けて火室後ろ広げた形式考えられた。これが車軸配置2-8-2の「ミカド」である。ミカド型の最初機関車1883年造られていたが、これは火室広げるための従輪ではなかった。火室広げるために従輪取り付けるという本来のミカド型の発想によって造られ最初機関車は、日本鉄道向けにボールドウィン1897年製作した9700形で、日本向けであることから天皇別称から「ミカド」の名前がボールドウィンによって付けられた。また4-6-2の「パシフィック型」でも、同様にニュージーランド向けの1902年製造機関車火室増大図られこうした狭軌鉄道向けの機関車から広火室本格的に始められた。 弁装置は、蒸気機関シリンダー蒸気供給し排出するタイミング制御し前進後進切り替えたカットオフ制御して蒸気節約したりするための装置である。初期の機関車にはスチーブンソン考案したスチーブンソン式弁装置用いられていた。1844年ベルギー国鉄技師ワルシャート (Egide Walschaerts) はワルシャート式弁装置考案したドイツのホイジンガー (Heusinger) が改良したため、ホイジンガー式とも呼ばれる。この弁装置はその優秀性から広まりその後蒸気機関車時代終焉まで用いられ続け装置となった一方でアメリカにおいては広大な大地長距離渡って走行しその間満足な整備できないという事情から、摺動部分がなく整備の手間が少なベーカー式弁装置開発され普及した蒸気機関車ではボイラー蒸気作ってシリンダー供給している。蒸気は、液体の水から沸騰させて作った段階ではまだ多量水分含んでおり、飽和蒸気呼ばれる。これをさらに加熱して水分を完全に蒸気変換して温度上げたものは過熱蒸気呼ばれる過熱蒸気使った方がより効率よくなるということから、蒸気機関車でも過熱蒸気を使う取り組み行われてきた。最初に取り組んだのは1852年のロンドン・アンド・ノース・ウェスタン鉄道技師マッコーネルであり、さらに欧米各国様々な実験試みられたがうまくいかなかった。初め成功したのはドイツのヴィルヘルム・シュミット (Wilhelm Schmidt) で1891年のことであった。さらにベルギー国鉄技師長J.B.フラム助言で、煙管内に過熱管を引き回す構成1901年完成させ、シュミット過熱蒸気システムはたちまち全世界蒸気機関車に広まることになったボイラー作った蒸気を、高圧シリンダー先に通し、まだ圧力残っている高圧シリンダーからの排気低圧シリンダーに通すという2段階に分けて利用する方式複式機関車コンパウンド)という。複式に対して従来方式単式シンプル)という。複式では、蒸気の持つ熱エネルギー有効に引き出して熱効率向上することができる。複式発想蒸気機関車歴史比較初期からあり、1850年イギリスのイースタン・カウンティー鉄道ジョン・ニコルソンとジェームス・サムエルソンによって特許取られている。しかし実用に足る機関車実際に造られたのは1876年のことで、スイスアナトール・マレー設計によるフランス機関車であったマレーはさらに工夫進め蒸気機関車を2車体連結にし、高圧シリンダー使った後の蒸気低圧シリンダー搭載されている車体送って使うマレー式機関車発明したマレー式を含む複式機関車はしばらく各国用いられたが、過熱蒸気システム普及するメリット薄くなり、操作保守不便さからフランス除いてあまり見られなくなったフランスでは精緻な機関車性能最大限引き出そうとする発想から最後まで複式用いられ続け小型機関車でも世界最大アメリカ機関車匹敵する出力実現できるほどに発展した世界最大出力を持つ蒸気機関車として知られるアメリカのビッグボーイマレー式呼ばれることがあるが、これは2車体連結ではあるものの複式ではない。 蒸気機関車シリンダーの数は、通常左右それぞれに1つずつの2つで、複式場合高圧低圧組み合わせられるため4つになる。イギリスでは4気筒でも単式燃費向上ではなくじ車限界内での出力増大内外シリンダー駆動逆にすることで振動抑える目的機関車開発されフランス複式4気筒と共に使われていたが、両者とも大型化が進むにつれクランク車軸がゆがみやすくなる車軸クランク2つあり強度落ちる)という問題発生し中央のクランク1つにした3シリンダー機の方がクランクウェブの厚みが取れ馬力化に有利で、トルク変動2・4気筒が1回転に4回なのに対し3気筒は6回に分散するためトルクのむらが少なく振動減少するという計算がされたが、てこで外側シリンダー動きをすぐ内側シリンダー位相逆なので複雑な機構いらない)で動かせばいい4シリンダー対し専用バルブをつけて中央シリンダーを動かさなければいけないため整備しにくいという欠点があり、改良案としてイギリスロンドン・アンド・ノース・イースタン鉄道技師ナイジェル・グレズリーは、2つ弁装置から延びるてこで3気筒駆動するグレズリー式連動弁装置開発して自社機関車使用したが、こちらは前方からすぐに保守ができる代わりにこまめに整備しないと中央シリンダー動きにずれが生じてクランク損傷につながるので一長一短で、イギリスなど内側シリンダー整備慣れていたところでは撤去専用バルブをつける)されるなどの改造受けたものもあった。 こうして発展してきた蒸気機関車は、ロンドン・アンド・ノース・イースタン鉄道のA4形蒸気機関車の1両、4468号機「マラード」 (Mallard) により、1938年7月3日203 km/hという世界最高速度記録達成した。これは2008年現在まで破られていない蒸気機関車世界最高速度である。この機関車国立ヨーク鉄道博物館保存されている。

※この「蒸気機関車技術の発展」の解説は、「鉄道車両の歴史」の解説の一部です。
「蒸気機関車技術の発展」を含む「鉄道車両の歴史」の記事については、「鉄道車両の歴史」の概要を参照ください。

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