液体の水
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/27 08:39 UTC 版)
詳細は「火星上の水(英語版)」を参照 生命の痕跡を求めて火星のレゴリスを初めて試験したのは、バイキングである。NASAの最近のミッションは、火星の表面には過去に湖や海など、液体の水が存在したことがあったのかということに焦点が絞られている。その結果、水の存在下で形成される赤鉄鉱が発見された。多くの科学者はこれを火星の多様な地形に基づく自明の証拠と捉えたが、風による浸食や酸素の海など、別の説明を提案する者も出た。そこで、2004年のマーズ・エクスプロレーション・ローバーのミッションの目的は、現在や過去の生物の痕跡を探すことではなく、過去に惑星上に液体の水が存在した証拠を探すこととされた。 2000年6月、水路のような構造が見つかり、現在も地下を水が流れている証拠とされた。惑星の液体核近くまで沈降する、地表深くを流れる水は、今日の生物の生息地を作ったと考えられた。しかし、2006年3月、月にも同じような水路状の構造が発見されたことが発表された。これは水の流れた跡だとは到底考えられず、微小な隕石が衝突した結果だと考えられた。 2004年3月、NASAは探査機オポチュニティが、火星は過去に濡れた惑星であった証拠を発見したと発表した。この発見により、火星の過去の生命の存在に希望が生まれた。2004年1月、欧州宇宙機関(ESA)はマーズ・エクスプレスを用い、火星の南極付近で大量の氷の蓄積を直接的に検出した。 2005年7月28日、ESAは火星の北極付近で地表面の氷を撮影することに成功したと発表した。 2006年12月、NASAは、火星の表面で洪水が起きていたことを示唆するマーズ・グローバル・サーベイヤーからの写真を公開した。写真では水自体は直接見えなかったが、クレーターや堆積物が変化し、数年前まで水の流れがあり、もしかすると今もあるかもしれないことを示す、これまでで最も強力な証拠となった。地形の変化は水が原因だとする説に懐疑的な科学者もいて、彼らは砂や泥など別の物質の流れでも似たような地形が形成できると主張した。 軌道上の望遠鏡から得られたデータを用いた、最近の火星の砂岩の分析によって、かつて火星の表面に存在した水は塩分が高く、地球で見られるような生命は存在できないことを示唆した。トスカらは、火星の水は水分活性がaw ≦ 0.78 - 0.86と、地球のほとんどの生命であれば死に絶える程のレベルであることを示した。しかし、高度好塩菌であれば、飽和点に達するまでの超高濃度の塩分溶液中でも生きることができる。 2008年5月に火星の北極の平原に着陸したNASAの探査機フェニックスは、地表面近くに氷の存在を確認した。これは、探査機の掘削アームに付着した明るい色の物質が3、4日で蒸発し、無くなったことで確認された。これは、掘削によって露出した表面付近の氷が、大気への露出によって昇華したためと考えられている。 2018年7月、イタリア国立宇宙物理学研究所等からなる国際天文学チームが、マーズ・エクスプレスの2012年から2015年にかけてのレーダー観測のデータから、火星の南極の厚さ1.5kmの氷床の下に、幅20kmにわたって水とみられる層が存在するとの論文を発表した。この地底湖は、マイナス70℃と極めて低温ながら氷床の圧力と高い塩分濃度などにより液体の状態が維持されていると推測されている。研究チームは、生命にとって厳しい環境ながら単細胞生物が生存している可能性があると述べている。
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