液体の蒸発の場合
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/23 09:09 UTC 版)
一方、液体が蒸発するときにもエネルギーが必要なことは、沸騰のときと比べると少し実感しにくい。水に濡れた食器や衣服は、乾燥機を使わなくても自然に乾くからである。乾燥機を使ったときのエネルギー源は、先の例と同じように電気エネルギーである。それに対して、自然に水が蒸発して乾くときのエネルギー源は、食器や衣服、そして周りの空気である。食器や衣服や空気のエネルギーが熱として水に与えられ、このエネルギーにより水が水蒸気に変化する。液体が蒸発するときに周りから熱を吸収することは、以下の実験により確認できる。 準備: 消毒用アルコールとスポイトと料理用のデジタル温度計を用意する。 操作: デジタル温度計の感温部(温度センサー部)に、スポイトで消毒用アルコールを一滴たらす。 観察1: デジタル温度計の表示温度が低くなる。 観察2: 適当に表示温度が低くなったあとは、表示温度はあまり変化しなくなる。 この実験の観察1では温度計の感温部からエネルギーが熱として放出されている。というのは、温度計の表示温度は、感温部が熱を吸収すると上昇し、逆に感温部が熱を放出すると低下するものだからである。感温部の周りの空気の温度は、アルコールをたらす前の感温部の温度とほぼ同じと考えられるので、感温部から熱を受け取っているのはアルコールである。温度計の表示温度が変化しなくなるのは感温部に正味の熱の出入りがなくなったときだから、観察2では、周りの空気や温度計のほかの部分から感温部に流れ込んでくる熱量と、アルコールに奪われる熱量とが釣り合っている。したがって、この実験では、温度計と空気がアルコールの蒸発に必要なエネルギーの源になっている。
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