控訴取り下げ・異議申し立てとは? わかりやすく解説

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控訴取り下げ・異議申し立て

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/19 07:44 UTC 版)

藤沢市母娘ら5人殺害事件」の記事における「控訴取り下げ・異議申し立て」の解説

死刑判決不服として控訴した被告人Fだったが、東京高裁開かれる控訴審第1回公判初公判期日前の1989年平成元年5月6日夜に収監先・東京拘置所職員対し「もう助からないから控訴をやめる」と言い出した。同高裁11刑事部開かれた公判でも「もう助からないから控訴やめたい」と発言した。これに対し裁判長は「重要な事項なので、(控訴取り下げる場合は)弁護人とよく相談してから決めるように」と説諭したが、被告人Fは同年12月28日にも拘置所職員に「控訴取り下げ死刑確定させろ。上司会いたい早くしてくれ」と言い張るなどしたほか、その後拘置所職員接見のために同拘置所訪れた弁護人に対してもしばしば「控訴取り下げたい」という趣旨発言をしていた。このため弁護人その度被告人Fを説得して控訴取り下げ思い留まらせつつ、東京拘置所職員にも「Fの『控訴取り下げ要求取り上げないでほしい」などと依頼するなどしていた。 1990年平成2年3月13日被告人Fは東京拘置所職員対し電波で音が入ってきてうるさい。生き地獄が辛い。早く確定して死刑になって死にたい」などと発言した東京高裁1991年平成3年4月10日第11回公判で、弁護人かねてから請求していた被告人Fの犯行時・現在の精神状態に関する精神鑑定採用したが、その際にFは「精神鑑定拒否する要求が容れられないなら控訴取り下げる」などと発言し8日後(1991年4月18日)には東京拘置所控訴取下必要な手続書類交付強く求めた。この事実東京拘置所から連絡され弁護人岡崎敬同月23日被告人Fと接見し控訴取り下げないよう説得したが、Fはそれに応じず、弁護人との接見拘置所職員による事情聴取などの手続を経て控訴取下書」用紙の交付を受け、所要事項記入して同日付の控訴取下書を作成し、それを東京拘置所長に提出した。 これにより、公判第11回目まで開かれた時点中断する格好となったが、弁護団は以下のような理由から「控訴取り下げ効力には疑義がある」と表明した被告人Fは「控訴取り下げの意味理解しておらず「控訴取り下げれば死刑判決確定する」とは思っていなかった。Fに対してそれまで裁判所による精神鑑定が行われておらず、被告人Fはその精神鑑定回避する目的控訴取り下げた被告人Fは深刻な拘禁症状ノイローゼ)を発症しており弁護団ともまともな意思疎通できない状態にある。 1991年5月10日被告人Fは東京高裁から審尋受けて控訴取下提出動機経緯など真意質問された際に「裁判所訴訟関係人の質問に対してはあまり多くを語らなかったが「控訴取下書は自ら作成したものだ」と認めた上で、それを作成した動機は「本当無罪になって娑婆出たいが、世界で一番強い人に『生きているのがつまらなくなる』魔法かけられたり『10年間の生き地獄にする』と言われたりしているので毎日がとても苦しい。『控訴取り下げれば早く死刑になって楽になれる』と思ったからだ」と供述した。これを受け、東京高裁はその供述鑑みて被告人Fの現在の精神状態、特に被告人Fが控訴取下書を提出した時点で『控訴取り下げなどの行為訴訟上持つ意味を理解して行為する能力』(=訴訟能力)があったか否か」を含め慶應義塾大学医学部名誉教授医師保崎秀夫精神鑑定命じた鑑定人・保崎は関係記録検討して1991年6月10日 - 8月20日まで(約2か月間に)、計6回にわたり被告人Fに面接し精神鑑定作業進めたが、Fはその間も保崎の再三亘る説得聞き入れず身体的精神的検査拒否したため、保崎はやむを得ず被告人Fとの面接結果」を中心に鑑定行い1991年9月13日付で東京高裁精神鑑定書を提出した東京高裁が「死刑判決対す控訴取り下げ」という「訴訟法上重大な効果を伴うもの」である本件に関して「その効力有無慎重に検討する目的1991年11月18日鑑定人・保崎に対す証人尋問行い、「被告人Fの精神状態把握」「被告人Fの訴訟能力有無に関する疑問点解消努めたところ、証人尋問で保崎は「被告人Fは現在(鑑定当時拘禁反応の状態にはあるが、本件控訴取り下げ書を作成提出した時点において『控訴取り下げなどの行為訴訟有する意味を理解行為する能力』は多少問題があったとしても失われているほどではない」とする結論示した。その一方で被告人Fは1991年10月 - 11月にかけ、実母の手紙で一転して控訴取り下げ撤回する意思表示をしている。 1992年平成4年1月22日弁護人東京高裁へ「本件控訴取下げ当時被告人Fの訴訟能力とりわけ主体的合理的な判断能力)の存在には大きな疑問があるため、本件控訴取下げ無効すべきである」などとする趣旨意見書千葉大学法経学部助教授後藤昭作成)を提出した。しかし、東京高裁11刑事部小泉祐康裁判長)は同年1月31日付で以下のように「控訴取り下げ被告人F自身の『死への願望』というやや特殊な動機だが、被告人本人真意であるため取り下げは有効である」とする決定出した被告人F自身控訴審初公判で「もう助からないから控訴取り下げたい」と発言したり、取り下げ提出後東京高裁質問対し「『控訴取り下げれば早く死刑になって楽になれる』と思った」と回答した精神鑑定結果で「被告人Fの精神拘禁反応の状態にはあるが、『控訴取り下げの意味理解する能力』は多少問題はあるにしても完全に失われているわけではない」とされており、弁護団の「取り下げ被告人Fの一時気紛れ気の迷いよるもの」という主張当てはまらない控訴取り下げ撤回意思表明してもいったん終了した訴訟状態は復活させることはできない。 この決定により控訴審は「控訴取り下げ時点遡って終了しそのまま第一審死刑判決確定」することになったが、被告人Fの弁護団同年2月3日夜に控訴取り下げ精神的に不安定な状況行われており、本人訴訟能力がないため無効だ」などとして東京高裁決定対す異議申し立て同年3月27日には東京高裁に「被告人Fには精神分裂病統合失調症)の疑いがあり、本件控訴取下幻覚妄想影響され非合理的非現実的な動機によってなされたものだ。仮に被告人Fが保崎の鑑定示されたように拘禁症状有していたとしても、被告人Fの訴訟能力には重大な障害発生していることは否定できず、被告人精神鑑定再度実施する必要がある」とする趣旨意見書財団法人東京都精神医学総合研究所参事医師中谷陽二作成)を提出した。これを受け、1992年6月11日までに東京高裁12刑事部横田安弘裁判長)は「『被告人Fが控訴取り下げの意味理解した上で取り下げ行ったかどうか』を改め精査する必要がある」として聖マリアンナ医学研究顧問逸見武光鑑定人指定した上で被告人Fに対し2度目精神鑑定を行うことを決定した鑑定人逸見1993年平成5年2月1日付で精神鑑定書を提出したほか、1993年4月22日東京高裁実施した鑑定人尋問で「被告人Fはいわゆる境界例人格障害者で、現在(鑑定時)の精神状態幻覚妄想状態にある。その幻覚妄想状態は重度心因ストレス)に起因する特定不能精神障害のうち『分裂病障害』と考えられ控訴取り下げ時の精神状態も現在と同様であると思われる拘禁後の被告人Fの幻覚妄想状態は精神分裂病態とほとんど変わらず被告人が死への願望を抱くこと自体精神分裂病起因するものであって被告人Fは控訴取り下げの意味十分に理解しているとはいえず、その訴訟能力はなかったといわざるを得ない」とする結論示した。それに対し検察官から1993年6月23日付で「さらに被告人Fの精神状態鑑定する必要がある」とする申し出なされたため、東京高裁12刑事部小田健司裁判長)は1993年7月16日付で(鑑定人尋問同年8月17日上智大学文学部教授心理学)・福島章3度目精神鑑定を行うよう命じた被告人1人対し再々鑑定3度目精神鑑定が行われることは極めて異例で、鑑定人福島1993年11月19日精神状態鑑定書提出したほか、1994年平成6年6月30日行われた証人尋問では「被告人Fは現在に至るまで精神分裂病境界例であったことはない。控訴取り下げ時点では拘禁反応状態で願望充足的な妄想観念抱いていたため、控訴取り下げ義理理解し自己を守る能力訴訟能力)は多少低下していたがその実質的能力著しく低下喪失された精神状態ではなかった」とする鑑定結果示した東京高裁12刑事部(円井義弘裁判長)は1994年11月30日付で「被告人Fは控訴取り下げた時点拘禁反応状態(ノイローゼ)にはあったが、取り下げの意味理解しており訴訟能力欠如認められず、控訴取り下げ有効なものだ」と認定して弁護人からなされた訴訟終了決定」への異議申し立て棄却する決定をした。

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控訴取り下げ・異議申し立て

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/12 13:57 UTC 版)

寝屋川市中1男女殺害事件」の記事における「控訴取り下げ・異議申し立て」の解説

山田収監先・大阪拘置所にて判決直前2018年12月7日に『朝日新聞記者・畑宗太郎取材受けた際に「裁判第一審では終わらないだろう。死刑判決出れば弁護人が、それ以外判決でも検察官控訴するだろう」と語っていたほか、2019年令和元年5月までに『読売新聞』・『毎日新聞記者から複数取材受けた際にもそれぞれ引き続き係争する意向示していた。しかし被告人Yは2019年5月18日大阪拘置所内で刑務官トラブルになり憤慨したことをきっかけに「もうどうでもいい」と自暴自棄になり、弁護人含めて誰にも相談することなく控訴取下書を書いて大阪高裁提出し同日付で受理されたため死刑判決確定した。これにより本事件詳細な経緯動機が未解明のまま幕切れすることとなり、日本において2019年5月1日令和改元後で初めての死刑確定となった死刑確定直後2019年5月21日死刑囚死刑確定者となった山田収監先・大阪拘置所内で『毎日新聞記者との接見応じ前述控訴取り下げに至る経緯弁護人事前に伝えなかったことなどを明かした死刑囚Y弁護人2019年5月30日付で大阪高裁へ「死刑囚Y自身による控訴取り下げ無効であり控訴審再開すべきである」とする申し入れをした。 2019年12月17日付で大阪高裁第6刑事部村山浩昭裁判長)は「死刑囚Y自身による控訴取り下げ看守とのトラブルにより自暴自棄陥った末の行動であり、取り下げもたらす結果死刑確定)を明確に意識できていなかった可能性がある。そのような状況下でなされた取り下げ効力には疑義がある」として、死刑囚Yによる控訴取り下げ無効とし、控訴審を開くよう決定した大阪高等検察庁は同決定不服として2019年12月20日付で最高裁判所への特別抗告および大阪高裁への異議申し立て行った大阪高裁第6刑事部控訴取り下げ無効決定後、Yは月刊誌『創』編集長篠田博之接見し、同誌2020年3月号(2020年2月発売)に獄中手記寄せた一方山田2020年令和2年3月24日に再び控訴取り下げ求め書面提出した。しかしこの2回目控訴取下書は提出から2か月近く経過した2020年5月19日時点でも(新型コロナウイルスの感染拡大による影響から)保留されたまま正式に受理されておらず、弁護人2020年5月14日付でその取下書についても無効とするよう大阪高裁申し入れた大阪高検による大阪高裁第6刑事部決定対す異議審では、異議申し立て受けていた大阪高裁第1刑事部和田真裁判長)が同年3月16日付で「第6刑事部の『直ち判決確定させることに強い違和感があるため、控訴審再開すべきだ』という決定合理的な根拠示しておらず、被告人山田訴訟能力に関する判断材料不足している」と指摘して決定取り消し審理を第6刑事部差し戻す決定出した。これを不服とした弁護人側は2020年3月23日付で最高裁特別抗告申し立てたが、2020年6月17日付の最高裁第一小法廷池上政幸裁判長)による決定でその特別抗告棄却されたため、控訴取り下げ有効性について大阪高裁で再び審理し直されることとなった結果大阪高裁第6刑事部村山浩昭裁判長)は2020年11月26日付で、2度目控訴取り下げについて、「控訴取り下げれば死刑確定することを明確に意識した上で提出した考えられる」として、有効と認め決定出した。同決定対し弁護人11月30日付け異議申し立て行ったが、大阪高裁第1刑事部和田真裁判長)は2021年3月22日付で、原決定支持して弁護人異議申し立て棄却する決定出した弁護側が特別抗告したが、最高裁第三小法廷宇賀克也裁判長)が2021年8月25日付でそれを棄却する決定出したため、控訴審開かれないことが確定した山田死刑確定した直後公表した手記で、今後再審請求することを明かしている。

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