動態復元と、その後の仕様変更など
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「国鉄C57形蒸気機関車180号機」の記事における「動態復元と、その後の仕様変更など」の解説
C57 180の汽笛の音(2013年まで) この音声や映像がうまく視聴できない場合は、Help:音声・動画の再生をご覧ください。 C57 180の汽笛の音(2014年より) この音声や映像がうまく視聴できない場合は、Help:音声・動画の再生をご覧ください。 1990年(平成2年)4月、高崎支社のD51 498により「SLうるおいの新潟号」が運転された。その後1996年(平成8年)から1998年(平成10年)までの3年間、磐越西線新津 - 津川間にて同機やC58 363を使用した「SLえちご阿賀野号」が運転された。これを機に新津市ではC57 180を動態復元しようという機運が高まることとなり、1997年(平成9年)新津市において「C57 180を走らせる会」が結成された。復元に必要と見込まれた費用である2億円の半分を、市民らがオレンジカードを購入するなどして負担することとした。 復元作業は翌1998年3月に開始、JR東日本大宮工場や大阪府のサッパボイラでの作業も1年後に完了、1999年(平成11年)3月に30年ぶりに車籍が復活した。保存状態はよかった。復元形態は運転終了時の状態をベースに、前照灯は前後とも大型で光量の大きなLP403形、運転台屋根は東北・信越地区に多く見られた延長型、砂箱前方には大型手摺と、静態保存時の部品の整備や交換がなされた。ランボードには、新津機関区伝統の白線が入れられている。新たに搭載された重油タンクや列車無線アンテナは、上方から見ない限り分からないように配慮されている。また、全車軸には温度センサーが取り付けられ、運転中は客車乗務員室から管理を行っている。炭水車には第一小学校の児童から贈られた記念のプレートが掲げられている。 運転開始後もわずかながら形態は検査の度に変化し、2003年(平成15年)1月から3月にかけて実施された中間検査B(重要部検査)では、煙突飾帯の撤去、非公式側(助士席側)ランボード上に搭載されていた罐水清浄装置(清罐剤送入装置)の撤去、先輪の一体圧延型車輪への交換などが施工されている。2006年(平成18年)10月22日で定期運転を一時的に終了し、2006年(平成18年)11月から2007年(平成19年)4月にかけて、復活後初めての全般検査が大宮総合車両センターで実施された。復活運転からの累計走行キロ数は17万8949キロメートルに達した。大きな形態の変化はないが、ATS-SN形に換わってATS-Ps形を搭載した関係で、炭水車前台車に速度検出装置を装備している。2011年(平成23年)の中間検査Bにおいても変更があり、津川駅などでの整炭作業の効率改善を図る目的で炭水車の非公式側にも梯子を追加を施工した。運転台窓の旋回窓の枠がこの検査の直前に復活出場したC61 20と同様、太枠の汎用型旋廻窓に振り替えられている。また、運転室内の速度計も先述のATS-Ps形の速度検知に正式対応させるべく、これもC61 20同様に機械式速度計から電気式速度計へと載せ換えられている。なお、交換で不用となった機械式速度計は、2013年の運転からばんえつ物語の客車で新しく誕生したグリーン車の展望室内のショーケースにて、他の交換部品とともに展示されている。2013年(平成25年)の早春には、炭水車の改良工事が行われ、軸熱温度管理センサーのジャンパ栓受けの取り付け位置が、それまでのナンバープレート真下からD51 498などと同様の位置に改造され、これにより専用客車以外からの軸熱管理ジャンパ接続を可能とし、ナンバープレート真下部のジャンパ栓受け台座が撤去された。同時に、給水管を左右両対応に改造している。また、2016年(平成28年)夏ごろより、信越本線の新潟 - 長岡間にてデジタル無線へのシステムに切替・使用開始されたのに伴い、同年夏ごろにそれまでのCタイプ無線装置からデジタル無線装置へ取り換えられている(運行区間内の新潟 - 新津間で同無線システムに切り替える必要が発生するため)。これらの改造が度々行われてきていた当機であるが、D51 498やC61 20と違い「SLばんえつ物語」の専用機関車という立場から、関東地区を走行する際に必要とされるATS-P形の導入が行われず、関東地区での当機が先頭に立っての本線自走運転は、鉄道に関する技術上の基準を定める省令に違反する恐れがあるため、不可能の状態にあった。そのため、多量の電力供給を必要としないため、タービン発電機およびATS発電機は現役時代からのものを流用しており、東日本所有機では唯一の持ち味を見せていた。ところが、高架化される新潟駅構内やイベント運行で走行する羽越本線の村上~あつみ温泉での拠点式ATS-P形の整備計画が出ると、当機での運行が不可能になる恐れがあることが判明する。そのため、2020年に当機にもようやくATS-P形が導入された。この際、保安装置は「統合型保安装置」と呼ばれるものを搭載することとなり、ATS-P形とATS-Ps形両方の装置が融合したものを搭載した。これにより炭水車後部に同装置用の電源機器が追加され、現役時代からのタービン発電機とATS発電機も共に大型の新製品に交換された。 晩秋から早春にかけてスノープラウが装備されるが、これは復元後に新製されたものである。基本的には12月のクリスマス運転での装着が主流だが、運転時期や降雪の可能性、装着および取り外しによる作業性などによっては装着期間が長引く場合もある(近年では、クリスマス運転から翌シーズンのゴールデンウィーク明けまでの装着が慣例となりつつある)。しかし2011年9月、門鉄デフを装備して走行する際に起きる空気抵抗の変化による勾配区間上での空転多発の恐れがあることから、この時には門鉄デフ装着と同時に、夏季としては復活後初めてスノープラウをウェイト代わりとして装着することになり、このため2011年度の門鉄デフ装着時のスタイルは2008年クリスマス運転時と同じ姿での登場となっている。スノープラウは以後2012年6月10日まで継続して装着し、こちらもその時期までにスノープラウ装着を継続したのも復活後初の出来事となった。更に2013年3月には積雪期にもかかわらずスノープラウを取り外した状態で運転されるなど、ここ数年は慣例によらない装備パターンを見せている。そして2020年からは、新たに導入された保安装置に対応するため、JR東日本の他機(C58 239・C61 20・D51 498)と同様にスノープラウの装備常設化となり、夏季においても常にスノープラウを装着した状態が維持されていくことになった。 当機の汽笛の音調は復活してからほとんど変更されておらず、特に汽笛後部側の音色は「貴婦人」らしさを強調するため高音域に設定されていた。しかし、復活から15年を迎える2014年(平成26年)に、客車のリニューアルおよび「SL村上ひな街道号」での旧型客車牽引を機に、レトロ調を意識して音域を低くし、音自体も前後共通とされた。2015年(平成27年)の全般検査出場以降は、その音響を柔軟にし、C58 239などと似た音色に調整された。なお、これらは汽笛の気筒本体の向きを変えて調整しているだけであり、本体の交換はなされてはいない。
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