ATS-Ps形(変周地上子組合せパターン型)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/13 13:35 UTC 版)
「自動列車停止装置」の記事における「ATS-Ps形(変周地上子組合せパターン型)」の解説
SN形・Sx形(ST・SW・SF形など)に新たな地上子の変周周波数を追加してその設置位置規則を車上に記憶させておくことで速度照査パターンを生成させる機能を追加し、P形に近い機能を持たせたものでSx型の上位互換であり相互乗り入れ可能である。構造・機能で分類すれば車上演算照査機能(パターン照査)が加わったSx型である。 従って、停止信号の他、カーブや分岐器や勾配などの速度制限情報やパターンによる速度照査を行うことが可能であるが、列車の速度がパターン速度を超過(=ブレーキ動作)すると、非常制動をかけて列車を停止させる。停車後は手動でブレーキを開放させるようになっている。また、Sx形の速度照査機能もそのまま使用できる。地上子は3個あり、信号機がR現示の場合は、信号機から655 m手前の第1パターン発生地上子で65 km/h(機関車では55 km/h)までの速度照査パターンを生成させた後、次の390 m手前の2個で一対の地上子による第2パターン発生地上子で15 km/hまでの速度照査パターンを車上側に生成させる「Paパターン」と閉塞区間が短い所で、場内信号機と出発信号機の間の距離が短く、出発信号機に従属するPs形の地上子が場内信号機の外方に設置されている場合、場内信号機に従属する手前の各3個の地上子の2 m手前に、マーカ地上子とよばれる識別用地上子を設置して、出発信号機が停止現示の時に、これらの地上子により前者と同じパターンを車上側に生成させる「Pbパターン」の2種類がある。両者とも、最後に15 km/hパターン速度以下で信号機に接近する際には、信号機の手前20 mの直下地上子によって非常ブレーキが作動する。また信号機がR現示で車上側で速度照査パターンを生成させた後に信号機がG現示となった場合(現示アップと呼ばれる)、3個の地上子の変周周波数は103 kHzになり、その変周周波数を車上側が受信すると速度照査パターンは消去される。 速度制限の場合は、カーブ・分岐器・勾配・臨時の4種類の速度照査パターンを発生させ、カーブ・勾配・臨時の速度制限と分岐器速度制限の場合、前者は速度制限区間の始点から555 m手前に2個のマーカ地上子を制限速度に応じて地上子間隔を変えて設置し、速度制限区間の終点に同じく2 mの間隔で設置する。車上側には速度制限区間までの速度照査パターンを発生させた後に速度制限区間の終点でパターンを消去する。後者は分岐器の速度制限区間の始点から555 m手前に2個のマーカ地上子を制限速度に応じて地上子間隔を変えて設置し、分岐器までの速度照査パターンを発生させた後に分岐器速度制限区間の最大長である50 mの距離を通過後、自動的にパターンを消去する。 マーカ地上子は、エンコーダ方式のATS-Pと同じく、下り勾配で信号機が停止現示である場合、車上側に速度照査パターンの補正を行うことも兼ねており、これはY現示速度以下しか対応しないATS-ST・Sx系過走防止装置とは際だった違いになっている。さらにPs形は入換信号機の地上子にも使用されており、入換信号機の停車位置に直下地上子とその手前20 - 40 m以内に変周周波数の異なる2個のマーカ地上子が3 m以内の間隔で設置されており、停止現示で接近した際には、車上側に30 km/hの頭打ちパターンが発生して、その後、直下地上子で非常ブレーキが動作して入換信号機を冒進できないようになっている。 Ps形はSN形・Sx形と同じく変周式のため、Ps形の各パターン生成と速度制限情報は、地上子の変周周波数・設置間隔の組み合わせにより行う。Ps形はSN形・ST形等と上位互換性が確保されているため、SN形・ST形等を搭載した車両はPs設置区間へ入線可能であり、Ps形を搭載した車両はSN・ST形等設置区間に入線可能となっている。 運転席に設置の動作モニタはP形のものとは異なり、現在の速度とパターン速度が表示できるよう改良されている(これらの速度は、2色のカラーバーLEDにより表示。P型でもモニタが信号を得てATS-Pコマンドを表示するものがある)。 SN形・ST形等を搭載した車両は、信号機がR現示の場合、その手前に設置された専用のロング地上子によりS形と同じく警報を受け、警報確認後に信号機に接近すると、同じ信号機の手前20 mの直下地上子に反応し非常ブレーキがかかる。さらにST形等を搭載した車両は、信号機390 m手前の第2パターン発生地上子を時素式速度照査地上子として使用することにより50 km/hの速度照査を列車にかけることができる、またY現示速度超過時には非常制動がかかる。 以上のことから、Ps形はSN形・Sx形との互換性があり、P形のように特別な電源装置および車上子の設置も必要が無いことから、安価で容易に導入できる新しいATSとして確立された。 車両表記はPs。
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