パターン照査
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/12 16:20 UTC 版)
速度制限が適用される位置、あるいは停止しなければならない位置までの残り距離の情報が制限速度の情報と一緒に地上から伝送され、車上装置がそれを基にその列車のブレーキ性能で実現可能な運転曲線(ブレーキパターン)を計算して、パターンよりも速度が超過しないように照査する方式である。パターンと実際の速度を常時比較するので連続照査の一種である。 パターン照査の概念を図に示す。この例では当初100 km/h制限で、途中から60 km/h制限になることを前提にしている。 1.に示したように、車上の速度照査装置は速度制限開始地点までの距離と設定されている制限速度、自列車のブレーキ性能を基に、赤い線で示したようにブレーキパターンを計算して内部で保持する。ブレーキ性能は、非常ブレーキのように最大のブレーキ力を前提にするのではなく、運転士が通常運転時に用いるブレーキ(常用ブレーキ)を前提にするのが通常である。 2.では、運転士が通常通り列車を制御して運転した場合を示す。青い線で運転士の操作による列車の運行を示す。速度制限をきちんと守るように運転士がブレーキを掛けると、青い線は常に赤い線の内側(下側)に収まり、速度照査装置は運転に干渉しない。 これに対して3.では、運転士が速度制限を無視してそのまま進行してきた例を示す。運転士の操作を示す青い線が、あらかじめ速度照査装置が計算しているブレーキパターンを示す赤い線に触れると、それ以上進行し続けると速度制限を違反してしまうことになるので、速度照査装置がブレーキパターンの内側に収まるように自動的に列車にブレーキを掛ける。 パターン照査は、常時速度照査をするという点で安全性では連続照査と変わらない。一方で、点照査や連続照査では速度照査に抵触した列車が制限速度以下に減速するために必要な距離を見込んで照査地点を実際の速度制限開始地点より手前に設定しなければならず、実質的に速度制限区間の拡大を招いていたが、パターン照査では実際に必要な速度制限区間だけに照査を掛けることができる。これは運転士にとっては、不必要に速度照査装置に運転を妨害されることなく、速度照査がないのと同じように運転することができるということを意味する。 貨物列車のようにブレーキ性能が特に悪い列車が性能のよい電車と混在して運転されている路線では、列車種別によって速度照査の設定を切り替える仕組みを導入しない限り、もっとも性能の悪い列車に合わせて速度照査の設定が行われる。これは性能のよい列車にとっては、不必要に手前から減速を強いられて所要時間が伸びることになる。ブレーキ性能に応じて速度照査の設定を切り替える仕組みを導入すれば、この問題は解消できる。パターン照査では、車上装置がそれぞれの列車のブレーキ性能に応じてブレーキパターンを計算するので、どの列車にとっても最適な位置で速度照査が行われる。
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