車掌
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/12 08:12 UTC 版)
北米における車掌
米国・カナダにおける車掌は「コンダクター」(conductor)と呼称される。列車に乗務する制動手(breakman)、誘導手(flagman)、アシスタントコンダクター、サービス乗務員などを管理監督する職制で、運行規則に基づいた安全かつ効率的な列車運行の責任を機関士と同一に負う。
発車合図の"All aboard!"(皆さんご乗車ください)の掛け声が特徴的であり、アムトラックのCMなど随所で鉄道を代表する台詞として用いられている。
米国の長距離列車を一手に引き受けるアムトラックの場合、寝台客車は各車両に車掌が詰め、車内治安の維持[注釈 7]、寝台のセット、解体など旅客へのサービスを手厚く行う。各寝台個室にはコールボタンが設置され、旅客の要求に応じ随時駆けつける。大陸横断列車などシカゴ以西の長距離列車で用いられるスーパーライナーはドアが手動扱いであり、このドア扱いも車掌の大切な仕事である。
貨物列車では初期より、貨物列車後尾に連結された車掌車(カブース)に後部制動手および後部誘導手とともにコンダクターが乗務するのが一般的であった。このカブースは中央部を一段高くしたり出窓を設けることで車掌が編成の異常を直ぐ確認できるようになっているものが多く、その特徴的な外観からアメリカの鉄道の象徴的存在であったが、合理化によるカブースの廃止で先頭機関車に乗務するようになり、同時に前部・後部のブレーキマンやフラッグマンなど車掌配下の職制が消滅した。現在の貨物列車は1機関士1車掌乗務が標準的で、コンダクターは機関士登用への1段階と扱われるが、一方で合理化の進展により、コンダクター職を廃止しようとする動きが根強くある。
地下鉄のような都市内完結の旅客列車では多くの事業者でコンダクターを廃したワンマン運転(OPTO)を採用しているが、ニューヨーク市地下鉄やトロント交通局のようにワンマン運転を採用せずに車掌乗務を続けている事業者もある。シカゴのサウスショアー線のように、日本ではあまり見られなくなったパンチ式の補充券を車掌が発行している事業者もある。
シカゴの通勤列車(現メトラ)から全米に広まったギャラリーカーと呼ばれる2階建て客車は、中央部を吹き抜けとすることで、1階部分と2階部分の両方の旅客を車掌が検札できるようになっている。
注釈
- ^ JRバスの路線に多い。その場合共同運行会社の乗務員が担当する場合もある。JRバスの首都圏・京阪神間の路線では中間地点の三ヶ日に乗務員施設があり、JRバス関東の運転士と西日本JRバスの運転士が交代する。
- ^ クリスタルライナーやカルスト号などで実施。後者は途中で乗務員交代も行っている。
- ^ ただし、消灯時間以外はハンドルを握らない乗務員が案内放送や乗客サービスを行うことが一般的である。
- ^ ブザー、電鈴に手をかけている会社は、万が一の場合、ブザー、電鈴を乱打し運転士に非常ブレーキを要求する方式となっている。ただこの方式だと、合図を確認してから非常ブレーキ操作になる為、非常ブレーキを直接操作するより若干時間がかかる。
- ^ 例として、大阪車掌区はJR化後も青森や南宮崎までの乗務が存在した。
- ^ JRの例として、(ワイドビュー)南紀・みえ(JR東海の車掌が伊勢鉄道伊勢線内も乗務)/かがやき・はくたか(JR西日本の車掌が上越妙高~長野間も乗務)/しなのサンライズ・しなのサンセット(しなの鉄道の車掌が信越本線篠ノ井~長野間も乗務)/スーパーはくと(智頭急行の車掌が山陰本線倉吉~因美線智頭間も乗務)が該当する。
- ^ アムトラックの寝台車には、寝台券を持つ旅客しか立ち入りが認められていない。
- ^ ただし鉄道会社によっては、人事昇進ルートの位置づけから駅係員から車掌・運転士を経験後(あるいは車掌を経験後)再び駅係員へ異動する場合がある。
- ^ 在来線では優等列車乗務だけでなく、間合い乗務で普通列車に白い制服のまま乗務することがある。
出典
- ^ a b 武部健一『道路の日本史』中央公論新社〈中公新書〉、2015年5月25日、178-179頁。ISBN 978-4-12-102321-6。
- ^ 鈴木文彦『高速バス大百科』p200(1989年8月9日初版・ISBN 4924420360)
- ^ コラム「三井を読む」中上川彦次郎
- ^ 「国鉄、2万5000人の削減を提示」『朝日新聞』東京本社版1986年8月1日朝刊1面、朝日新聞社東京本社
- ^ “接客制服のリニューアルについて”. 2020年9月6日閲覧。
- ^ ゆうもあクラブ
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