セクト セクトの概要

セクト

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/02 19:18 UTC 版)

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定義

語源

「セクト」(Sect) という言葉は「後を追う・続く・受ける」を意味するラテン語「secta」から派生したものという説がある。また、「結ぶ・繋がる」を意味するラテン語「religare」が「religion」(宗教)となったことに関連して、「切る・断つ」を意味するラテン語「sectare」から派生したものとする語源学者もいる。このように「セクト」とは、既に認知・確立されている宗教の「分派」、もしくは、思想的指導者のもとに集まった人たちの「集まり」、を指す。こうしたことから、仏教ヒンドゥー教神道道教などから派生した団体を指して「セクト」という表現をする。しかしながら、前出の宗教が離脱や分裂に対して、比較的寛容であったのに対し、教えの正統性を重視するキリスト教は、離脱や分裂そのものに反対してきた。キリスト教国で「セクト」の語が否定的な意味合いを持つのは、こうしたことによる。

現在の代表的宗教の幾つかは、それ以前に存在していた宗教のセクト(分派)が起源になっている。例えばキリスト教は、ユダヤ教のセクトとして派生し、ユダヤ教の教義(『旧約聖書』)を継承している。これらの宗教は、時を経るにつれて信者を増やし、別個の宗教として公に認知されるようになったのである。

ラテン語の「secta」に相当するギリシア語は、「haireis」(選択、教義の好み)である。「hérésie」(エレジー)とは元々、思想の学派(学校)のことであった。古代の哲学者エピクロスが自らの理想の実践のために作った「エピクロスの園」は、そうした「hairesis」の一つであった。古代においては、「セクト」の語源となった「haireis」に軽蔑的なニュアンスは無かったのである。後世になり、ある特定の宗派が政治権力と結びつくに至ると(例:コンスタンティヌス1世によるキリスト教の公認)、「orthodoxie」(正統派)という観念や、「hétérodoxie」(異端・異説)」という観念が発生した。正統とは「王のセクト」に過ぎなかったとする見方をする著作もある。

社会学的定義

19世紀マックス・ヴェーバー (Max Weber) とエルンスト・トレルチ (Ernst Troeltsch) の二人の社会学者が、「セクト」とは「社会に対し、強硬的かつ断絶的な姿勢を持つ過激主義的宗教グループ」であると定義した。これにより、教会は社会による二極分化的な評価に晒され、多くの宗教は穏健な社会的地位を獲得した。

この定義は20世紀末まで受け継がれたのであるが、近代社会において「セクト」の意味合いが変化していることから、今日の現状に即していないと考える人たちがいる。しかし、様々な議論があるため、「セクト」の語義と定義についての意見の一致は難しいのが現状である。

この社会学的定義においては“セクトと社会の断絶性”が根本的な判断基準となる。この断絶こそが常に問題とされるのであり、見方によって、セクトに問題があるとされたり、社会の側にこそ問題があるとされる。ある者は損失だと言い、ある者は利益だと言うように、解釈は分かれる。一方にとっては予防策であり適切な懲罰であるが、他方にとっては迫害なのである。時として事態は、対立や内戦に発展することもある。

プロテスタントが長い間、カトリック教会から「異端」とみなされて、ルネッサンス期には弾圧を受け、ヨーロッパにおける長期の戦争フランスドイツにおける内戦、宗教を異にする国による戦争)や虐殺1572年8月23日サン・バルテルミの虐殺、マクデブルク占領など)に発展したのはこうしたことによる。その数世紀前、「hérésie cathare」(異端カタリ派)」に対して行われた宗教裁判による迫害は、それ以上に激しいものであった。

近代

19世紀から20世紀の変わり目の頃、ドイツのマックス・ヴェーバーやエルンスト・トレルチなどの社会学者、神学者による説では、キリスト教団体を「教会」(各国の主要な教団)と「セクト」に分ける類型法が提唱されたが定着していない。セクトは既存の教会を批判し、宗教的により正しい生き方を目指して分派した小規模団体であると定義した。また、20世紀後半、「教会[2]→教派[3]→分派[4]」に次ぐ下部概念とする学術的試みがあったが、これも定着はしなかった[5]

1980年代には、「カルト」によって多くの問題(集団自殺、政治金融スキャンダル、労働法違反、不法医療行為など)が引き起こされた。

2001年5月30日、フランスの国民議会において、人権や基本的自由を侵害する傾向のある団体について、「セクト法案」(日本での別名:アブ・ピカール法[6]反セクト法2001年6月12日施行)が採択され、「信者の心理的、身体的依存状態をつくり出し、利用しようとする団体」について対策をすることとした。セクト法案の要約は「組織的に信者を扇動し犯罪を起こさせたり、洗脳を行い信者に犯罪を起こさせるなど組織自体の犯罪誘因性が高い場合、裁判を開いて解散の可否を問えるようにする法律」である。

反セクト運動

セクトに反対する運動を行う団体は、セクトは個人と社会の安寧を脅かすと捉えている。そして、情報提供や合法的運動を通じ、また必要とあれば裁判を起こすなどして、セクトによる被害に対処しようとしている。「セクトとは、社会と断絶し、社会に対立する全体主義的なグループである」という見解の下、市民を守るという理念で活動している。セクト団体が行っている精神操作が、肉体的・精神的・知能的・人間関係的・宗教的・哲学的・教育的・連帯的・政治的・経済的な面において人間を破壊すると考えているのである。

また、こうした運動はセクトが社会を支配する脅威についても懸念している。真理を保持していると信じている者はそれを他者に熱心に伝えようとするため、セクト団体は大きくなる。そして、それらのセクト中には多数の信者(会員)より得た巨額の資金や活動によって、宗教的信念または世俗的動機から、経済・政治・司法の中枢に侵入しようとするものがあるからである(そのような野望をセクトは公には語らないが、内部で語られたものが、離脱者によって伝えられている)。

今日の世界の安全保障それ自体が、宗教戦争の時代がそうであったように、既に蝕まれていると考える者もおり、セクト同士の闘争やセクト的宗派を含む宗教同士の闘争が、既に地球規模に拡大していると考える者もいる。また、アメリカ政府がヨーロッパ諸国の問題に介入している、あるいは、ヨーロッパがセクトから法的に身を守ろうとしている一方でそのセクト団体がアメリカで好意的な支援を受けている、と指摘する者もある。

反セクト団体は、科学者や社会学者たちは、セクト団体の危険性を過小評価している、と主張している。実際、セクト擁護者の幾つかの研究に対してセクト団体からの資金提供があったことが明らかになっている。このように、反セクト団体は、セクトの主張の客観性の欠如を告発したり、セクトの擁護者となっている社会学者を公表したりしている。これら反セクト運動に対抗するため、セクトの中には反対する者たちの評価を落とすための作為的な情報操作や、買収や、嫌がらせや脅迫を初めとした様々な妨害行為を行うものもあり、法的な制裁を受けたものも少なからずいる。1990年代には、反セクトの有力な機関だったCAN(カルト警戒ネットワーク)がセクト側との裁判での敗訴し、多額の損害賠償金による破産で、CANの商標がサイエントロジー側のものになり、まったく正反対の組織になるという事態も起きた。この時の裁判で取り扱われた事件内容であるが概要は下記の通りである。CANは普段から家族の依頼の元、洗脳された信者を家族に会わせる活動を行っていた。本件に置いても、家族の依頼の元CANはサイエントロジー信者の説得を行ったのだが、信者は説得に応じず家族に会うことすら拒否した。 CANは洗脳されていると判断しやむなく信者を拉致監禁したうえで、信者を家族の下に送り届けた。この件について拉致監禁を訴えられたのであり、裁判に負けたのも当然といえる。しかし全財産を教団に委譲したうえ、家族に会うことすら拒む信者や集団自殺などの事例もある以上依頼する家族の気持ち当然であり、毒を持って毒を制す団体だったといえる。世の中には反セクトを隠れ蓑とする団体等もあり多種多様である。

反セクト団体の主張

「Association de défense des familles et de l'individu(ADFI、家族と個人を守る会)」、「Centre de documentation, d'education et d'action contre les manipulations mentales(CCMM、精神操作防止資料教育活動センター、マインドコントロール救済センター)、「Centre Roger Ikor」(ロジェ・イコール センター)等のセクトに反対する運動団体が、セクト指定の新たな判断基準を定め、一定の成果を収めている。

セクト指定の判断基準は以下の通り。

  • 信徒(会員)の精神的操作
  • カリスマ性を持つグル・教祖・指導者や、その側近への権力集中
  • ピラミッド型組織
  • 財産の接収
  • 唯一排他的な教義

  1. ^ 石井研士 2010, p. 128.
  2. ^ : Church
  3. ^ : denomination
  4. ^ : sect
  5. ^ 大貫隆; 名取四郎; 宮本久雄; 百瀬文晃岩波キリスト教辞典岩波書店、2002年6月10日。ISBN 4-00-080202-XISBN 978-4-00-080202-4 
  6. ^ 「カルト教団、本気で規制 仏国民議会、裁判所に解散命令権付与」『朝日新聞』 2001年6月1日付
  7. ^ 山口広 (著), 紀藤正樹 (著), 滝本太郎 (著) 『Q&A 宗教トラブル110番―しのびよるカルト』 民事法研究会、全訂増補版、2004年2月、ISBN 4-89628-186-1ISBN 978-4-89628-186-6
  8. ^ 山口広・中村周而・平田広志・紀藤正樹 『カルト宗教のトラブル対策』 教育史料出版会、2000年5月20日、ISBN 4-87652-381-9ISBN 978-4-87652-381-8
  9. ^ 古川利明 『カルトとしての創価学会=池田大作』 第三書館、2000年11月、ISBN 4-8074-0017-7ISBN 978-4-8074-0017-1
  10. ^  Bundestags-Drucksache 13/4132: Antwort der Bundesregierung auf die Kleine Anfrage Drucksache 13/3712 (1.Welche Gruppierungen zählt die Bundesregierung zu den sog. Jugendsekten oder Psychogruppen, und welche dieser Gruppierungen treten z.Z. verstärkt in Deutschland in Erscheinung?) AGPF(Aktion für Geistige und Psychische Freiheit; 精神的・心理的自由のためのアクション) 1996年3月15日 2009-9-19閲覧 "ドイツ連邦政府はすべての州と協力し、パンフレット"ドイツ連邦共和国のいわゆる新宗教と精神世界グループ"を作成した。以下のグループ、団体を含む:"(Die Bundesregierung hat in Kooperation mit allen Bundesländern den Entwurf einer Informationsbroschüre »Sogenannte Jugendsekten und Psychogruppen in der Bundesrepublik Deutschland« erarbeitet, in den u. a. die nachfolgenden Gruppierungen und Organisationen aufgenommen wurden:" "...サイエントロジー団体(創設者ロン・ハバートが純粋な経済志向と共に精神セクト性を少なくした), 創価学会 (仏教 »改革運動«),セレマ (新悪魔崇拝協会), ..."(...Scientology-Organisation (auf ihren Gründer L. Ron Hubbard zurückgehender Psychokult mit ausschließlich wirtschaftlicher Orientierung), Soka Gakkai (Buddhistische »Reformbewegung«), Thelema-Orden (Neosatanistische Vereinigung),...)
  11. ^ Enquête Parlementaire visant à élaborer une politique en vue de lutter contre les practiques illégales des sectes et le danger qu'elles représentent pour la société et pour les personnes, particulièrement les mineurs d'âge. Rapport fait au nom de la Commission d'enquête par MM. Duquesne et Willems. Partie II.[(和訳)セクトの不法行為、社会や人々、特に未成年者にとっての危険と戦うことを目的とした政策を説明する議会公聴。ドゥケイン氏、ウィレム氏による委員会での公聴、の名称での報告 パート2] 報告書 (PDF) -- フランス語とフラマン語のニ言語報告, retrieved 2007-01-08.






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