【SA-13】(えすえーじゅうさん)
旧ソ連で開発された地対空ミサイル。
ロシア軍では9K35「ストレラ-10」と呼び、NATOコードではSA-13「ゴファー」と呼ばれる。
SA-9「ガスキン」自走短距離地対空ミサイルの後継として開発された。
SA-13は1970年代に旧ソ連軍に配備され、その後も大量に生産された。
台車にはMT-LB軽装甲多用途装軌車両をベースに使用しており、SA-9「ガスキン」と同じく台車があるため開発から量産まではさほど時間はかからなかったと言う説もある。
SA-9と同じく、この台車もNBC兵器防護機能を備えている。
また、SA-8「ゲッコー」やSA-9「ガスキン」と違い、タイヤでは無くキャタピラでの走行のため、荒地や沼等の場所でも走行可能である。
使用する9M37ミサイルは、パッシブ赤外線誘導方式で、前方からの攻撃も可能。
また、チャフや各種ジャマーに対応するサーマル式目標識別システムと簡易誘導レーダー・システムやTVモニター式誘導装置等を重層している。
索敵に関しては搭載のパッシブ探知装置を使用するか、視認もしくはレーダー装置搭載車で行なう。最大射程は5kmで、パッシブ探知距離は不明である。
弾頭はHE破片弾頭、推進燃料は固体推進薬を使用している。
本家ロシアをはじめポーランド・リビア・アンゴラ・イラク・旧ユーゴスラビア等多数の国に輸出された。
ロシア陸軍では現在、350輌ほどが配備されており、9K35「ストレラ10」が1個小隊と2S6「ツングースカ」1個小隊からなる対空中隊が、戦車連隊および自動車化狙撃連隊、海軍歩兵連隊に配備されている。
実戦ではアンゴラ軍と南アフリカ軍との紛争で、アンゴラ軍がミラージュF1AZを1機撃墜している。
その後イラク軍が湾岸戦争で、旧ユーゴスラビア軍がコソボ紛争で使用した。
スペックデータ
9A35自走発射機
乗員 | 3名 |
全長 | 6.6m |
全高 | 2.3m |
全幅 | 2.85m |
戦闘重量 | 12.3t |
懸架方式 | トーションバー |
エンジン | YAMZ-238V ディーゼルエンジン(出力240hp) |
最大速度 | 62km/h(路上) |
航続距離 | 500km |
装甲 | 10mm(車体前面) |
携行弾数 | 12発 |
兵装 | 9M37対空ミサイル4連装発射機×1基 |
9M37ミサイル
SA‐13
9K35
(SA-13 から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/08 07:24 UTC 版)
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基礎データ | |
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全長 | 6.6m |
全幅 | 2.85m |
全高 | 2.3m |
重量 | 12.3t |
装甲・武装 | |
装甲 | 10mm(車体前面) |
主武装 | 9M37地対空ミサイル×4(自走発射機) |
副武装 | 7.62mm機関銃 |
機動力 | |
速度 | 62km/h |
エンジン | YaMZ-238 ディーゼル 240馬力 |
行動距離 | 500km |
製造国 | ![]() |
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性能諸元 | |
ミサイル直径 | 0.12m |
ミサイル全長 | 2.2m |
ミサイル重量 | 55kg |
弾頭 | 6kg破砕型弾頭 |
射程 | 10,000m |
射高 | 5,000m |
推進方式 | 単段式固体ロケット |
誘導方式 | 赤外線誘導 |
9K35 ストレラ-10(ロシア語: 9К35 Стрела-10)は、ソビエト連邦が開発した車載式の近距離防空ミサイル・システムである。
NATOコードネームでは、SA-13 ゴファー(Gopher:ホリネズミの意)と呼ばれる。
開発
ソ連陸軍では、連隊レベルの防空兵器として9K31 ストレラ-1(SA-9 ガスキン)が配備されていた。しかし、同システムは、装輪式のBRDM-2を車体として使用していたために不整地走行能力が装軌車両より劣り、機甲部隊の随伴に適しておらず、また、誘導方式がやや変則的であったため、全方位交戦が可能であった一方で、信頼性は高いものではなかった。
このことから、1960年代末より9K31の後継システムが開発され、1977年に9K35 ストレラ-10 システムが採用された。
設計
9K35は、MT-LB装甲兵員輸送車に9K31と同様の4連装発射機を搭載した9A35自走発射機が中心となった対空システムである。9K31では9M31を用いていたのに対し、9K35では、ミサイル弾体としては、改良型の9M37を使用する。9M37は、9M31の赤外線ホーミング誘導に加えて画像識別装置やTV モニター誘導を追加することで、フレアなどの欺瞞に対応できるようになっている。射程も、有効射程800-5,000m、有効射高10-3,000mに延長され、発射速度の増加が行われた。なお、発射機からは旧式の9M31も発射することができる。
9K35は、4連装発射機を装備し、予備弾4発を搭載した自走発射機3両に、誘導レーダー車・指揮車が各1両で一個小隊が編成され、この一個小隊が各戦車連隊に配備されることで、連隊レベルの防空を担うようになっていた。
運用国
アルメニア - 72両。
アゼルバイジャン - 2024年時点で、アゼルバイジャン陸軍が9K35を保有[1]。
ベラルーシ - 350両のSA-8、SA-11、SA-12、SA-13を保有[2]。
ブルガリア - 20両。
チェコ[3]
クロアチア - 10基。独自の改良型にアップグレード。2024年時点で、クロアチア陸軍が3両のストレラ-10M3、6両のストレラ-10 CROを保有[4]。
キューバ
ジョージア - 2024年時点で、ジョージア陸軍が9K35を保有[5]。
ハンガリー
インド
ヨルダン - 92両。
カザフスタン - 2023年時点で、カザフスタン防空軍が9K35を保有[6]。
キルギス - 2023年時点で、キルギス陸軍が9K35を保有[7]。
北マケドニア - 2024年時点で、北マケドニア航空団が8両の9K35を保有[8]。
北朝鮮[9] -「ポンゲ-3(雷-3、번개-3)」の名称で運用[10]。また2017年の金日成生誕105周年記念パレードにおいて、北朝鮮製MANPADSを4基搭載した発射機に換装した車両が確認されている[10]。
ロシア - 350両。
セルビア - 18両。アップグレード済。
スロバキア
トルクメニスタン - 2024年時点で、トルクメニスタン陸軍が13両の9K35を保有[11]。
ベトナム
ウクライナ - 150両[12]。
退役した国
登場作品
- 『エネミーライン』
- セルビア人武装勢力が、偵察に来たF/A-18Fに対して2発使用。1発はF/A-18Fが投下した増槽が起こした爆発で誘爆するが、もう1発は近接信管を作動させて機体に損傷を与え、撃墜に成功する。
脚注
- ^ IISS 2024, p. 180.
- ^ Belarus Army Equipment
- ^ List of air defense equipment of Czech army
- ^ IISS 2024, p. 79.
- ^ IISS 2024, pp. 184–185.
- ^ The International Institute for Strategic Studies (IISS) (2023-02-15) (英語). The Military Balance 2023. Routledge. pp. 179-180. ISBN 978-1-032-50895-5
- ^ The International Institute for Strategic Studies (IISS) (2023-02-15) (英語). The Military Balance 2023. Routledge. p. 181. ISBN 978-1-032-50895-5
- ^ IISS 2024, p. 116.
- ^ History of the KPAF (in Russian), airwar.ru
- ^ a b ステイン・ミッツァー、ヨースト・オリマンス 2021.
- ^ IISS 2024, pp. 208–209.
- ^ Ground Forces Equipment - Ukraine
参考文献
- The International Institute for Strategic Studies (IISS) (2024) (英語). The Military Balance 2024. Routledge. ISBN 978-1-032-78004-7
- 田中義夫 編『戦車名鑑 1946~2002 現用編』光栄 ISBN 4-87719-927-6 2002年
- ステイン・ミッツアー、ヨースト・オリマンス『朝鮮民主主義人民共和国の陸海空軍』大日本絵画、2021年。 ISBN 9784499233279。
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