細菌性髄膜炎とは? わかりやすく解説

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細菌性髄膜炎

細菌性髄膜炎(Bacterial meningitis )は細菌感染による髄膜炎総称、すなわち疾患群であるが、通常結核性髄膜炎はこの範疇含めない。化膿性髄膜炎ともよばれ、ウイルス感染主体である無菌性髄膜炎対照をなす。診断にあたっては、可能な限り病原診断を行うことが望ましい。抗菌薬療法発達した現代にあっても、発症すれば致死率高く、また救命できても重篤後遺症を残すことがあり、特に小児においては侮れない感染症である。迅速な診断適切な治療の早期開始が鍵である。

疫 学
わが国における細菌性髄膜炎患者発生状況は、1981年7月開始され感染症サーベイランス事業現在の感染症発生動向調査事業)によって、定点医療機関(以下、定点)からの報告数として把握され年間累積定点当たり報告数は1980 年代では1.0人から徐々に減少し1990 年代では0.5程度であった。しかし、この間報告単位が週→月→週と変わったり、定点数も変わったりしているため、本疾患長期的発生状況変化をどの程度反映できているのかは定かでない
1999 年4月施行感染症法下における感染症発生動向調査によると、年齢別では、5歳未満0歳及び1~4 歳)の報告多く全体の約半数占めそれ以降年齢では減少しているが、70歳以上ではまた多くなっている。季節に関してはほとんど差異がみられていない原因菌に関してインフルエンザ菌肺炎球菌の順となっている。
細菌性髄膜炎の一つである髄膜炎菌性髄膜炎世界的に分布するが、特にアフリカ中央部いわゆる髄膜炎ベルトといわれる、西はセネガルから東はエチオピアまでの地域において流行続いている。そこでは、主にサバンナ地帯乾期126月)に多くみられ、その血清型はほとんどA群である。欧米先進国でも時に流行がみられている。2001年に、メッカでのイスラム教徒巡礼Hajハッジにおいては帰国してからW135群髄膜炎菌による発症英国その他のヨーロッパ諸国でみられ、問題となったわが国においては流行性脳脊髄膜炎の名称で1918年法定伝染病指定された。患者報告数は1945年の4,384人をピーク減少し、特に1960年代以降急激に減少した。現在は感染症法定め4 類感染症全数把握疾患分類されており、報告数は1999年4月~)11例、2000年15例、2001年8例、2002 年8例である(註:その後2003年11月施行感染症法一部改正により、5類感染症全数把握疾患変更)。
インフルエンザ菌よるものに関しては、欧米type bHib )に対すワクチン使われている国では発生数激減しているが、我が国においては特に小児における原因菌として重要である。

病原体
病原体原因菌)は多種類あるが、年齢基礎疾患によって次のように特徴がある。
新生児生後3カ月乳児B群レンサ球菌大腸菌黄色ブドウ球菌リステリア菌
生後3 カ月以降乳児幼児インフルエンザ菌(ほとんどがHib )、肺炎球菌黄色ブドウ球菌
年長児~青年期肺炎球菌インフルエンザ菌髄膜炎菌
成人肺炎球菌髄膜炎菌
高齢者50 歳以上):肺炎球菌グラム陰性桿菌リステリア菌
また、免疫低下の状態では肺炎球菌緑膿菌などのグラム陰性桿菌リステリア菌黄色ブドウ球菌MRSA)などがみられ、脳室シャント後であれば黄色ブドウ球菌表皮ブドウ球菌などが多くみられる
感染経路多く場合飛沫感染であり、原因菌上気道あるいは呼吸器感染病巣経由して侵入し血行性に髄膜到達する新生児B群レンサ球菌感染症場合には、産道感染考えられている。その他にリステリア菌腸管から侵入したり、粘膜皮膚付着している黄色ブドウ球菌表皮ブドウ球菌が、カテーテルを介して血行性に髄膜到達することもある。

臨床症状
多く発熱頭痛嘔吐などを示し進行する意識障害痙攣などがみられるまた、そのような経過明瞭に示さず敗血症の形を取る場合や、急速に悪化する電撃型もある。年齢が低いほど症状非特異的であり、新生児乳児では発熱以外の症状として不機嫌食欲哺乳力)の低下などが目立つこともある。髄膜刺激症状として項部硬直やKernig 徴候などがあるが、新生児・乳児幼児では必ずしも明瞭ではない。そのような場合大泉門膨隆みられることも多く診断助けとなる。
一般血液生化学検査では、左方移動を伴う白血球数増多がみられ、CRP 値は高度の上昇を示す。髄液検査では髄液圧の上昇、主に多形核白血球からなる白血球数の増多、蛋白量の増加、糖量の減少などがみられる

病原診断
髄液沈渣グラム染色行い検鏡する。菌の同定不可能なことが多いが、グラム陽性陰性か、球菌桿菌かの区別からある程度推定はでき、抗菌薬選択ヒントとなる。また、迅速診断として、ラテックス凝集法による抗原診断実用化されているが、現在この対象となるのは肺炎球菌B群レンサ球菌Hib髄膜炎菌A 、B 、C 群、K1 抗原陽性大腸菌などである。
これらは、抗菌薬投与後で検鏡確認できない場合や、培養陰性場合などにも有用である。
上のことで陽性所見得られても、確定診断のためには細菌培養が必要である。また、血液培養検出される場合も多い。得られ細菌に関しては、薬剤感受性試験を行う。

治療・予防
臨床症状髄液所見などから細菌性髄膜炎の疑いがある場合、あるいは、無菌性髄膜炎であっても細菌性否定しきれず、全身状態重篤場合などには、細菌学的に確定診断なされる前から抗菌薬療法開始する必要があるその際には、年令基礎疾患発症状況などを考慮して可能性ある原因菌想定し、それに合った抗菌薬経静脈的に投与するまた、抗菌薬選択当たっては、全国的な耐性菌動向所属する医療機関耐性菌動向なども考慮する
抗菌薬療法に際しては、特に肺炎球菌インフルエンザ菌場合耐性問題大きい。肺炎球菌場合ペニシリン感性であれば結晶ペニシリンG カリウムアンピシリンセフォタキシムなど、耐性であればパニペネム/ベタミプロン合剤などがすすめられるまた、インフルエンザ菌場合アンピシリン感性であればアンピシリン耐性であればセフォタキシム用いる。薬剤感受性不明段階では、耐性仮定して治療する。その他、B 群レンサ球菌髄膜炎菌では結晶ペニシリンGカリウムアンピシリンセフォタキシムなど、リステリア菌ではアンピシリン選択される原因菌判明する前の治療としては、アンピシリンセフォタキシム併用、あるいはパニペネム/ベタミプロン合剤一般的であるが、セフォタキシムパニペネムベタミプロン合剤併用することもある。
予防としては、感染者からの伝播避けることである。細菌性髄膜炎の原因菌対すワクチン国内唯一市販されているのは、23価の肺炎球菌多糖ワクチンである。欧米ではHib髄膜炎菌ワクチン認可されている。

感染症法における取り扱い2003年11月施行感染症法改正に伴い更新
細菌性髄膜炎は5類感染症定点把握疾患定められており、全国500カ所の基幹定点から毎週報告なされている。報告のための基準以下の通りとなっている。
診断した医師の判断により、症状所見から当該疾患疑われ、かつ、以下の2 つ基準全て満たすもの
1.以下の臨床症状呈するもの
発熱頭痛嘔吐主な特徴とする
項部硬直、Kernig 徴候、Brudzinski 徴候などの髄膜刺激症状いずれも新生児乳児などでは臨床症状が明らかではないことが多い)
2.以下の検査所見有すること
髄液細胞数の増加(多優位であることが多い)
髄液蛋白量の増加
上記基準は必ずしも満たさないが、診断した医師の判断により、症状所見から当該疾患疑われ、かつ、病原体診断血清学診断によって当該疾患診断されたもの
備考
原因となる病原体病原体診断血清学診断によって判明した場合には、病原体名称について併せて報告すること

国立感染症研究所感染症情報センター 多田有希岡部信彦





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