髄膜刺激症状とは? わかりやすく解説

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髄膜刺激症状

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2016/01/17 01:18 UTC 版)

髄膜刺激症状(ずいまくしげきしょうじょう、: syndrome of meningeal irritation, meningism)は、クモ膜下出血髄膜炎などで髄膜が刺激されている時に出る症状[1]。髄膜刺激症候、髄膜刺激徴候ともよぶ。

原因

脳脊髄液感染が起きたときや、出血などで髄膜が刺激されると本症を来たす。 クモ膜下出血や髄膜炎のほか、単純ヘルペス脳炎[2]日本脳炎[3]などで見られる症状。 羞明(しゅうめい)、頭痛嘔気嘔吐、項部硬直、ケルニッヒ徴候ブルジンスキー徴候などが見られる。

種類

髄膜刺激症状には以下のものがある。

  • 項部硬直(nuchal rigidity, nuchal stiffness)
    項部硬直(こうぶこうちょく)は仰臥位の患者の頭部を持ち上げると抵抗がある事。
    • 病態
      頭部を持ち上げると髄膜が伸展されて刺激される。正常ではその程度の刺激では抵抗を示さないが、感染などにより髄膜が刺激されている状態で伸展による追加刺激が加わると、追加刺激を和らげようとする方向に反射的に筋肉が働く。これが診察者には抵抗として観測される。反射なので本人の意識レベルに関係なく観測できる一方、小児などでは髄膜刺激があっても観測されない事がある。細菌性髄膜炎やクモ膜下出血では強く顕著に認め、それに比べて脳炎や非細菌性髄膜炎では軽度のことが多い[4]
    • 鑑別
      項部硬直が頚部の前屈に対してのみ抵抗を示すのに対して、頚部強直(強剛)の場合は前後左右あらゆる方向への抵抗が見られる。この現象はパーキンソン症候群頚椎症除脳硬直などで起こる[5]。また項部の筋痛があるために、抵抗を感じる場合もある。咽頭後壁膿瘍では髄膜刺激症状ではなく、咽頭の炎症・疼痛のため、項部硬直(頸部進展制限)が出現する。
  • ケルニッヒ徴候(Kernig's sign) : 膝関節が進展できない場合に陽性とし、決して疼痛の有無で判定しない。
  • ブルジンスキー徴候(Brudzinski's sign)
  • neck flexion test : 自発的に頸部を前屈させ、下顎が胸まで十分に近接するようであれば正常。前屈が困難であれば異常。
  • ジョルト・サイン(jolt accentuation of headache) : 子どもが「イヤイヤ」をするように、素早く頭部を左右に振り、頭痛が増悪するようであれば異常。2~3回/秒の早さで頭を水平方向に回してみて、頭痛が増悪すれば陽性とする[6]


成人髄膜炎に対する髄膜刺激症状所見の信頼性
検査・徴候 感度 特異度 陽性的中率 陰性的中率 陽性尤度比 陰性尤度比
項部硬直[7] 30% 68% 26% 73% 0.94 1.02
ケルニッヒ [7] 5% 95% 27% 72% 0.97 1.0
ブルジンスキー [7] 5% 95% 27% 72% 0.97 1.0
ジョルト・サイン 97.1%[8] 60%[8] 5.52[9] 0.95[9]

脚注

  1. ^ 細菌性髄膜炎の診療ガイドライン作成委員会編『細菌性髄膜炎の診療ガイドライン』、医学書院、2007年、p.93
  2. ^ 細菌性髄膜炎の診療ガイドライン作成委員会編『細菌性髄膜炎の診療ガイドライン』、医学書院、2007年、p.31
  3. ^ 田崎ら (2004) p.425
  4. ^ 田崎ら (2004) p.427
  5. ^ 田崎ら (2004) pp.37-39, p.288
  6. ^ 細菌性髄膜炎の診療ガイドライン作成委員会編『細菌性髄膜炎の診療ガイドライン』、医学書院、2007年、p.6
  7. ^ a b c Thomas, KE; Hasbun, R; Jekel first3=J; Quagliarello, VJ (Jul 2002). “The diagnostic accuracy of Kernig's sign, Brudzinski's sign, and nuchal rigidity in adults with suspected meningitis” (full text). Clin Infect Dis 35 (1): 46-52. doi:10.1086/340979. PMID 12060874. http://cid.oxfordjournals.org/content/35/1/46.long. 
  8. ^ a b Uchihara, T; Tsukagoshi, H (Mar 1991). “Jolt accentuation of headache: the most sensitive sign of CSF pleocytosis”. Headache 31 (3): 167-171. PMID 2071396. 
  9. ^ a b Waghdhare, S; Kalantri, A; Joshi, R; Kalantri, S (Nov 2010). “Accuracy of physical signs for detecting meningitis: a hospital-based diagostic accuracy study”. Clin Neurol Neurosurg 112 (9): 752-757. doi:10.1016/j.clineuro.2010.06.003. PMID 20615607. 

出典

田崎義昭、斎藤佳雄著、坂井文彦改訂『ベッドサイドの神経の診かた』改訂16版、南山堂、2004年。


髄膜刺激症状

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/12 02:42 UTC 版)

髄膜炎」の記事における「髄膜刺激症状」の解説

項部硬直ケルニッヒ徴候ブルジンスキー徴候ラセーグ徴候などが知られている。 項部硬直 患者仰臥位にしてはずして検者の手後頭部にあて静かに頭部持ち上げ下顎を前胸部につけるように前屈する。項部硬直があるときはその動きとともに抵抗がみられ、前屈制限され項部痛みがはしる。頸部前屈させるときに抵抗痛みがあり充分に前屈できない、すなわち胸部に顎がつかないとき陽性とする。項部硬直髄膜炎のほか、くも膜下出血小脳扁桃ヘルニア起こしかけている脳圧亢進状態、テント下の空間占拠病変小脳血腫腫瘍)、癌性あるいは白血病髄膜浸潤悪性症候群などでも認められる高齢者はしばし項部硬直間違えやすい頸部の異常がある。高齢者では首を他動的動かした時の抵抗髄膜炎項部硬直頚椎症パーキンソン症候群抵抗症(gegenhalten)といった筋緊張異常で認められる髄膜炎項部硬直では頸部の屈曲では抵抗があるが左右への受動的な回旋ではズムーズである。髄膜炎診断において項部硬直感度30%、特異度68%である。細胞数1000/μl以上の高度の髄膜炎のみで検討する項部硬直感度および陰性的中度100%であったケルニッヒ徴候 患者仰臥位にして一側下肢股関節および膝関節90度に屈曲させついで下腿を被動的に進展させる下腿持ち上げても膝が屈曲し下腿135以上に進展できない場合陽性とする。原典では座位行っている。腰仙髄部の髄膜炎症及んだ時に認められる徴候である。髄膜炎診断においてケルニッヒ徴候感度5%、特異度95%でありブルジンスキー徴候と同様である。 ブルジンスキー徴候 ブルジンスキー徴候仰臥位患者の頭を被動的に屈曲させると一側、あるいは両側下肢股関節膝関節屈曲するものを陽性とする。髄膜炎診断においてはケルニッヒ徴候と同様で感度5%、特異度95%である。 ラセーグ徴候 ラセーグ徴候通常坐骨神経痛などの試験であるが髄膜炎のときは両側性に出現する

※この「髄膜刺激症状」の解説は、「髄膜炎」の解説の一部です。
「髄膜刺激症状」を含む「髄膜炎」の記事については、「髄膜炎」の概要を参照ください。

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