日本軍の飛行場砲撃とアメリカ軍の増援
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「第三次ソロモン海戦」の記事における「日本軍の飛行場砲撃とアメリカ軍の増援」の解説
アメリカ軍の第67任務部隊第4群はかなりの損害を受けたが、日本艦隊のガダルカナル島ヘンダーソン飛行場砲撃を阻止したという点で任務を果たした。田中少将の日本軍輸送部隊は挺身艦隊によるガダルカナル島砲撃中止により、13日午後1時にショートランド泊地に戻った。しかし日本軍は諦めたわけではなく、あくまで第三十八師団をガダルカナル島へ投入しようとした。午後2時、輸送船ぶりすべん丸と駆逐艦江風が泊地を出港。午後3時30分には輸送船団本隊も出港した。 11月13日午後2時、残存挺身艦隊はオントン・ジャバ島東岸沖で待機していた第三戦隊(金剛、榛名)と合流し、駆逐艦に燃料補給を行った。それに先立つ午前9時55分、戦艦霧島と第四水雷戦隊、第十一駆逐隊、第十九駆逐隊に、残敵掃討とガダルカナル島砲撃命令が出る。午後2時43分、第十一戦隊に対してサボ島周辺に残るアメリカ軍艦艇への攻撃命令が出たが、この二つの命令は取り消された。なお、霧島は午後2時14分に米潜水艦から雷撃され、魚雷1本が命中するも不発だった。 艦隊が再編される中で、日本軍は再びヘンダーソン飛行場砲撃を計画した。山本長官は「ルンガ方面の残敵を掃討し、13日に外洋部隊巡洋艦、14日に霧島がヘンダーソン飛行場を砲撃せよ」という二段構え作戦の実施を各艦隊に求めた。これに伴い、ガダルカナル島から北西に位置するショートランド諸島に停泊していた西村祥治少将率いる第七戦隊(重巡洋艦鈴谷、摩耶)に出動命令が下った。その計画とは、カ号作戦支援隊:重巡洋艦鈴谷、摩耶、軽巡洋艦天龍、駆逐艦4隻が13日午後10時にガダルカナル島ヘンダーソン飛行場を砲撃し、14日午前6時に三川軍一中将率いる第八艦隊(重巡洋艦鳥海、衣笠、軽巡洋艦五十鈴)と合流というものだった。 アメリカ軍では、ハルゼー提督がリー少将の第64任務部隊に対し「戦艦2隻、駆逐艦4隻は最高速度で北進せよ。あえて指示する。サボ島の東方付近へ向かえ」と命令する。艦隊の任務は日本軍輸送船団の撃退だったが、燃料が最も多く残っている駆逐艦を集めただけの急造艦隊であり、司令官達は艦隊の練度に不安を抱えていた。米艦隊の切り札は、日本の大和型戦艦と同世代艦である新鋭ノースカロライナ級戦艦ワシントン、サウスダコタ級戦艦サウスダコタと2隻が搭載する計18門の40cm砲であった。戦闘前、リー少将は「われわれは兵員の経験、熟練、訓練あるいは実行能力において、ジャップに優れているとはいえなかった。しかし、われわれはこの戦闘で敵を突き崩すことができると信じる」と記した。ワシントンでは、乗組員の誰もが待ち望んだ艦隊決戦に興奮していたという。 11月13日午前5時40分、第七戦隊はショートランド基地を出港した。14日午前2時、第七戦隊の重巡洋艦鈴谷、摩耶がヘンダーソン基地の砲撃に成功する。消耗主砲弾数は鈴谷主砲504発、摩耶485発で、午前2時37分「飛行機の観測したるところ損害相当ありしものと認む」と各艦隊に報告した。だが重巡洋艦の20cm砲で複数の滑走路をもつヘンダーソン飛行場を使用不能にすることは困難であり、実際の戦果は航空機全壊18機、損傷32機におさえられ、飛行場の機能はすぐに回復した。 第七戦隊は、重巡洋艦鳥海、衣笠、軽巡洋艦五十鈴で編成される第八艦隊主隊とニュージョージア島南方で合流し、北上退避行動に入った。夜明けと共に、ヘンダーソン基地から偵察機が出動し、第八艦隊を発見する。同時刻、エンタープライズ索敵隊(ギブソン中尉)は「戦艦2隻、巡洋艦2隻、改造空母1隻、駆逐艦4隻発見」を報告した。こうしてガダルカナル島を発進した海兵隊機とエンタープライズ艦載機による攻撃が始まった。最初の攻撃は、ヘンダーソン基地から発進したF4F7機、SBD7機、TBF6機によるものだった。彼らは衣笠の右舷に魚雷3本、左舷に魚雷1本命中を記録した。またSBD隊は軽巡洋艦に爆弾2発命中を主張し、完全に停止したと報告している。続いて帰路についていたSBD2機(ギブソン機とブキャナン機)が到達、右舷に傾き油をひいた衣笠を発見すると急降下爆撃をおこない、前部甲板右舷・艦中央に500ポンド爆弾を命中させたと主張する。戦闘詳報によれば、午前6時30分頃から午前6時38分、重巡洋艦衣笠に爆弾と魚雷が命中、火災が発生して速力が低下した。続いてSBD2機(フーガーヴァーフ少尉機、ハローラン少尉機)が到着した。日本艦隊の隊列は乱れ、炎上した衣笠の周囲に2隻の駆逐艦がおり、主力部隊は北西に向かい、軽巡洋艦1隻と駆逐艦1隻が衣笠の15km西、重巡洋艦1隻と駆逐艦1隻が衣笠の20km南西を西に向かっていた。フーガーヴァーフ少尉は重巡洋艦を爆撃したが至近弾となった。ハローラン少尉機は行方不明となり、僚機は巡洋艦から激しい煙が上がるのを目撃した。午前7時26分、重巡洋艦摩耶には被弾したSBD爆撃機が体当たりし、魚雷発射管で火災が発生している。 リー少佐率いるエンタープライズ隊SBD16機は1,000ポンド爆弾を抱えて戦場に向かい、6隻の日本軍巡洋艦と4隻の駆逐艦を発見した。リー少佐は付近に日本空母がいる可能性を考慮して周囲を捜索したが発見できず、結局16機全機が巡洋艦部隊を攻撃した。2機が軽巡洋艦に爆弾を命中させ、左舷に傾いたと主張する。だがそれ以上の戦果はなかった。アメリカ軍機の波状攻撃により、衣笠は午前9時20分に転覆沈没、鳥海も多数の至近弾を受けて速力29ノットに低下し、五十鈴も至近弾(直撃弾とも)を受けて2・3罐室が満水となり駆逐艦朝潮の護衛でショートランドへ向かった。エンタープライズ隊は転覆した衣笠の上空を飛びつつ、ガダルカナル島ヘンダーソン飛行場に着陸した。第七戦隊は午後1時にショートランド基地に到着し、補給後再び出撃して輸送船団を護衛した。 日本軍輸送部隊も無事ではいられなかった。アメリカ軍偵察機に発見された田中輸送部隊は、ラッセル島北西の海域でガダルカナル島から飛来した攻撃隊、エンタープライズ攻撃隊、エスピリツ・サントを発進した陸軍B-17高空飛行中隊の反覆攻撃を受けた。飛鷹の航空隊やラバウル航空隊の零戦、千歳型水上機母艦千歳水上偵察機隊が船団上空を護衛していたが、頑丈で強力な防御火力をもつB-17や、波状攻撃をかけるSBD ドーントレス急降下爆撃機を阻止することは不可能だった。またF4Fワイルドキャット戦闘機との空戦で零戦隊にも被害が出た。エンタープライズはガダルカナル島に接近したので、アメリカ軍攻撃隊は何度も反復攻撃をかけることが出来た。一連の攻撃により付近にアメリカ軍空母がいることを察知した日本軍第八艦隊は、第十一航空艦隊に索敵と攻撃を依頼した。ラバウル基地から24機の一式陸上攻撃機が発進して米空母攻撃に向かったが、エンタープライズを発見できずに引き返している。 零戦隊の戦果は、飛鷹隊が8機撃墜を主張(零戦3機喪失)、第二〇四空の零戦12機が4機撃墜(2機喪失)、第二五三空の零戦6機が4機撃墜(3機喪失)、第五八二空の零戦9機が3機撃墜(3機喪失)。水上偵察機1機がSBDと空中衝突。船団の被害は、輸送船11隻中6隻(かんべら丸、長良丸、ぶりすべん丸、信濃川丸、ありぞな丸、那古丸)が沈没、佐渡丸が被雷傾斜。佐渡丸は駆逐艦天霧、望月に護衛されてショートランド泊地に撤退した。 輸送船団は大損害を受けた。さらに午後1時35分、水上機母艦千歳の偵察機が「空母2、戦艦1、巡洋艦1、駆逐艦4」という米艦隊を発見。午後2時20分、讃岐丸の偵察機がアメリカ軍空母と戦艦2隻を発見し、第七〇七航空隊索敵機がアメリカ軍艦隊との接触を続けた。偵察の結果、日米双方が戦艦を含む強力な水上部隊をガダルカナル島に投入しつつある事が明白となった。田中はガダルカナル島砲撃を行う第四戦隊(重巡洋艦愛宕、高雄)に続行し、同時突入することを決断した。 そのためには、アメリカ軍制空権の要であるヘンダーソン飛行場を夜間の内に使用不能にすることが必須だった。日中にガダルカナル島で揚陸作業を敢行すれば、ヘンダーソン飛行場発進機と米艦隊の双方から挟み撃ちにされてしまうからである。そこで近藤信竹中将率いる第二艦隊と挺身艦隊残存部隊の再編がおこなわれ、戦艦金剛、榛名、空母隼鷹を分離、戦艦霧島、重巡洋艦愛宕(旗艦)、高雄、軽巡洋艦川内、長良、駆逐艦9隻からなる艦隊となった。近藤艦隊の使命は、前夜の挺身艦隊と同じくヘンダーソン飛行場の壊滅とアメリカ軍艦隊の第三十八師団の露払いである。午後3時35分、前進部隊指揮官は以下の命令を発した。 今夜、敵巡洋艦、駆逐艦各数隻、「サボ島」付近の出現の算大なり。 右の場合は、一時陸上砲撃を中止し、敵を撃滅したる後、再興の予定。 計画及び予想に捉わるることなく会敵時の処置に万遺憾なきを期すべし。 第四戦隊(愛宕、高雄)は出撃前にガダルカナル島砲撃を行う可能性を示唆されており、日本軍の予感は的中したことになる。午後7時25分、特設水上機母艦讃岐丸がサボ島周辺にアメリカ軍巡洋艦2隻、駆逐艦4隻の存在を確認した。この時点で、日本軍はアメリカ軍の戦力を「空母1隻、戦艦4隻、巡洋艦2隻、駆逐艦4隻」と判断し、夜間水上戦闘に備えた。突入前、各艦は水上偵察機をレガタ基地に退避させている。
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