数理物理学方法序説とは? わかりやすく解説

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数理物理学方法序説

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/01/02 10:00 UTC 版)

保江邦夫」の記事における「数理物理学方法序説」の解説

50歳を目前に「数理物理学方法序説」を記す。対象高校2年生以上とあるが実際に大学理学部理解できるような内容である。 (1) 複素関数論 複素平面上にルベーグ測度簡潔に導入するところから出発しその上で定義される解析関数基本的な性質解説する実数直線上の関数比べて圧倒的な美しさを持つ複素関数世界広がるページ数の制約から等角写像保型関数射影変換超幾何微分方程式やそのモノドロミー表現といった魅力的な話題割愛してある。最初3分の1測度論、2変数ルベーグ積分超関数入門書となり後半3分の2がごく標準的な複素関数論への入門書となっている。一般的には見られないルベーグ積分入門紙数割いているのが特徴である。保江らしい記述最終章の「可換多元体への誘い」にある。天文学恩師である菊池衛門先生書いた高階複素数論」を紹介している。標準的な複素関数論では見ることができない高度な内容である。 (2) ヒルベルト空間論 東北大学理学部2年次在学中数学講義にて鶴丸孝司からヒルベルト空間上の完全作用素のスペクトル分解解説を受ける。保江いわく「長引く大学紛争うつつをぬかす自分たち学生の頭にガツーンと衝撃与えるような内容だった」、そして学問通じて学生運動貴重な時間浪費すべきでないことを身をもって伝えたという。この気魄満ちた空間論に多いに感銘を受け、一生ヒルベルト空間浸っていたいとまで思うようになる。ヒルベルト空間複素関数要素とする無限次元ベクトル空間なので実在する空間ではない。ヒルベルト空間おかげで量子力学数学的な正当性与えられる距離空間ノルム空間バナッハ空間そしてヒルベルト空間など関数解析基礎最短ルートで学ぶことができる。 2巻ヒルベルト空間論は、実は東北大学在学中習った鶴丸教授講義ノートそのものだという。学部上がり京大院や名大院に進学してからも、そしてスイスジュネーブ大に就職してからも、常にこのノート大事に携帯していたと後日供述している。 (3) 量子力学 量子力学シュレディンガー流とハイゼンベルク流の定式化がある。1つは超準数学無限小解析確率力学および確率過程組み込む方法、そしてもう1つ確率力学ニュートン力学組み合わせる方法である。前者1960年代に、後者1980年代になって発見された。どちらの方法からでも量子力学基礎方程式見事に導かれる(4) 確率論 最初3分の1確率測度使った確率論導出後半3分の2確率過程論である。確率過程というのは時間とともに変化する確率変数のことであり、ブラウン運動などの粒子ランダムな運動数学的に記述するモデルとして利用されている。 定理証明存在はいつもルベーグ測度ヒルベルト空間論によって裏付けられている。確率論にしても同様。確率空間をはじめ確率変数やその期待値分散確率分布関数など基本的なことがら存在証明されていく。8章ブラウン運動など不確定な物理量示される現象時間変数とする確率微分方程式使って導く説明があるこの段階での理論時間パラメーターについて対称的で、分子運動論でいえば粒子粒子の間の相互作用はないという状況となる。 (5) 変分学 理論物理学基礎方程式は、メタ理論としての変分学枠組み乗せることで数学的に整備され見通しのよい議論可能になる。この変分学基本を、ヒルベルト空間上の解析学として数学的に解説してある。全体的な流れとしては、多変実関数微分バナッハ空間上で定義されるフフレッシェ微分など解析学系の話題からはじまり、微分形式やその微分と積分ストークスの定理など幾何学的な話、そしてソボレフ空間定義してからソボレフ空間上の汎関数変分フーリエ級数フーリエ変換などが紹介される種々雑多分野寄せ集め見えるが、バナッハ空間ヒルベルト空間での微分汎関数変分問題として一意解が存在するという主張全体貫いている。 (6) 解析力学 通常の解析力学の本では一般化座標座標変換あたりから始めるが、本書ではいきなり多様体導入される一般化座標多様体上の点の位置表され一般化運動量はそれを微分した多様体上の接ベクトル対応する接ベクトル接ベクトル空間張りる。多様体上に定義される接ベクトルバンドル接ベクトル束)、ベクトル場ベクトル場フローなどはそれぞれ解析力学上の概念対応付けながら説明進んでいく。 解析力学としての展開はラグランジュ力学系からハミルトン力学系、正準変換母関数ポワッソン括弧積という通常の順番行われる。式展開上の微分面倒だ丹念に追えば理解できる本書ユニークさはその応用例にある。著者学部生のときに天文学専攻していたことが強く反映されている。制限付き多体問題や多粒子基準振動衝突散乱問題天体力学行われる摂動法などは入門書では滅多にお目かかれない例である。 天体力学での摂動法とは、天王星軌道乱れから海王星発見できたという歴史が示すように、理想的な楕円軌道からのずれを近似法求めることを言う。このような近似計算ハミルトン力学系という理想化され理論どのように行えばよいかが説明されている。 特筆すべき第15章リー環リー微分」の部分解析力学の本でリー環リー微分記述少ない。 ハミルトン系力学では正準方程式ポワッソン括弧表されるというのが解析力学だが、それが多様体上で代数学リー環の定義を満たし、さらにHフローハミルトニアンフロー)に沿うリー微分として定義される多様体上にリー環があれば、それは(リー環の)構造定数によって完全に決定されるし、ハミルトニアンフロー決定されることになる。ハミルトニアンフローによって物体運動決定されるこのように代数学幾何学力学美しく結びついていることがこの章で示されている。本書解析力学範疇超えて現代数学との関係を明確に示すことに成功している。 (7) 連続群連続群は別名「リー群」とも呼ばれる物理学で扱う対象なんらかの自由度についての連続的な変換からなる連続変換群がほとんどなので、この群が特に重要視される最初6章群論とは全く関係ないヒルベルト空間簡潔な復習有界線形作用素スペクトル分解解析ベクトルなど関数解析系の話が続く。7章以降はじまる群論解説読み、やっとその理由がわかるような構成である。すべてが関連持っているためである。ニュートン力学における3次元ユークリッド空間アインシュタイン4次元時空間量子場の理論ゲージ場それぞれ対応するガリレイ群、ローレンツ群ゲージ群それぞれ対応するリー群連続群)の構造定数対応しリー群リー環という代数構造対応しリー環ヒルベルト空間ユニタリー作用素によって表現される。またリー環微分可能多様体付随しているため、多様体上のベクトル接ベクトル空間ベクトル場フローなどが関連している。最初6章ヒルベルト空間論ユニタリー作用素など関数解析系の説明割かれていたのはそのような理由よる。量子場の理論作用素環論という代数学結びつき順を追ってはっきりと示されている。 (8) 微分幾何学 曲った空間数学的に取り扱うためのいくつかの概念測地線接続共変微分曲率など)を導入することから出発し、それをもとにして、一般相対性理論基礎方程式とその簡単な解まで一気論ずることを目指している。数式付き解説される他の中級者向け一般相対性理論入門とは異なり多様体についての説明導入部分に置き、現代微分幾何学との関わり強く意識している。4次元の擬リーマン時空多様体一般相対論では「曲がっている」わけだが、一般的なリーマン多様体ではこの「曲率」だけでなく「ねじれ」も定量化されること。そしてこの「ねじれ」が現代において最先端多次元空間非可換幾何学に結びついていること。保江は近年提唱されている「コンヌ博士非可換幾何学」や「超ひも理論」などについて「人為的過ぎる」と懐疑的な考え持っている重力場微分方程式を導くために変分法使って説明している。ここでは全宇宙のエネルギー積分を表す汎関数に対して最小作用原理を使う。また作用積分含まれている質点質量時空4次元空間計量から導かれる無限小質点測度として与えること、この無限小の量の積分ディラックのデルタ関数として計算されていること、幾何学的な計量質量という実在的な量に結びついていることも示している。 また、第3章と第18章大数学者リーマン1854年ゲッティンゲン大学行った講演内容紹介している。

※この「数理物理学方法序説」の解説は、「保江邦夫」の解説の一部です。
「数理物理学方法序説」を含む「保江邦夫」の記事については、「保江邦夫」の概要を参照ください。

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