ソボレフ空間
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/18 15:29 UTC 版)
数学においてソボレフ空間(ソボレフくうかん、英語: Sobolev space)は、函数からなるベクトル空間で、函数それ自身とその与えられた階数までの導函数の Lp-ノルムを組み合わせて得られるノルムを備えたものである。ここでいう微分を適当な弱い意味での微分と解釈することにより、ソボレフ空間は完備距離空間、したがってバナッハ空間を成す。直観的には、ソボレフ空間は(偏微分方程式のような応用範囲に対して)十分多くの導函数を持つ函数からなるバナッハ空間あるいはヒルベルト空間であって、函数の大きさと滑らかさの両方を測るようなノルムを備えたものということである。
- ^ 同様の式は一般のLp空間にも拡張でき、そのノルムをもつ空間はSobolev–Slobodeckij空間といい、Ws,p(Ω)と表す。
ソボレフ空間
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/30 09:02 UTC 版)
「変分法における直接解法」の記事における「ソボレフ空間」の解説
変分法における典型的な汎函数は、次の形式の積分である。 J ( u ) = ∫ Ω F ( x , u ( x ) , ∇ u ( x ) ) d x {\displaystyle J(u)=\int _{\Omega }F(x,u(x),\nabla u(x))dx} ここで Ω {\displaystyle \Omega } は R n {\displaystyle \mathbb {R} ^{n}} の部分集合であり、 F {\displaystyle F} は Ω × R m × R m n {\displaystyle \Omega \times \mathbb {R} ^{m}\times \mathbb {R} ^{mn}} 上の実数値函数である。 J {\displaystyle J} の引数は微分可能な函数 u : Ω → R m {\displaystyle u:\Omega \to \mathbb {R} ^{m}} で、そのヤコビアン ∇ u ( x ) {\displaystyle \nabla u(x)} は m n {\displaystyle mn} -ベクトルと結び付けて考えられる。 オイラー=ラグランジェ方程式を導出する際の一般的なアプローチは、 Ω {\displaystyle \Omega } の境界が C 2 {\displaystyle C^{2}} であり、 J {\displaystyle J} の定義域が C 2 ( Ω , R m ) {\displaystyle C^{2}(\Omega ,\mathbb {R} ^{m})} であるとするものである。この空間は上限ノルムが備えられるときにバナッハ空間となるが、回帰的ではない。直接解法が適用される場合、汎函数は通常 p > 1 {\displaystyle p>1} であるようなソボレフ空間 W 1 , p ( Ω , R m ) {\displaystyle W^{1,p}(\Omega ,\mathbb {R} ^{m})} に対して定義される。そのような空間は回帰的なバナッハ空間である。このとき、 J {\displaystyle J} の式における u {\displaystyle u} の微分は、弱微分として取られる。次節では、上述のタイプの汎函数の弱列的下半連続性に関する二つの定理を紹介する。
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ソボレフ空間
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/13 01:23 UTC 版)
ソボレフ空間 Hs あるいは Ws,2 はヒルベルト空間になる。これらの空間は微分が行えるような関数空間の一種で、(ヘルダー空間のようなほかのバナッハ空間とは異なり)内積の構造も持つ特別な場合になっている。微分が使えることで、ソボレフ空間は偏微分方程式論に対して都合がよい。また変分法における直接法の基礎も与えている。 非負整数 s と領域 Ω ⊂ Rn に対し、ソボレフ空間 Hs(Ω) は s 階までの弱微分が全て L2 に属するような L2-関数を全て含む。Hs(Ω) における内積は ⟨ f , g ⟩ = ∫ Ω f ( x ) g ¯ ( x ) d x + ∫ Ω D f ⋅ D g ¯ ( x ) d x + ⋯ + ∫ Ω D s f ( x ) ⋅ D s g ¯ ( x ) d x {\displaystyle \langle f,g\rangle =\int _{\Omega }f(x){\bar {g}}(x)\,dx+\int _{\Omega }Df\cdot D{\bar {g}}(x)\,dx+\cdots +\int _{\Omega }D^{s}f(x)\cdot D^{s}{\bar {g}}(x)\,dx} で与えられる。ただし、右辺のドット積は各階の偏導関数全体の成すユークリッド空間におけるドット積である。s が整数でない場合にもソボレフ空間は定義できる。 ソボレフ空間は、(ヒルベルト空間のより具体的な構造に依拠する)スペクトル論の観点からも研究される。適当な領域 Ω に対してソボレフ空間 Hs(Ω) をベッセルポテンシャル(英語版)全体の成す空間として定義することができる。これはだいたい H s ( Ω ) = { ( 1 − Δ ) − s / 2 f | f ∈ L 2 ( Ω ) } {\displaystyle H^{s}(\Omega )=\{(1-\Delta )^{-s/2}f|f\in L^{2}(\Omega )\}} のようなものである。ここで Δ はラプラス作用素、(1 − Δ)−s/2 はスペクトル写像定理(英語版)によって捉えることができる。非負整数 s に対するソボレフ空間の意味のある定義を与える必要があることをひとまず置いておけば、ソボレフ空間の定義はフーリエ変換のもとで特に望ましい性質を持ち、擬微分作用素の研究に対して理想的である。これらの方法をコンパクトリーマン多様体上で用いれば、例えばホッジ理論の基礎を成すホッジ分解が得られる。
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