ソボレフ空間
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/18 15:29 UTC 版)
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数学においてソボレフ空間(ソボレフくうかん、英語: Sobolev space)は、函数からなるベクトル空間で、函数それ自身とその与えられた階数までの導函数の Lp-ノルムを組み合わせて得られるノルムを備えたものである。ここでいう微分を適当な弱い意味での微分と解釈することにより、ソボレフ空間は完備距離空間、したがってバナッハ空間を成す。直観的には、ソボレフ空間は(偏微分方程式のような応用範囲に対して)十分多くの導函数を持つ函数からなるバナッハ空間あるいはヒルベルト空間であって、函数の大きさと滑らかさの両方を測るようなノルムを備えたものということである。
ソボレフ空間の名称はロシア人数学者のセルゲイ・ソボレフに因む。ソボレフ空間の重要性は、偏微分方程式の解が古典的な意味での導函数を備える連続函数の空間にではなく、むしろソボレフ空間にあると捉えたほうが自然であるという事にある。
導入
函数の滑らかさの基準にはいくつかの種類があり、最も基本的な基準はその連続性である。より強い判定基準は可微分性であり(実際、可微分函数は常に連続となる)、さらに導函数の連続性をも込めれば(そのような函数は C1-級であるといわれる)より強い滑らかさの概念が与えられる。 可微分函数は多くの分野、特に微分方程式の理論において重要である。しかしながら20世紀に入ると、そのような C1-級(あるいは同様な C2, ... といった滑らかさのクラスに属する)函数の空間というものは、微分方程式を研究するための空間として本当に適切なものとは言えない事が理解されるようになる。
ソボレフ空間はそのような偏微分方程式の解を求めるための空間の、現代的な代替物である。
単位円上のソボレフ空間
まずは単位円 T 上で定義される 1-次元(1-変数函数)の場合という最も単純な設定でソボレフ空間を導入することから始める。この場合のソボレフ空間 Wk,p は Lp-空間の部分集合であって、p ≥ 1 が与えられたとき函数 f とその弱微分が階数 k まで有限な Lp-ノルムを持つ函数 f の全体からなるものとして定義される。場合によっては微分を通常の強い意味での微分として扱うこともある。1-次元の問題においてはf の (k−1)-階導函数 f(k-1) が殆ど至る所微分可能で、その導函数のルベーグ積分と殆ど至る所一致することを仮定すれば十分である(これによりソボレフ空間の定義の狙いとは無関係なカントール函数のような例を除くことができる)。
この定義からソボレフ空間には自然なノルム
ソボレフ空間
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/30 09:02 UTC 版)
「変分法における直接解法」の記事における「ソボレフ空間」の解説
変分法における典型的な汎函数は、次の形式の積分である。 J ( u ) = ∫ Ω F ( x , u ( x ) , ∇ u ( x ) ) d x {\displaystyle J(u)=\int _{\Omega }F(x,u(x),\nabla u(x))dx} ここで Ω {\displaystyle \Omega } は R n {\displaystyle \mathbb {R} ^{n}} の部分集合であり、 F {\displaystyle F} は Ω × R m × R m n {\displaystyle \Omega \times \mathbb {R} ^{m}\times \mathbb {R} ^{mn}} 上の実数値函数である。 J {\displaystyle J} の引数は微分可能な函数 u : Ω → R m {\displaystyle u:\Omega \to \mathbb {R} ^{m}} で、そのヤコビアン ∇ u ( x ) {\displaystyle \nabla u(x)} は m n {\displaystyle mn} -ベクトルと結び付けて考えられる。 オイラー=ラグランジェ方程式を導出する際の一般的なアプローチは、 Ω {\displaystyle \Omega } の境界が C 2 {\displaystyle C^{2}} であり、 J {\displaystyle J} の定義域が C 2 ( Ω , R m ) {\displaystyle C^{2}(\Omega ,\mathbb {R} ^{m})} であるとするものである。この空間は上限ノルムが備えられるときにバナッハ空間となるが、回帰的ではない。直接解法が適用される場合、汎函数は通常 p > 1 {\displaystyle p>1} であるようなソボレフ空間 W 1 , p ( Ω , R m ) {\displaystyle W^{1,p}(\Omega ,\mathbb {R} ^{m})} に対して定義される。そのような空間は回帰的なバナッハ空間である。このとき、 J {\displaystyle J} の式における u {\displaystyle u} の微分は、弱微分として取られる。次節では、上述のタイプの汎函数の弱列的下半連続性に関する二つの定理を紹介する。
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