多次元領域上のソボレフ空間
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/01/08 16:07 UTC 版)
「ソボレフ空間」の記事における「多次元領域上のソボレフ空間」の解説
ここでは Rn と Rn の部分集合 D 上のソボレフ空間を考える。単位円上での話を実数直線上のものに変えるには、フーリエの公式の技術的な変更のみ行えばよい(基本的にはフーリエ級数をフーリエ変換に取り替えて、和を積分にする)。多次元への移行は、まさにその定義からしてもっと複雑なものになる。1-次元の場合の、 f(k−1) が f(k) の積分になっているという仮定は一般化できない。このことの最も単純な解決法は微分を超函数の意味での微分と考えることである。 形式的な定義を以下に与える。D を Rn の開集合、k を自然数とし、1 ≤ p ≤ +∞ とする。ソボレフ空間 Wk,p(D) は D 上で定義される函数 f で任意の多重指数 α (|α| ≤ k) に対して混合偏微分 f ( α ) = ∂ | α | f ∂ x 1 α 1 … ∂ x n α n {\displaystyle f^{(\alpha )}={\frac {\partial ^{|\alpha |}f}{\partial x_{1}^{\alpha _{1}}\dots \partial x_{n}^{\alpha _{n}}}}} が局所可積分かつ Lp(D) に属する(つまり ‖ f ( α ) ‖ L p < ∞ {\displaystyle \|f^{(\alpha )}\|_{L^{p}}<\infty } が成り立つ)ようなもの全体の成す集合として定義される。Wk,p(D) のノルムにはいくつかの選択肢があるが、次のふたつ ‖ f ‖ W k , p = { ( ∑ | α | ≤ k ‖ f ( α ) ‖ L p p ) 1 / p ( 1 ≤ p < + ∞ ) ∑ | α | ≤ k ‖ f ( α ) ‖ L ∞ ( p = + ∞ ) {\displaystyle \|f\|_{W^{k,p}}={\begin{cases}\left(\displaystyle \sum _{|\alpha |\leq k}\|f^{(\alpha )}\|_{L^{p}}^{p}\right)^{\!\!\!1/p}&(1\leq p<+\infty )\\[24pt]\displaystyle \sum _{|\alpha |\leq k}\|f^{(\alpha )}\|_{L^{\infty }}&(p=+\infty )\end{cases}}} および ‖ f ‖ W k , p ′ = { ∑ | α | ≤ k ‖ f ( α ) ‖ L p ( 1 ≤ p < + ∞ ) ∑ | α | ≤ k ‖ f ( α ) ‖ L ∞ ( p = + ∞ ) {\displaystyle \|f\|'_{W^{k,p}}={\begin{cases}\displaystyle \sum _{|\alpha |\leq k}\|f^{(\alpha )}\|_{L^{p}}&(1\leq p<+\infty )\\[20pt]\displaystyle \sum _{|\alpha |\leq k}\|f^{(\alpha )}\|_{L^{\infty }}&(p=+\infty )\end{cases}}} が一般的である。これらはノルムとして同値であり、いずれのノルムに関しても Wk,p(D) はバナッハ空間となる。有限な p に対して、 Wk,p(D) は可分空間でもある。上述のように Wk,2(D) は Hk(D) という別記法を持つ。 分数階ソボレフ空間 Hs(Rn) ( s ≥ 0) は先に述べたのと同様にフーリエ変換を用いて H s ( R n ) = { f : R n → R | ‖ f ‖ H s 2 = ∫ R n ( 1 + | ξ | 2 ) s | f ^ ( ξ ) | 2 d ξ < + ∞ } {\displaystyle H^{s}(\mathbf {R} ^{n})=\left\{f\colon \mathbf {R} ^{n}\to \mathbf {R} \ {\bigg |}\ \|f\|_{H^{s}}^{2}=\int _{\mathbf {R} ^{n}}(1+|\xi |^{2})^{s}|{\hat {f}}(\xi )|^{2}\,d\xi <+\infty \right\}} として定義することができる(フーリエ変換がユニタリ変換であるという事実を用いる)。しかし、 D が Rn あるいはトーラス Tn のように周期的領域でない場合、非周期敵領域上の函数のフーリエ変換を定めるのは無理であるから、この定義は十全ではない。しかし幸いにして、本質的にヘルダー連続性の L2-類似を用いた分数階ソボレフ空間の内在的な特徴づけが存在する。Hs(D) における同値な内積が ( f , g ) H s ( D ) = ( f , g ) H k ( D ) + ∑ | α | = k ∬ D × D ( f ( α ) ( x ) − f ( α ) ( y ) ) ( g ( α ) ( x ) − g ( α ) ( y ) ) | x − y | n + 2 t d x d y {\displaystyle (f,g)_{H^{s}(D)}=(f,g)_{H^{k}(D)}+\sum _{|\alpha |=k}\,\iint \limits _{D\times D}{\frac {(f^{(\alpha )}(x)-f^{(\alpha )}(y))(g^{(\alpha )}(x)-g^{(\alpha )}(y))}{|x-y|^{n+2t}}}\,dxdy} によって与えられる。ここで s = k + t (k は整数、0 < t < 1)である。領域の次元 n が内積に関する上記の式に現われていることに注意。
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