摂動法とは? わかりやすく解説

摂動

(摂動法 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/12/29 19:39 UTC 版)

摂動(せつどう、 英語: perturbation)とは、一般に力学系において、主要な力の寄与(主要項)による運動が、他の副次的な力の寄与(摂動項)によって乱される現象である。摂動という語は元来、古典力学において、ある天体の運動が他の天体から受ける引力によって乱れることを指していたが、その類推から量子力学において、粒子の運動が複数粒子の間に相互作用が働くことによって乱れることも指すようになった。なお、転じて摂動現象をもたらす副次的な力のことを摂動と呼ぶ場合がある。

摂動論

上記のような複数天体間、複数粒子間に相互作用が働くときの運動は数学的に厳密に解くことができないことが知られている(多体問題)。これらの数学的に厳密に解くことのできない問題の近似解を求める手法の1つに、摂動論(せつどうろん、 英語: perturbation theory)がある。具体的には、次のような手順で近似解を求める。

  • 考えている問題Aを、厳密に解ける問題Bに小さな変更(摂動)が加えられた問題であるとみなす。
  • 問題Aの近似解は、問題Bの厳密解に、摂動が加わったことによって生じる小さな補正(摂動項)を加えたものであると考える。
  • ここで求めるべき摂動項は、問題Bの厳密解の組み合わせ、すなわち一次結合の形で表現出来ると考え、その係数を与えられた条件から順次求める。

古典力学における摂動論

天体の運行において、地球太陽地球などを扱う二体問題は厳密に解くことができるが、三体以上の多体問題を厳密に解くことは(一般的な状況であれば)不可能である。ただし、月と地球、太陽と地球の問題では、他の天体からの引力による相互作用の効果は近似的に非常に小さいとして、これら二体問題に他の天体からの効果を補正項として考慮することによって十分精度の高い近似解を得ることができる[1]

量子力学における摂動論

量子力学における多体問題を解く上においても摂動論は重要な近似解法である。

時間に依存せず、縮退のない場合

前提

無摂動部分(無摂動項)のハミルトニアン


摂動法

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/09 04:29 UTC 版)

ヘリウム原子」の記事における「摂動法」の解説

「摂動法」を参照 2つ電子を持つヘリウム対すハミルトニアン個々電子対すハミルトニアンの和として書くことができる。 H = ∑ i = 1 2 h ( i ) = H 0 + H ′ {\displaystyle H=\sum _{i=1}^{2}h(i)=H_{0}+H^{\prime }} 上式において、0次の摂動ハミルトニアンH 0 = − 1 2 ∇ r 1 21 2 ∇ r 2 2Z r 1 − Z r 2 {\displaystyle H_{0}=-{\frac {1}{2}}\nabla _{r_{1}}^{2}-{\frac {1}{2}}\nabla _{r_{2}}^{2}-{\frac {Z}{r_{1}}}-{\frac {Z}{r_{2}}}} であるのに対して摂動項 H ′ = 1 r 12 {\displaystyle H'={\frac {1}{r_{12}}}} は電子-電子相互作用である。H0は単に2つ水素ハミルトニアンの和である。 H 0 = h ^ 1 + h ^ 2 {\displaystyle H_{0}={\hat {h}}_{1}+{\hat {h}}_{2}} ここで、 h ^ i = − 1 2r i 2 − Z r i , i = 1 , 2 {\displaystyle {\hat {h}}_{i}=-{\frac {1}{2}}\nabla _{r_{i}}^{2}-{\frac {Z}{r_{i}}},i=1,2} である。水素ハミルトニアンエネルギー固有値Eni対応する固有関数 ψ n i , l i , m i ( r → i ) {\displaystyle \psi _{n_{i},l_{i},m_{i}}({\vec {r}}_{i})} は規格化されエネルギー固有値規格化され固有関数を示す。したがって、 h ^ i ψ n i , l i , m i ( r i → ) = E n i ψ n i , l i , m i ( r i → ) {\displaystyle {\hat {h}}_{i}\psi _{n_{i},l_{i},m_{i}}({\vec {r_{i}}})=E_{n_{i}}\psi _{n_{i},l_{i},m_{i}}({\vec {r_{i}}})} であり、ここで E n i = − 1 2 Z 2 n i 2 (原子単位系) {\displaystyle E_{n_{i}}=-{\frac {1}{2}}{\frac {Z^{2}}{n_{i}^{2}}}{\text{(原子単位系)}}} である。

※この「摂動法」の解説は、「ヘリウム原子」の解説の一部です。
「摂動法」を含む「ヘリウム原子」の記事については、「ヘリウム原子」の概要を参照ください。

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