同音異義
『一休ばなし』(仮名草子)巻1-1 ある旦那が、養叟和尚と弟子の一休を斎(とき=食事)に招いて、一休の知恵を試そうとした。家の門の前に橋があったので、旦那は「此はしをわたる事かたく禁制なり」との高札を立てる。一休は端(はし)を通らずに、真中(まんなか)を渡って旦那の家へ入った。
『かぶ焼き甚四郎』(昔話) かぶ焼き甚四郎は、鷹に襲われた河童を助け、その礼に、望みのものを打ち出す延命(えめ)小槌をもらう。彼は小槌を振って大きな家を建て、嫁といっしょに住む。次に米と倉を出そうとして、早口に「こめくら」と言うと、大勢の小盲(こめくら)が出て来た。驚いた甚四郎は、もう1度言い直して、望みどおりの米と倉を出した(岩手県上閉伊郡)。
『武州公秘話』(谷崎潤一郎) 武蔵守輝勝は河内介であった時代、闇の中で主君織部正(おりべのしょう)則重を襲い、その鼻を削ぎ取った。これは則重の妻桔梗の方が望んだことだった。後、歌会で桔梗の方は、『源氏物語』「花散里」の歌をふまえて、「橘の香をなつかしみほととぎす花散る里をたづね来よかし」と詠じた。「花散る里」=「鼻散る里」で、夫則重の鼻がなくなった、との意味を込めた歌だった。
『平家物語』巻1「鹿谷」 東山の麓、鹿谷の俊寛僧都の山荘で、後白河法皇・浄憲法印らが平家討伐の謀議をする最中、瓶子(へいじ=徳利)が倒れた。新大納言成親が「平氏(へいじ)が倒れた」と洒落を言い、法皇は大いに喜んだ。
*「叔父さん」と「小父さん」→〔声〕6の『付き馬』(落語)。
『太平記』巻23「土岐頼遠御幸に参り合ひ狼藉を致す事」 土岐頼遠の一行が、樋口東洞院の辻で光厳院の御車と出会った。「院の御幸」と聞いた頼遠は、「なに、『院』と言うか、『犬』と言うか。犬ならば射て落とさん」と言って、矢を射かけるなど狼藉をはたらき、光厳院の御車は路上に顛倒してしまった〔*この事件に足利直義は激怒し、頼遠を処刑した〕。
*「茶(ちゃ)」と「蛇(じゃ)」→〔茶〕3の朝茶の由来の伝説。
『獄門島』(横溝正史) 梅の木に逆さ吊りされた花子を見て了然和尚がつぶやいた言葉は、金田一耕助には「気違いじゃがしかたがない」と聞こえた。しかしそれは、「鶯の身を逆さまに初音かな」という春の句にもとづいた殺人が、秋に行なわれたため「季違い」と言ったのだった。
『十訓抄』第7-29 内裏より、宇治殿(頼通)の持つ名笛「葉二つ」を召しにつかわした蔵人が、「御葉二つ召しあり」とだけ述べ、笛ということをいわなかったので、宇治殿は、老後に歯2つ召されるのはことわりなき旨の返事をした。
『日本書紀』巻14〔第21代〕雄略天皇6年(A.D.462)3月 雄略天皇が后妃に養蚕を勧めようと思い、臣下のスガルに国内の蚕(こ)を集めさせた。スガルは誤って嬰児(わかご)を集め、献上する。天皇は笑い、「お前が自分で養え」と言って、嬰児をスガルに与えた。また、スガルに姓(かばね)を与えて少子部連(ちひさこべのむらじ)とした。
*「無心官(心なしの役人)」を「無心肝(心臓がない)」と勘違いする→〔禁忌〕2の『封神演義』第24回。
『手水(ちょうず)をまわせ』(昔話) 村の宿に泊まった代官が、朝、「手水をまわせ」と命ずる。村人たちは「手水」がわからず、「長頭(ちょうず)」だろうと考えて、長い頭の男を連れて来て頭を回させた。
『葱を持て』(昔話) 村の宿に泊まった代官が、蕎麦に薬味がないので「葱を持て」と命ずる。村人たちは「葱」を知らず、相談して神社の禰宜(ねぎ)を連れて来た。
★2.「芽」と「目」という同音異義語を用いて、兄弟の生き方の違いを語る。
『里芋の芽と不動の目』(森鴎外) 増田博士は、自分と兄の生き方の違いを語った。「己(おれ)は子供の頃、田舎で里芋の選り分けをしたことがあった。芽の闕(か)けた芋は食う方へ入れ、芽のある芋は植える方へ入れるのだ。己は西洋の学問をやって化学者になったが、兄貴と違って不動の目玉は焼かない(*→〔絵〕1c)。里芋を選り分けるようなぐあいに、ぽつぽつやって行くんだ」。
★3.同じ言葉で、正反対の二つの解釈ができるような物言いをする。
『日和ちがい』(落語) 使いに出かける男が、易者に天気を問う。易者が「今日は降るような日和じゃない」と言うので、男は安心して傘を持たずに行く。ところが大雨に遭ってしまい、男は易者に文句を言う。すると易者は「わしは『今日は降るような』と言った。その後にさらに『日和じゃない』と念押ししたのだ」と言いくるめる。
★4.人の言った言葉を、ことさらに別の意味に解釈して、利益を得る。
『古今著聞集』巻16「興言利口」第25・通巻513話 法性寺忠通の供をする下野武正が、山崎で落馬した。後に再び山崎を通った時、忠通がそのことを思い出して、「ここか、武正が所は」と言った。武正はその言葉に乗じて、そのまま山崎の地を領有した。
★5a.「翁」という語の意味。
『今昔物語集』巻31-6 賀茂祭りの日、辻に「此ハ翁ノ物見ムズル所也。人立ツベカラズ」との高札が立つ。陽成院が祭りを御覧になるのだろうと人々は思い、その場をあけておく。ところが、祭りの行列が近づく頃、そこへ来て見物したのは、西八条の刀禰をつとめる八十翁だった。
★5b."instrument"という語の意味。
『Yの悲劇』(クイーン) ヨーク・ハッターが自分の家庭をモデルにして、妻殺しの犯罪小説の筋書きを作った。ヨークの死後、13歳の孫ジャッキーが筋書きを読んで、そのとおりに実行する。しかし「鈍器( blunt instrument )で打って殺す」という文章が理解できず、ジャッキーは "instrument" =「楽器」と考え、マンドリンを凶器として使用した→〔二人一役〕3。
*「声」という語の意味→〔声〕8。
Weblioに収録されているすべての辞書から同音異義を検索する場合は、下記のリンクをクリックしてください。
全ての辞書から同音異義を検索
- 同音異義のページへのリンク