他の概念や疾患との別とは? わかりやすく解説

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他の概念や疾患との別

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/07 17:42 UTC 版)

性同一性障害」の記事における「他の概念や疾患との別」の解説

「精神病」精神疾患 mental disorder」と「精神病 psychosis」は別である。精神疾患は、脳の機能的障害器質的障害によって引き起こされる精神的心理的見地からみた疾患総称である。古典的に精神疾患精神病神経症分類し精神病には、統合失調症気分障害含まれた。現在は精神病という言葉はあまり使われないが、性同一性障害精神病含まれないDSMでは、他の多く精神疾患などと同様、性同一性他の精神疾患による妄想などによるものではないことを確認し除外診断するよう求めている。日本における性同一性障害診断と治療指針ある日精神神経学会「性同一性障害に関する診断と治療ガイドライン (第3版)」においても、DSM準じた上で性同一性障害精神疾患分類されるが、性同一性障害において妄想幻覚および人格解体無く精神病ではないとしている。 従って、性同一性障害診断において、統合失調症などの妄想原因自身性別否定している場合除外されるが、精神障害罹患していることをもって性同一性障害診断をしないなど画一的治療から排除するものではない。 「同性愛」ホモセクシュアルゲイレズビアン) しばしば同性愛ホモセクシュアルゲイレズビアン)と混同されることがあるが、これらは概念異なり両者には根本的な相違がある。同性愛は「恋愛対象がどちらの性別であるか」の性的指向に関する概念であり、性同一性障害は「自己の性の意識はどちらの性別であるか」の性同一性に関する概念である。 同性愛は、男性が“男性として”男性愛する、または女性が“女性として女性愛するものであり、自身性別違和感持っているわけではなく反対の性になりたいわけでもない性同一性障害は、恋愛対象がどちらの性別であれ、その人自身が、性の自己意識身体の性との不一致により、自身生物学的性別への違和感身体とは反対の性への一体感を持つ。たとえば、男性同性愛者性同一性男性であり、自分男性であることにも、男性として扱われることにも違和感がなく、“男性として”男性愛している。性同一性障害当事者 (MtF) の性同一性女性であり、自分身体男性であること、男性として扱われてしまうことに違和感をもつ。誰を好きであるから性別違和感を持つという表面的な程度ではなく根源的に「身体の性別が違う」という感覚有している。 同性愛することは、異性愛すること同じくその人自身恋愛の自然なあり方であって何らかの疾患、たとえば性同一性障害原因などというものではない。同性愛疾患ではなく同性愛者何ら医学的治療を必要としないが、性同一性障害疾患であり、その当事者多く医学的治療を必要とする。 性同一性障害において「心の性」「心は男性・女性」といった表現があるが、他方で、性的指向基準とした「心の性」の記述、たとえば男性同性愛者指して時に「心が女性」という形容認識がなされ得る。この言葉上の混同により、当事者による「自分性同一性障害心の性女性」との説明に、他者にはあるいは「男性が好きということか。つまり同性愛」と受け取られかねない性同一性障害における「心の性」とはあくまで「性同一性 gender identity」という用語を便宜的に平たく表現したものであり、そして男性同性愛者性同一性女性であるから恋愛対象男性というわけではない。 性的指向と性同一性とは別の概念であり、別個に捉える必要がある性同一性がどちらの性別であるかに関して性的指向はその基軸にはならない性同一性障害有する有さないに限らず異性愛同性愛存在する性的指向相手がいることで成り立つが、性同一性はあくまで自分一人問題である。たとえば「ある女性が、女性愛する(同性愛)。すなわち性同一性心の性)が男性ということであり、その女同性愛者性同一性障害である」という理解は全くの誤りである。もしその女自身性の自己意識身体の性との不一致抱えていたとしたら性同一性障害であり、抱えていないとした性同一性障害ではない。このとき、その女性がどちらの性別恋愛対象としているかは別の事柄である。 ちなみに性同一性障害当事者のうち、FtM恋愛対象女性MtF恋愛対象男性である場合多く、これらは同性愛ではなく異性愛となる。 分界条床核人間の性に深い関わりがあるとされる神経細胞群で、男性のものは女性よりも有意大きい)の体積測定したある調査 では、男性女性男性同性愛者性同一性障害 (MtF) のそれぞれ複数名が被験者となったが、当事者 (MtF) は女性とほぼ等しく男性同性愛者男性とほぼ同じ傾向示した性的指向分界条床核大きさとの関連見られなかった)。 「異性装」男装女装性同一性障害当事者は、大多数人々同じく、あくまで性の自己意識に基づく服装をしているのみであり、男装女装などの異性装とは異なる。 人が異性装いをする理由はさまざまにあると見られるが、服装好みよるもの性的嗜好よるものサブカルチャーにおける服飾などであり、いずれも性の自己意識に基づく装い由来ではない。どのような様態であれ、身体の性とは反対性別装いである事由が、性の自己意識生物学的性別との不一致よるもの以外のあらゆる事例性同一性障害と見ることはできない。 また異性装者は、純粋にそれを楽しむためや、あくまで趣味捉えていることが多い。性同一性障害抱える者は、家族親類との関係や仕事への就業雇用外科的手術戸籍上の名や性別変更など、まさに一つ人生そのもの問題であり、とても趣味や楽しみと呼べるものではない。加えて、「男装」「女装」という言葉は、「女性男性)が、男(女)の装いをする」という、つねに身体的性別前提および明示とする表現であるため、性同一性障害当事者は、他者から「男装」「女装」との誤解呼称をされることを嫌悪する場合がある。 「ニューハーフ」 ニューハーフとは、身体的に男性であることを明示した上で女性性体現し接客業芸能業などに従事する者をいうある種職業名であり、疾患名である性同一性障害同義ではない。 ニューハーフ呼ばれる人のなかには性別違和感持たない男性近年女装家呼びニューハーフとは分けるようになっている)もおり、またその一方で性同一性障害抱える者もいる。他方多く性同一性障害当事者はごく一般的な仕事に就いており、職業的な意味合いニューハーフではない。また、ニューハーフ自ずと身体的性別公にあることを前提とする職業となり、GID当事者多くはそうした特殊な環境希望しない。 性同一性障害抱えることと、個人としていずれか特定の職業対す適性有無とも全く関連はない。とくに性同一性障害広く知られていなかった過去において、性同一性障害理由一般的な仕事に就くことができない、あるいはこうした仕事にしか就けないものと思い込んで「ニューハーフ」従事する当事者多くいたが、適性がないと感じて悩む事例もまた多くあった。 ただし近年は、職業名としてというより、外見的社会的身体的内面的に女性として生きたい人を指す総称であると認知あるいは自称される場合がある。一例として、「IT系企業ニューハーフ社長」「ニューハーフシンガーソングライター」などと紹介あるいは自称されることがある「おかま」 「おかま」とは「肛門」の別名で、転じて男性同性愛者を指すものとなった俗語である。性同一性障害 (MtF) は男性同性愛者と同じではない。また、本来この言葉性的な意味合い肛門による性行為の意)があり、か同性愛者対す侮蔑意図を含むため、もとより他者への呼称使われるべきものとは言えない。 性同一性障害抱える者の大多数は、性の自己意識に基づく性別での平静な一般生活をしており、またはそれを希望している一人個人である。そして対外的な性別移行するにあたり、「親や友人から拒絶されるかもしれない」「仕事解雇されるかもしれない」「たとえ移行できたとしても、その性別姿容得られるのか、仕事をみつけることはできるのか」など、甚大な不安や苦悩抱えながら試みるものである多く努力犠牲経て、ようやく障壁乗り越えた者に対し一般に侮蔑の意味を含む(かつ誤用である)「おかま」と呼ぶことは、なんら適切ではない。 また、世間では「おかま」本来の意味合い知らないまま混同し、「女っぽい男」「男を好きな男」「女の格好をした男」など、いわば「一般男性像とかけ離れた者」に対して、なんとなくうやむやに使いつづけられているのが現状である。ただ、「女っぽい男」はその人性格であり、「男を好きな男」は同性愛であり、「女の格好をした男」は女装であり、それぞれ全て別々で異な概念である。 性同一性障害当事者はごく普通の一般人であり、また身体的性別公表望まないため、テレビなどメディア登場することは滅多に無い。おもにバラエティ番組において「おかま」自称した芸風とするタレントが、ことさらに女言葉用いたり過剰に女性的なしぐさをしたり、性に開放的男性惚れやすい等のステレオタイプ「おかま」キャラクター演じているが、性同一性障害当事者このような性格を持つ者は極めてまれといえるまた、それは個人として性格であり、性同一性障害とは関連しないメディア登場するタレント一般とは違う突出した個性才能を持つがゆえにタレントであり、そのごく一部特殊な少数見て全体解することは誤謬を招く。テレビ番組は常にインパクト求め商業活動であること、また『バラエティ番組撮影』という日常とはかけ離れた状況での演出表現ということにも留意要する「性差の撤廃」 社会文化における男女扱いの差をなくしたとするならば、性同一性障害有する者の苦悩なくなり治る」のかといえば、それは決してない。もし仮に撤廃実現したところで、現実的物理的に当事者自身身体確然存在し身体的性別対す違和感嫌悪感取り払うことにはならない。またなにより、それらの苦悩単なる好き嫌い損得ではなくその人自身の持つ性の自己意識基底にある。性同一性障害当事者抱える問題のその根幹は『身体の性の不一致』であり、社会的文化的な性差撤廃とは根本的な相違がある。 「性嗜好」 性同一性障害は、大多数人々同じくあくまで性の自己意識基づいた服装をしているものであり、性的快感求めるための手段や性的欲望満たす目的として異性装を行うなどの性嗜好ではない。 性同一性障害診断において、身体的性別とは反対の性の服装をする事由もっぱら性嗜好よるもの除外診断対象となる。 性同一性障害当事者一部には、上記概念のうち主として「同性愛」あるいは「ニューハーフ」重なることはあるが、これらはその個人としてありかた一つであり、多く当事者上記全ての概念重ならない諸々概念それぞれとしての事象であり、それぞれとして明確に区別して考え必要がある性同一性障害抱える者は、性の自己意識身体の性とが一致しない以外は一般の人々となんら変わりはない。そして多く当事者は、性の自己意識に基づく性別での普通の生活をすることを第一義としている。身体的性別公にしたがらないため、いたずらに自身性同一性障害当事者であることをわざわざ周囲の人に告げることもない。とくに、戸籍上の性別変更をすでに終えた当事者場合自身性同一性障害であったことすら意識せず平静な日々送っていることも多い。性同一性障害当事者世に表立つことはほとんどないため、大多数人々性同一性障害実際目にする機会少なといえるインターネットによる情報収集の際にも、言うまでもなく信頼性のある資料に当たることが大切である。インターネット玉石混淆メディアであり、医療機関専門医当事者有志による適正な解説もある一方専門医でも当事者でもない者が、性同一性障害実際知らぬまま、誤解基盤とした差別偏見狭く限られた個人的な体験による私感私情等を根源とする言葉存在することもあり得る性同一性障害専門一つとするある医師は、インターネット上で性同一性障害に関する情報において、なかには誤謬のあるものや、悪質な嘘偽り多く存在する、との旨を記している。また、インターネット匿名性においては実際に性同一性障害との医学的な診断受けたわけでもなく「自分性同一性障害」と自称することも容易である。 現在「性同一性障害」という、名こそ広く知られているが、その反面、この疾患名を知る人々の全てが、必ずしもこの疾患概念正しく把握しているとも限らない。とくに同性愛男装女装との混同など、いまだ正し認識あまねく浸透しているとは言えない。そのような状況にあって、ある者が「性同一性障害」という言葉用いた時、もしくはある者が「自分性同一性障害」と自称した時、その者が、同性愛趣味による男装女装のことを性同一性障害だと誤認して用いている場合あり得る

※この「他の概念や疾患との別」の解説は、「性同一性障害」の解説の一部です。
「他の概念や疾患との別」を含む「性同一性障害」の記事については、「性同一性障害」の概要を参照ください。

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