メカジキ科とは? わかりやすく解説

メカジキ

(メカジキ科 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/05/20 06:30 UTC 版)

メカジキ
生息年代: 33.9–0 Ma
Є
O
S
D
C
P
T
J
K
Pg
N
漸新世初期 - 現在
メカジキ X. gladius
保全状況評価
LOWER RISK - Near Threatened (IUCN Red List Ver. 2.3 (1994))
[1]
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 条鰭綱 Actinopterygii
: バショウカジキ目 Istiophoriformes
亜目 : カジキ亜目 Xiphioidei
: メカジキ科 Xiphiidae
: メカジキ属 Xiphias
: メカジキ X. gladius
学名
Xiphias gladius
(Linnaeus,1758)
和名
メカジキ(目梶木、眼梶木)
英名
Swordfish

メカジキ(目梶木、眼梶木、学名 Xiphias gladius )は、バショウカジキ目メカジキ科に分類されるカジキの一種である。カジキ類の中でも最大級で、食用に漁獲される。メカジキ科唯一の現生種であり、メカジキ属唯一の種である。化石魚類のプロトスフィラエナProtosphyraena)属は類似した形態を持つが、近縁種ではない(以前はカマスまたはカジキの祖先と考えられていたが、現在は否定されている)。

名前

英名"Swordfish"は、長く扁平な吻が両刃のに似ることに由来する。学名の種小名"gladius"も、古代ローマで用いられた両刃の剣・グラディウスに因む。

日本国内の地方名としては、メザス(富山)、ダクダ、ラクダ(千葉)、メカ(東京、高知県室戸)、メサラ、メダラ(神奈川)、シュウトメ(高知、和歌山)、ツン(山口、高知)、ハイオ(熊本)、ゴト(鹿児島)などがある[2][3]

特徴

成魚は最大で全長4m・体重500kgを超える大型魚で、カジキ類の中でも非常に大型の種類である。また、メスはオスより大きい。

他のカジキ類と同様に体は紡錘形で、上顎が長く伸長し強大なを形成する。ただし他のカジキ類と異なる特徴として、吻が縦扁し体に比して非常に長い、が頭部に比して大きく、これが「目旗魚」という名前の由来となっている。腹鰭の他、成魚にはがない、体の断面はほとんど側扁しない、成魚の背鰭は状で基底が短い、尾柄の水平隆起線が2対ではなく1対であることなどが挙げられる。これらの相違から、他の現生カジキ類が全てマカジキ科として分類されるのに対し、メカジキは1種のみでメカジキ科メカジキ属として分類されている(単型[4][5][6][7]

生態

全世界の熱帯温帯域に広く分布する。生存に適する水温範囲は18-22℃だが、生息できる温度は5-27℃と幅広く、他のカジキ類が生息できないような低温の海域にも出現する。

外洋の表層・中層に生息し、群れを作らず単独で遊泳する。背鰭を水面上に出して泳いだり水面上に飛び上がったりもする一方、深海の海底付近まで下って餌を捕ることもある。食性は肉食性で、特にイカ類を好むが、他の魚類や甲殻類なども捕食する。性質は獰猛で、船舶や大型魚、クジラなどにも突進する[8]

繁殖期は夏から秋で、分離浮性卵を産卵する。幼魚は歯があり、背鰭の基底が体の後半部まで続いているが、成長に従って歯が消失し、背鰭が鎌状に変化する[2][4][5][6]

利用

マグロ延縄突きん棒で漁獲される。漁獲の際には長い吻による死傷例もある[9]

新鮮な肉は淡いピンク色だが、冷凍すると白濁になる。味はマカジキよりは劣るとされているが、刺身煮付けフライムニエルなどの他、缶詰蒲鉾にも利用される[2][4]

吻は利用法が無いため捨てられていたが、気仙沼市のジーンズ製造会社が粉末にして繊維に織り込んだ製品を販売している[10]

乱獲による個体数減少が懸念されており、IUCNレッドリストでは1994年からDD(情報不足)として掲載されている。

食料として見た場合、メカジキの体内に含まれる微量の水銀に注意する必要がある。厚生労働省は、メカジキを妊婦が摂食量を注意すべき魚介類の一つとして挙げており、2005年11月2日の発表では、1回に食べる量を約80gとした場合、メカジキの摂食は週に1回まで(1週間当たり80g程度)を目安としている[11]

なお、アメリカのFDAは、有機水銀が蓄積されている可能性が高いとして2003年に妊婦や授乳中の女性および子供はメカジキを摂取しないよう勧告を行っている[12]

参考文献

  1. ^ IUCN 2008 Red List - Xiphias gladius
  2. ^ a b c 蒲原稔治著・岡村収補訂『エコロン自然シリーズ 魚』1966年初版・1996年改訂 保育社 ISBN 4586321091
  3. ^ 井田齋他『新装版 詳細図鑑 さかなの見分け方』2002年 講談社 ISBN 4062112809
  4. ^ a b c 檜山義夫監修『野外観察図鑑4 魚』1985年初版・1998年改訂版 旺文社 ISBN 4010724242
  5. ^ a b 内田亨監修『学生版 日本動物図鑑』1948年初版・2000年重版 北隆館 ISBN 4832600427
  6. ^ a b 『世界文化生物大図鑑 魚類』(メカジキ執筆者 : 中村泉)2004年改訂新版 世界文化社 ISBN 4418049037
  7. ^ Xiphias gladius - Froese, R. and D. Pauly. Editors. 2008.FishBase, version (09/2008)
  8. ^ ただし、これは泳ぐ速度が速すぎたために、よけられずに衝突してしまったものではないかとする意見もある。
  9. ^ “ハワイ島で死亡事故、メカジキはなぜ漁師を刺殺したか”. ナショナルジオグラフィック. (2015年6月14日). https://www.nikkei.com/article/DGXMZO87858670Z00C15A6000000/ 2018年4月30日閲覧。 
  10. ^ なりわい(5)及川洋さん 「気仙沼ジーンズ」世界へ”. 河北新報オンラインニュース (2021年2月17日). 2022年2月2日閲覧。
  11. ^ 厚生労働省医薬食品局食品安全部基準審査課 (2003年6月3日). “妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項の見直しについて(Q&A)(平成17年11月2日)”. 魚介類に含まれる水銀について. 厚生労働省. 2013年3月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年4月15日閲覧。
  12. ^ What You Need to Know About Mercury in Fish and Shellfish,2004 EPA and FDA Advice For: Women Who Might Become Pregnant, Women Who are Pregnant, Nursing Mothers, Young Children.

メカジキ科

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2013/09/01 04:06 UTC 版)

サバ亜目」の記事における「メカジキ科」の解説

メカジキ科 Xiphiidae はメカジキ Xiphias gladius のみ、1属1種世界中熱帯・亜熱帯外洋生息する本科魚類マカジキ科含めた2科と合わせカジキ」と総称されさまざまな形学的特徴共有する。両グループ姉妹群の関係にあることは広く認められているが、1つの「メカジキ科」にまとめるか2科に分割するかは見解分かれている。 上顎状あるいは剣状に著しく伸長し、吻は上下に平たい。成魚は顎の歯・腹鰭を欠く。 メカジキ属 Xiphias

※この「メカジキ科」の解説は、「サバ亜目」の解説の一部です。
「メカジキ科」を含む「サバ亜目」の記事については、「サバ亜目」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「メカジキ科」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ

「メカジキ科」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「メカジキ科」の関連用語

メカジキ科のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



メカジキ科のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのメカジキ (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaのサバ亜目 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2025 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2025 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2025 GRAS Group, Inc.RSS