クラミジア肺炎とは? わかりやすく解説

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クラミジア肺炎

疫 学
本来、クラミジア肺炎とは、クラミジアによる肺炎という意味であり、肺炎クラミジアトラコーマ・クラミジアオウム病クラミジアによる肺炎含まれる。しかし、肺炎クラミジアならびにトラコーマ・クラミジアによる肺炎と、人獣共通感染症でしかも症状の強いオウム病とは病態や対応が異なるため、区別して扱われており、感染症法では前2者をまとめてクラミジア肺炎(オウム病を除く)として分類している。

病原体
クラミジア細胞内でのみ増殖する偏性細胞内寄生微生物であり、DNARNA有し、2分裂増殖する感染性基本小体宿主細胞吸着・侵入し、封入体の中で増殖形態である網様体変化して分裂増殖した後に、再び基本小体に戻り細胞破壊と共に細胞外に放出されるという特異なライフサイクル有する(IDWR2001年第45号「感染症の話」)。
1992 年以降クラミジアChlamydia)はC. trachomatis (トラコーマ・クラミジア)、C. psittaci (オウム病クラミジア)、C. pneumoniae(肺炎クラミジア)、C. pecorum (クラミジア・ペコルム)の4 種分類され、前3者がヒト病原性確認されている。1999 年提唱され新分類では、トラコーマ・クラミジア従来どおりChlamydia 属に、また肺炎クラミジアC. psittaci、C. pecorum とともにChlamydophila 属に再編された。

疫 学
C. trachomatis 肺炎
C. trachomatis 肺炎発生新生児乳児期にほぼ限られる感染母体からの新生児・乳児肺炎発症は3~20%高率であると報告されているが、本症は4 類感染症定点報告疾患であり、正確な発生数把握はされていない成人では、性感染症として咽頭感染することが知られているが、免疫低下時以外は肺炎にいたることはきわめてまれである。

C. pneumoniae 肺炎
C. pneumoniae による疾患としては急性上気道炎急性副鼻腔炎急性気管支炎、また慢性閉塞性肺疾患COPD)を主とする慢性呼吸器疾患感染増悪、および肺炎である。C. pneumoniaeは市中肺炎の約1 割に関与するが、発症年齢マイコプラズマ肺炎異なり小児のみならず高齢者にも多い。性差ではやや男性が多い。また、他の細菌との重複感染少なくない家族感染集団流行もしばしば見られ集団発生小児のみならず高齢者施設でも報告されている(IASR Vol.22 No.6 p10 (144 ))。感染既往を示すC. pneumoniae IgG 抗体保有率は小児期急増し成人で5~6 割と高い。この抗体には感染防御機能はなく、抗体保有者何度でも感染し発症し得る。

感染症発生動向調査によるクラミジア肺炎の定点からの年間報告数は、1999 年14以降)が129 例であり、また2000年では178であった性別では、1999 年男性63%、女性37%で、2000年男性58%、女性42%でいずれも男性多かった年齢はいずれも0~14 歳65 歳以上に多く見られた。季節的に特定の傾向認められなかった。実際にマイコプラズマ肺炎比べて多く症例確定診断をされずに異型肺炎として治療されている可能性があり、この報告数は実情よりかなり低いものと思われる。また生後6 カ月未満症例には、C. pneumoniae とC. trachomatis が混在しているものと思われるが、現時点での把握は困難である。

病態生理(図1)
C. trachomatis 肺炎
クラミジア子宮頸管炎をもつ母親から分娩時に産道感染し、生後3カ月までの間に肺炎を来たす。結膜炎鼻炎先行することが多い。

C. pneumoniae 肺炎
ヒト宿主とし、飛沫感染伝播して主に急性呼吸器感染症起こす感染から症状発現までの潜伏期間は3 ~4 週間で、接触密接な者の間で小規模に緩徐広がる肺炎発症機序としては、上気道初感染下降して肺炎に至るものが主とされるが、上気道感染巣から血行性にいたる経路ありうる。本による肺炎では非定型肺炎病態示しクラミジア即時細胞毒性免疫反応関与考えられている。また最近C. pneumoniae は血管などに慢性感染起こしうることが明らかとなり、動脈硬化疾患関わる疑い指摘されている。

クラミジア肺炎

1. クラミジア肺炎の感染経路病態

臨床像
C. trachomatis 肺炎
新生児・乳児肺炎通常は無熱であり、多呼吸喘鳴湿性咳嗽などの呼吸器症状呈する一般に酸素投与人工呼吸要する症例少ないが、低出生体重児などでは重症化する場合もある。

C. pneumoniae 肺炎
上気道炎気管支炎では乾性咳嗽主体で、肺炎では喀痰を伴うこともある。遷延性激し咳嗽有する症例比較的多い。38 上の高熱呈する症例はあまり多くない小児においては比較軽症症例が多いが、高齢者基礎疾患を持つ例では重症例も見られる一方で症状を欠く無症候性感染もまれでなく、本来は自然治癒傾向が強い。他は咽頭痛鼻汁、嗄(さ)声、呼吸困難などであるが、特異的な臨床所見乏しい。

検査・診断
C. trachomatis 肺炎
新生児肺炎では、胸部X 線像で両側肺野にび慢性の粒状影やスリガラス影などの間質性肺炎認め、ときに過膨張呈する白血球増多はないが、末梢血好酸球数は増加するCRP赤沈上昇、ときにIgM の上昇を認める。病原体検出法としては、抗原検出法として、直接蛍光抗体法酵素抗体法などでクラミジア抗原検出するほか、DNA 診断法(PCR, LCR)で特異遺伝子検出する分離一部施設では試みられる。また、血清中の抗C. trachomatis 抗体測定する方法もある。

C. pneumoniae 肺炎
胸部X 線陰影分布主として中下肺野に多く複数部位認めることもある。陰影性状は、軽症では間質陰影主体であるが、実質性陰影呈するものも多く特徴的な所見はない。CRP赤沈上昇多く認められるが、10,000/mm 3 以上の白血球増多は約半数留まる特異的診断としては、病原体検出咽頭ぬぐい液などから試みるが、分離困難なため、酵素抗体法(属特異抗原検出キット)、DNA 診断法(PCR)などが用いられる通常血清中の抗C. pneumoniae 抗体証明する抗体価測定法もっぱら利用されるMicroimmunofluorescenceMIF)法は標準とされるが、一般にELISA 法による特異抗体測定キット普及し利用されている。血清診断では原則としてペア血清での有意な抗体価上昇診断する
鑑別すべきものには、マイコプラズマウイルスリケッチア、他のクラミジア感染症などがあるが、これらと、あるいは一般細菌との混合感染もしばしば認められる臨床所見のみから鑑別することは困難である。

治療・予後
細胞壁合成阻害薬であるペニシリン系やセフェム系などのβ‐ ラクタム系ではクラミジア増殖阻害できず、臨床的に無効である。また、アミノ配糖体無効である。
新生児・乳児C. trachomatis 肺炎では、テトラサイクリン系が児の歯牙黄染や骨発育障害を来たす恐れがあるため投与しない。通常マクロライド系使用しエリスロマイシン点滴静注などを行う。母親対す治療も行うが、授乳の関係でマクロライド系が望ましい。
C. pneumoniae 肺炎成人での第一選択薬は、ミノサイクリンドキシサイクリンなどのテトラサイクリン系や、ニューマクロライド系のクラリスロマイシンアジスロマイシンなどであるが、ニューキノロン系も抗クラミジア効果優れたものがある。投与期間はクラミジア特殊な増殖様式から、10日から2週間長め投与が望ましい。軽症に対して通常内服抗菌薬で十分効果得られるが、中等度以上の肺炎入院が必要な場合ミノサイクリンなどの点滴静注を行う。予後通常良好であるが、高齢者基礎疾患有する患者では重症化することもある。
一般治療として、激しい咳には鎮咳剤投与する肺炎広範囲呼吸困難強く低酸素血 症があれば、酸素吸入行なうARDS器質化肺炎来たし場合は、有効な抗菌薬ステロイド併用考慮する家族身近な人の症状聞いて家族感染流行疑われ場合には、有症者検査、治療を行うことが望ましい。

感染症法における取り扱い2003年11月施行感染症法改正に伴い更新
クラミジア肺炎(オウム病を除く)は5類感染症定点把握疾患定められており、全国500カ所の基幹定点より毎週報告なされている。報告のための基準以下の通りとなっている。
診断した医師の判断により、症状所見から当該疾患疑われ、かつ、以下のいずれか方法によって病原体診断血清学診断なされたもの。
病原体検出
例、気道から病原体C. trachomatis またはC. pneumoniae )の検出など
病原体対す抗体検出
例、血清抗体有意な上昇など
病原体抗原検出
例、蛍光抗体法酵素抗体法など

なお、原因となる病原体名称について併せて報告すること


国立感染症研究所ウイルス第一部 岸本寿男)





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