ぶつかり男
(ぶつかりおじさん から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/09/27 08:45 UTC 版)
ぶつかり男(ぶつかりおとこ)とは、街中や駅構内ですれ違いざまにわざと体当たりをしたり、カバンをぶつける[1]・殴る蹴るなどの暴行を加えたりする男性のことである[2][3][4]。主に女性を標的とする事が多い。ぶつかりおじさん[5][6]、タックル男[2]、体当たり男[7]、当たり屋おじさん[4]などとも呼ばれる。
加害者が女性の場合はぶつかりおばさん[8][9]、体当たり女[10]、ぶつかり女[11]と呼ばれ、加害者が高齢者の場合はぶつかり老人と呼ばれる[12]。
2018年5月、新宿駅構内で女性ばかりを狙って次々に体当たりを行う男の動画がTwitterやYouTubeなどで拡散された(映像:女性に次々ぶつかる男性)。JR東日本は迷惑行為として注意喚起を行い、駅員や警備員、警察による警戒を強化している[5][13]。これをきっかけに同様の被害報告が相次いでおり[14][15]、例えば不審者や事件などの治安情報を共有するウェブサイト「ガッコム安全ナビ」において、2016年5月ごろから2025年7月までの間にぶつかり男と思われる事案が100件以上あったという[1]。
分析
動機
体当たりの動機としては、下記が指摘されている[5][7][16]。
類型
2018年5月に放送された『モーニングショー』での特集によると、ぶつかり男は主に以下の4つのパターンに分類されるという[14]。
- 追跡型 - 狙った相手を追跡してぶつかる
- 因縁型 - 振り返ると仁王立ちしている
- 我が道型 - 人の流れを無視する
- 攻撃型 - 足を突き出すなどする
法的責任
日本の刑法や各地の条例において、通行人等に対して故意に体当たりを行った場合、以下の犯罪に問われる可能性がある[18][19]。
- 暴行罪 - 体当たりという行為自体に対して。
- 傷害罪 - 相手を負傷させた場合。妊婦が被害に遭った場合には、胎児に対しても傷害罪は適用されうる[20]。
- 迷惑防止条例 - 痴漢目的の場合。
- 詐欺罪 - 貴重品[注 1]が破損したなどと装い、現金をだまし取った場合。
逮捕事例
- 2025年5月15日、西南学院大学の59歳の男性准教授が暴行罪で逮捕された[1][21]。男は4月にも同様の容疑で逮捕されており、これで3度目の逮捕だった。同年9月1日、福岡区検は「諸般の事情を総合的に考慮した」として男を不起訴とした[22]。
見解
- 心理学者の桐生正幸は、ぶつかり男の心理として「大きな理由の1つにミソジニー(女性蔑視)が関わっているのではないか」と考察している[1]。対策として、警察への届け出や、「ガッコム安全ナビ」などの不審者情報サイトの活用を推奨しており、「犯罪を未然に防ぐには、これを行えば何らかの罰があるということを広く知らしめることが大切。あおり運転がまさにその代表的な例といえるでしょう。罪が周知され、ぶつかり行為の情報が共有されていけば、加害者にプレッシャーをかけられる可能性があります」と述べている。
日本国外
同様の事例は日本国外でも発生している[23][24][25][26]。イギリスの英国放送協会(BBC)や香港のサウスチャイナ・モーニング・ポストによると、イギリスで30代の男性が複数人にぶつかって転倒させ、救護せずにそのまま逃走したとして逮捕された。また、韓国でも40代の男性が面識のない女性に故意にぶつかり、全治4週間の怪我を負わせる事件が発生している。
脚注
注釈
出典
- ^ a b c d “ホームや路上で女性にいきなり…「ぶつかり男」は罪に問えるのか?心理と対処法を専門家に聞く《5月には大学准教授が暴行容疑で逮捕》”. 東洋経済オンライン (2025年8月31日). 2025年9月10日閲覧。
- ^ a b 吉川ばんび (2018年12月21日). “女性ばかりを狙う「ぶつかりおじさん」は、ストレス社会が生んだモンスターか?”. 文春オンライン. 文藝春秋社. 2020年7月27日閲覧。
- ^ “タレントの加藤夏希も被害!女性にわざとぶつかり、改札も無視…「ぶつかり男」たちの「ヤバすぎる実態」”. 現代ビジネス. 講談社 (2023年12月30日). 2024年3月18日閲覧。
- ^ a b “被害女性たちが明かす「ぶつかりおじさん」の恐怖 その悪質な実態が伝わりにくい呼び方にも異論続々「シンプルに暴行犯」「通り魔暴行犯って呼び名でいい」”. マネーポストWEB (2025年8月23日). 2025年9月10日閲覧。
- ^ a b c 日野百草 (2021年10月25日). “帰ってきた「ぶつかりおじさん」やり返せない人が狙われる”. NEWSポストセブン. 小学館. 2021年10月25日閲覧。
- ^ “「相手が刃物を持っていたら死んでいた」 見知らぬ「おじさん」から膝蹴り、誰も助けてくれない雑踏の無関心”. 弁護士ドットコム (2024年3月6日). 2024年4月22日閲覧。
- ^ a b 吉川ばんび (2020年6月9日). “「女性に体当たりする暴走中年」増えた根本原因”. 東洋経済オンライン. 東洋経済新報. 2020年7月27日閲覧。
- ^ 大谷百合絵 (2025年8月30日). “街中に出没する「ぶつかりおじさん/おばさん」の動機は一体なに? 識者は「過剰な正義感を振りかざしている」と指摘”. AERA. 朝日新聞出版. 2025年9月9日閲覧。
- ^ 長田コウ (2025年7月9日). “品「ぶつかりおばさん」の執念がヤバい!体当たりを回避したら追いかけてきてリベンジされた女性”. キャリコネニュース. グローバルウェイ. 2025年9月9日閲覧。
- ^ イット! (2025年5月30日). “【実態】「ぶつかりおじさん」に「体当たり女」被害経験者は14%で地域別1位は東京都…専門家「報復は過剰防衛にも…駅員・警察に“防カメ映像確認”申し入れを」”. FNNプライムオンライン. フジテレビジョン. 2025年9月9日閲覧。
- ^ 長田コウ (2024年12月21日). “品川駅で「肩タックル」してきた“ぶつかりおじさん”を跳ね返す! 筋トレと農業で鍛えた女性の回想”. キャリコネニュース. グローバルウェイ. 2025年9月9日閲覧。
- ^ 長田コウ (2025年9月22日). “スーパーで女性を狙う「ぶつかり老人」の末路。思い切りカートをぶつけた相手はまさかの”. 日刊SPA!. 2025年9月24日閲覧。
- ^ Shino Tanaka (2018年5月31日). “女性を狙う『ぶつかり男』が新宿駅に出没。JR東日本が警戒「絶対にやめてほしい」”. HUFFPOST. BuzzFeed Japan. 2020年7月27日閲覧。
- ^ a b c “わざと女性に体当たり、「ぶつかり男」逮捕 新宿駅では現在も被害報告相次ぐ”. WEZZY (2019年9月27日). 2020年7月27日閲覧。
- ^ 武田砂鉄 (2021年9月16日). “小田急線刺傷事件、痴漢、セクハラ問題…なぜ「男だって大変」説が支持されるのか”. プレジデントウーマン. プレジデント社. 2021年10月25日閲覧。
- ^ “「私も被害に遭ったことある!」との声多数…「ぶつかり男」たちの言い訳と身勝手さ”. 現代ビジネス. 講談社 (2023年12月30日). 2024年3月18日閲覧。
- ^ 【独自】恐怖“ぶつかりおじさん”画像入手!「いつもぶつかりやがって」言いがかりつけ急に暴行…被害者は全治2週間のけが 殴られ鎖骨骨折の女性も JR田町駅前 FNNプライムオンライン
- ^ “「体当たり男」は犯罪! どのような刑罰に該当するのかを弁護士が解説”. ベリーベスト法律事務所 (2020年2月26日). 2020年7月27日閲覧。
- ^ “駅内で「ぶつかりおじさん」と衝突した結果、転倒し骨折しました。相手を捕まえられなかったのですが、治療費は自費になってしまうのでしょうか?”. ファイナンシャルフィールド (2020年3月21日). 2024年4月22日閲覧。
- ^ “キンタロー。も被害、“ぶつかり男”はどのような罪に問われるのか”. マイナビニュース (2020年2月19日). 2020年7月29日閲覧。
- ^ ““ぶつかりおじさん”福岡・名門大学准教授が3度目逮捕…類似の悪質行為は各地で発生 反撃は「正当防衛」になる?”. 弁護士JPニュース (2025年5月28日). 2025年9月10日閲覧。
- ^ “暴行容疑で3回逮捕された西南学院大准教授の男性を不起訴…福岡区検「諸般の事情を総合的に考慮した」”. 読売新聞オンライン (2025年9月9日). 2025年9月10日閲覧。
- ^ “「失敗した男の怒りの表出」日本で始まった“ぶつかり男”、全世界に拡大”. 中央日報 (2025年5月20日). 2025年5月21日閲覧。
- ^ “日本で社会問題化した「ぶつかり男」が世界に拡散”. 朝鮮日報 (2025年5月27日). 2025年9月10日閲覧。
- ^ “Japan ‘bumping gang’ deliberately collides with pedestrians, mostly women, to vent frustrations”. South China Morning Post (2025年5月17日). 2025年9月10日閲覧。
- ^ “Japan 'bumping gang' deliberately collides with pedestrians, mostly women, to vent frustrations”. South China Morning Post (2025年5月17日). 2025年9月10日閲覧。
関連項目
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