人事院 人事院の概要

人事院

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/04/02 09:11 UTC 版)

日本行政機関
人事院
じんじいん
National Personnel Authority
人事院が入居する中央合同庁舎第5号館別館
役職
総裁 川本裕子
人事官 古屋浩明
伊藤かつら
事務総長 柴崎澄哉
組織
上部組織 内閣[1]
下部組織 事務総局
国家公務員倫理審査会
概要
法人番号 2000012010002
所在地 100-8913
東京都千代田区霞が関1-2-3
定員 617人[2]
年間予算 86億8048万6千円[3](2023年度)
設置 1948年昭和23年)12月3日
前身 臨時人事委員会
ウェブサイト
人事院
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国家公務員法第2章に基づいて設置された「中央人事行政機関」であり、人事行政の公平性を保つため、人事院自体は内閣に属するものの、その権限は内閣から独立して行使することができる。

概説

人事院庁舎

人事院は国家公務員法(国公法)に定められた中央人事行政機関のひとつである。中央人事行政機関とは、国家公務員のうち一般職に属する職員の人事管理の基準を定めたり、各省庁の任命権者が行う人事管理を総合調整したりする機関であり、人事院の他には内閣総理大臣がある。人事院と内閣総理大臣の所管事項はそれぞれ異なり、人事院は国家公務員法運用の中軸機関としての地位を占める。

給与その他の勤務条件の改善及び人事行政の改善に関する勧告(人事院勧告)、採用試験、任用、分限、研修、給与、懲戒、苦情の処理、職務に係る倫理の保持その他職員に関する人事行政の公正の確保及び職員の利益の保護等に関する事務をつかさどる(国公法第3条第2項)。この中には、人事院規則の制定権などの準立法的権限、行政措置要求や不利益処分審査請求の判定権などの準司法的権限[注 1]、給与の勧告権、人事行政の調査権など重要な権限が含まれる。かつては職階制に関する事務もつかさどるとされていたが、第166回国会(2007年)の国公法改正により職階制そのものが廃止されたため、職階制に関する事務も廃止された。

近代的公務員制度における人事管理は、行政の継続性と専門性を確保するため、政党その他による一切の情実を排除し、能力主義、実績主義(資格任用制)を徹底しなければならない。また、現代の行政は著しく複雑膨大化、専門化しているので、人事行政には科学的調査研究を基礎とする人事管理技術を通して、専門性と統一性を確保する必要がある。さらに公務員は労働基本権が制限されているため、その代償措置として、使用者である政府から独立した第三者機関が職員の利益を保護する必要がある。

これらの要請に応えるため、人事院はいわゆる行政委員会の一種として強い権限と独立性を与えられている[5]。さらに、公正取引委員会中央労働委員会など他の行政委員会が、内閣府や省に「外局」(国家行政組織法第3条第3項)として所属しているのに対し、人事院は直接「内閣の所轄の下」(国公法第3条第1項)にある。すなわち、人事院の所管する国家公務員法が人事院の設置法となっており、国家行政組織法は適用されないこととなっている(国公法第4条第4項)。その独立性や権限は憲法典に根拠を持つ機関である裁判所会計検査院には及ばないものの(これらの廃止や憲法によって直接与えられた権限の縮小・他の機関への委譲などは憲法典自体の改正が不可欠であるが、人事院は法律により創設された機関であるがゆえに、そのような問題は生じない)、内閣の下にある行政機関の中では極めて強固なものである。

人事院は3人の人事官をもって組織される合議制の執行機関である。人事官は、両議院の同意を経て内閣によって任命され、うち1人は人事院を代表する人事院総裁として命ぜられる。人事院の意思決定は少なくとも1週間に1回行われる人事院会議による。人事院の下には、事務部門である事務総局が置かれ、人事院が予算の範囲内において事務総長以下の職員が任命する。また、国公法及び国家公務員倫理法に基づき、国家公務員倫理審査会が設置されている。

人事院はその内部機構をみずから管理するものとし、国家行政組織法及び行政機関の職員の定員に関する法律(総定員法)は適用されない(国公法第4条第4項、総定員法第1条)。したがって、人事院は事務総局の組織、定員に関し内閣人事局の規制を受けずに人事院規則によって独自に定めることができる(第13条第2項)。

人事院が編集する白書には「公務員白書」がある。これは、国家公務員法第24条の規定により、毎年、人事院が内閣と国会に対して業務の状況を報告するために提出する「年次報告書」を収録した政府刊行物である。また、定期刊行の広報誌として、「人事院月報」を月刊で発行している。ウェブサイトURLドメイン名は「www.jinji.go.jp」。

設立の経緯

国家公務員法の一次改正によって、1948年12月に臨時人事委員会の組織・権限を強化する形で発足した。GHQ民政局公務員課長のブレーン・フーバーの絶大な支援の下に、人事行政の一元化を目指して設置された。設立当初の人事院はGHQの後ろ盾もあり、強い権勢を誇っていた。例として旧内務省が入居していた内務省ビルは、人事院が奪い取るかたちで「人事院ビル」と改称している。ほか、各省庁の反発を押し切って○×式試験を強行したこともあった[6]

廊下にまではみ出して執務をしていた各省とは違い、人事院は僅かな人員で広いオフィスを独占し、調度はすべてアメリカンスタイルの新品であった。フーバーは「悪名高き内務官僚を入れてはならない」と厳命しており、人事官をはじめとする重要ポストから旧内務官僚は排除されていたが、フーバーの帰国によってこの鉄則は崩れ、以後、多数の旧内務官僚が要職に就いた[6]

人事院は経済安定本部と並び、GHQのお声がかりで設立された役所であるため、日本の主権回復後にGHQという後ろ盾を失った二つの役所は一転して窮地に陥り、経済安定本部は廃止され、人事院も行政機構改革や行政整理のたびに廃止論が出ていた[6]


注釈

  1. ^ 1982年に財政難、2011年東日本大震災で行政措置要求の実施が見送られた[4]
  2. ^ 衆議院議長参議院議長最高裁判所長官、会計検査院長は、各省各庁の長である。

出典

  1. ^ 我が国の統治機構 内閣官房 2022年3月22日閲覧。
  2. ^ a b 人事院規則二 ― 一四(人事院の職員の定員)(最終改正:令和4年3月31日人事院規則二 ― 一四 ― 一六) - e-Gov法令検索
  3. ^ a b c 令和5年度一般会計予算 (PDF) 財務省
  4. ^ 藤井(2017),p.110
  5. ^ 佐藤達夫「国家公務員法-第8次改訂版」学陽書房、2009年6月。
  6. ^ a b c 内政問題研究会 編 『官僚の系譜 権力の座に居る人たち』 厚文社 p.124–125
  7. ^ a b 川村裕三『ものがたり公務員法-あらためて公務の原点を考える』日本評論社、1997年9月。
  8. ^ “人事院首脳ポストは 「マスコミOB指定席」だった”. J-CASTニュース. (2009年2月4日). http://www.j-cast.com/2009/02/04035401.html 2010年1月10日閲覧。 
  9. ^ 第171回国会 衆議院 予算委員会 第21号 平成21年2月26日
  10. ^ 中野雅至『天下りの研究-その実態とメカニズムの解明』明石書店、2009年9月。
  11. ^ 独立行政法人一覧(令和4年4月1日現在)” (PDF). 総務省. 2022年12月14日閲覧。
  12. ^ 所管府省別特殊法人一覧(令和4年4月1日現在)” (PDF). 総務省. 2022年12月14日閲覧。
  13. ^ 特別の法律により設立される民間法人一覧(令和4年4月1日現在:34法人)” (PDF). 総務省. 2022年12月14日閲覧。
  14. ^ 一般職国家公務員在職状況統計表 (PDF) (令和4年7月1日現在)
  15. ^ 令和3年度 年次報告書(公務員白書) 「第1編第3部第6章:職員団体 - 資料6-2;職員団体の登録状況。2022年3月31日現在。 (PDF)
  16. ^ 人事院幹部職員名簿(令和4年8月22日現在)”. 人事院. 2022年9月15日閲覧。


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