造林とは? わかりやすく解説

ぞう‐りん〔ザウ‐〕【造林】

読み方:ぞうりん

[名](スル)木を植え育てて森林をつくること。計画的に木を植え人工造林法と、既成森林手入れをする天然造林法とがある。「土砂崩れを防ぐため—する」

「造林」に似た言葉

植林活動

(造林 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/11/07 13:21 UTC 版)

Tree Planting

植林活動(しょくりんかつどう、: Afforestation)は、木材生産や森林保全を目的として、を植えることである。造林とほぼ同義とされることもある[1]が、造林の一部、すなわち人為的植樹英語版による人工造林のみを植林とすることもある[2][1]林学上、afforestation(狭義の植林、造林)とreforestation(森林再生)を総て広義の植林あるいは造林を定義し得る[3]

概要

ヒノキが整然と植林された里山
四季を通して薄暗いスギ・ヒノキの人工林

人工的に樹木を育成する植林には、森林保全の中には、地盤の安定化、水資源の確保、生態系の保全、防、防といったさまざまな目的が含まれる。

植林によって生まれた森林は、人工林と呼ばれる。日本においては、全森林面積の4割が植林によって生まれた人工林である。ただし、それらの地は以前は自然林が成立していた場である。横内浄水場水源地など環境保護の名目で自然林を伐採してから「植林活動」を行ったため社会問題となった例もある。

自然林と、木材生産などの林業ために植林が行われた人工林には、樹種や手入れの有無などに大きな違いがあるため、専門家の間では区別されているが、一般的には混同されることが多い。

植林の方法

人工造林

林地に直接種を蒔く直播き造林と、苗木を植え付ける植樹造林、挿し木として植える挿し木造林がある。その方法は樹種ごとの特性や環境中の雑草木に合わせて選ばれる[4]

天然下種更新

造林地やその近くにある母樹から生まれる種子に頼って樹木を増やすもの。環境に適した森林を作ることができるが、木材など経済的価値での評価は劣る場合がある[4]

萌芽更新

伐採を終えた林に有用な樹種の切り株を残し、そこから生えてきた新しい芽によって林を作るもの。主に薪炭林で行われる[4]

歴史

日本における植林

古来から森林の生育に適した日本では、身の回りの道具や土木、建築用材料、造船、燃料など幅広い分野で木材が使われてきた。植林の前段階として森林保全が行われたが、記録に残る中では676年天武5年)に「畿内山野伐木禁止」の布告が行われている[5]。産業的な植林は豊臣秀吉が天下統一を果たし戦国時代が終わった頃から始まった。秀吉は大々的な土木、建築事業を行い、土佐国日向国屋久島あたりからも材木を集め、地方の大名もこれに倣ったため、木材消費が急増する。こうして16世紀頃から静岡の天竜や和歌山の吉野、京都の北山などの林業地でスギヒノキの植林が行われはじめた[6]

環境保護活動としての植林

植林活動
植えられた苗木

近年まではその大部分が木材生産を目的としたものであり、植林活動や人工林という言葉も環境保護の意味合いは含まれていなかったが、環境保護運動の拡大につれて森林保全、緑の拡大のために木を植えるという意味合いが含まれるようになっている。これら社会運動としての植林を「植林活動」と呼ぶことがある[7]

森林光合成により地球温暖化の原因とされる二酸化炭素(CO2)を吸収することから、温暖化対策の手段として、排出権取引においても、新しく植林した森林をCDM植林の対象とし、CO2削減とみなし、京都議定書における京都メカニズムにより、排出権を創出することがルール上は可能となっている。

木材燃料とするためではなく森林面積を増やすための植林は森林破壊を補い、地球温暖化への対策として有効であるとされる。そのため環境保護活動の題材としてメジャーであり、市民活動から政府、企業によるものまで広く行われているが、追跡調査などの結果からはその実効性に対しグリーンウォッシングではないかという疑問が呈されている。

植林支援活動

植林活動を支援するための募金の代表的なものとして、緑の募金があるほか、ウェブサイト上でもクリック募金として行われている。ウェブ上の他の植林支援活動として、検索をした回数で植林が行われるサーチエンジンEcosia」が存在する。また、植林活動への貢献に対する賞として明日への環境賞などがある。多数の大企業CSRとして、従業員などのボランティアによる植林活動を行っている。

植林の失敗

植林はイメージの良い行為であるため、対外的なイメージ戦略として植林が行われることがある。植林に関するリサーチによると、植林はしばしば政府企業によるグリーンウォッシングとして行われ、植え付け後の管理が行われず放置される例が多い。

生存率の軽視

「植林活動」の成果として「植え付け本数」や「植え付け面積」だけが強調され、「植林の生存率 (成功率) 」が無視されているという。植林のその後を調査した研究によると、世界で実際に行われた植林のうち大半が枯死しているといた。2012年にフィリピンでは、マングローブ地帯に対し1時間に100万本という植林が行われギネス記録にまで認定されたが、2020年時点で98%が枯死している。これは植林活動のインパクトを優先し、植え付け場所の調査やその後の管理を怠った結果であり、またこの結果は予想可能であったにもかかわらず強行された。その他にもトルコインドで同様の大規模植林が行われたが、失敗に終わっている[8]

現地の環境や価値観の軽視

1990年代から2000年代にかけて、日本の環境保護団体が砂漠化防止を謳って内モンゴルで盛んに植林ツアーを行った。ところが乾燥した草原地帯で植林を行うと土壌中の水を消費し、さらに灌漑によって貴重な水資源を浪費することになった。これらの活動によって地下水位が低下し、植えた木どころか周辺の草原まで枯死させ砂漠化を進めかねないと指摘されている[9]。現地の牧畜民は砂丘の有無、地下水位、植生や乾燥度合いなどによる違いのある豊かな土地と認識していても、日本人には「砂漠は貧しく、緑化すべき」という緑化思想があり、活動を相対的に評価する方法が課題となっている[10]

脚注

注釈

  1. ^ a b 世界大百科事典 第2版『植林』 - コトバンク
  2. ^ 日本大百科全書(ニッポニカ)、百科事典マイペディア、世界大百科事典 第2版『造林』 - コトバンク
  3. ^ 英語版では"forestation"(フォレテーション)を、林学の教科書、Nyland, R.D. Silviculture: Concepts and Applications. 3rd ed. 2016. p. 67. linkを引いてこの立場から定義される概念としている。「forestationの意味 - goo辞書 英和和英(小学館ランダムハウス英和大辞典)」も参照。また、「リーダーズ英和辞典(第2版、1999年、ISBN 978-4-7674-1413-3)」によると造林、植林以外に「営林」「森づくり」「森林形成」の訳語も挙がっている。
  4. ^ a b c 佐藤 1966.
  5. ^ 林野庁 1952, p. 26-28.
  6. ^ 林野庁 1952, p. 30-33.
  7. ^ JIFPRO 2024.
  8. ^ Phantom Forests: Why Ambitious Tree Planting Projects Are Failing - Yale E360
  9. ^ 児玉,小長谷 1966, p. 5-8.
  10. ^ 児玉,小長谷 1966, p. 11-15.

出典

  • 佐藤大七郎「造林」『世界大百科事典』平凡社、1966年、742-743頁。 
  • 林野庁『治山治水読本 : みどりの日本に』日本週報社〈週報双書〉、1952年。NDLJP:2477796 
  • 児玉香菜子,小長谷有紀「植林ボランティアにおける「緑化思想」の解体」『ボランティア学研究』第8巻、国際ボランティア学会、2008年。 
  • 海外植林活動”. 公益財団法人 国際緑化推進センター. 2025年10月29日閲覧。

関連項目

植林活動を行った人物

植林活動を扱った作品

用語


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