第24問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/30 16:25 UTC 版)
「ヒルベルトの23の問題」の記事における「第24問題」の解説
詳細は「ヒルベルトの第24問題(英語版)」を参照 彼は元々24題の問題を用意していたが、その内の1題は割愛された。この24番目の問題(簡潔性と総合的な方法の評価基準に関する証明論)は2000年にドイツの歴史学者リュディガー・ティーレ(ドイツ語版)によって発見されたヒルベルトの手記中に、その存在が初めて確認された。 問題問題問題(原文)概要状況解決年第1 連続体の基数に関するカントールの問題 Cantor's problem of the cardinal number of the continuum 連続体仮説のこと 部分的解決 ゲーデル(1940)とコーエン(1963)により連続体仮説とZFCとの独立性が示されたが、これにより問題が解決されたとするかに関するコンセンサスはない。 1940, 1963 第2(英語版) 算術の公理間の整合性 The compatibility of the arithmetical axioms 算術の公理系の各公理の独立性、および公理系の無矛盾性を示すことができるか 部分的解決 無矛盾性に関してゲーデル(1931)の第二不完全性定理とゲンツェン(1936)によるε0の整列可能性を仮定した算術の無矛盾性証明があるが、これらにより問題が解決されたとするかに関するコンセンサスがない 1931, 1936 第3 等底・等高な2つの四面体の等積性 The equality of the volumes of two tetrahedra of equal bases and equal altitudes 同じ底面積・同じ高さを持つ2つの四面体の体積が等しいことを積分を使わずに、これらの四面体を切断することで合同な多面体の組ができるか否かのみで決定することが決定できるか。 否定的解決 デーンがデーン不変量(英語版)を定義して解決。 1900 第4(英語版) 2点間の最小距離としての直線に関する問題 Problem of the straight line as the shortest distance between two points 解決か否かを決めるには 問題が曖昧 ヒルベルトは問題発表時、自身の研究により既に問題にあるような幾何学を得ており、その上での問題発表となった。この問題は1901年にゲオルク・ハメル(英語版)によって解かれたが多くの制約を余儀なくされた証明法だったので、1929年にヒルベルトの弟子パウル・フンク(英語版)がこれを改善したものを発表した。また1943年にはハーバート・ビュースマン(英語版)も改善に成功し、問題を測地線の幾何学に一般化した。しかしRowe & Grayはこの第4問題が解決されたかどうかはとても曖昧であると記している。 — 第5(英語版) 群演算に可微分性を仮定しない連続な変換群に関するリーの概念 Lie's concept of a continuous group of transformations without the assumption of the differentiability of the functions defining the group 位相群がリー群となるための条件 部分的解決 問題の意味の解釈によってはAndrew M. Gleasonにより解決。問題がヒルベルト=スミス予想(英語版)の事だとすると未解決である。 1953? 第6(英語版) 物理学の諸公理の数学的扱い Mathematical treatment of the axioms of physics 部分的解決 1933–2002? 第7(英語版) 種々の数の無理性と超越性 Irrationality and transcendence of certain numbers 以下の2つの同値な問題を問うたもの:二等辺三角形において、底辺の両端の2つの同じ大きさの角と、それ以外の1つの角との比が有理数でないとき、底辺と斜辺の長さの比は超越数か? a ∉ { 0 , 1 } {\displaystyle a\not \in \{0,1\}} と無理数 b {\displaystyle b} に対し a b {\displaystyle a^{b}} は常に超越数か? 解決 ゲルフォント=シュナイダーの定理により解決。この定理はアレクサンダー・ゲルフォント (en)(1934年) とテオドール・シュナイダー (en)(1935年) によって、それぞれ独立に証明された。 1934 第8(英語版) 素数に関する問題 Problems of prime numbers リーマン予想 未解決 — 第9(英語版) 任意の数体における最も一般的な相互法則の証明 Proof of the most general law of reciprocity in any number field 一般相互法則 解決 エミール・アルティンが代数体のアーベル拡大に対してアルティン相互法則を証明したことにより解かれた(1927年) 。関数体に対してはShafarevichが同様の成果を示している。 1927 第10(英語版) ディオファントス方程式の可解性の決定問題 Determination of the solvability of a diophantine equation 否定的解決 ユーリ・マチャセビッチが否定的に解決した。ディオファントス方程式に解があるか否かを有限時間で決定可能なアルゴリズムは存在しない。マチャセビッチの定理を説明するため、以下のように定義する:整数の組の集合 M {\displaystyle {\mathfrak {M}}} がディオファントスであるとは、ある整数係数多項式 P ( a , x 1 , … , x n ) {\displaystyle P(a,x_{1},\ldots ,x_{n})} が存在し、 M = { a ∈ Z ∣ ∃ ( x 1 , … , x n ) ∈ Z n : P ( a , x 1 , … , x n ) = 0 } {\displaystyle {\mathfrak {M}}=\{a\in \mathbb {Z} \mid \exists (x_{1},\ldots ,x_{n})\in \mathbb {Z} ^{n}~:~P(a,x_{1},\ldots ,x_{n})=0\}} となることを指す。マチャセビッチの定理は整数の組の集合 M {\displaystyle {\mathfrak {M}}} がディオファントスである必要十分条件は M {\displaystyle {\mathfrak {M}}} が帰納に列挙可能な整数の組の集合である、というものである。これはすなわち、与えられたPに対し、 P ( a , x 1 , … , x n ) = 0 {\displaystyle P(a,x_{1},\ldots ,x_{n})=0} が解を持つa(そのようなaは無限個あるかもしれない)を順に出力するアルゴリズムが必ず存在することを意味するので、解を持つaに対しては解を持つことを有限時間で決定可能であるが、逆に解を持たないaに対しては解がないことを有限時間では決定できない場合もあることを意味する。よってディオファントス方程式に解があるか否かを有限時間で決定可能なアルゴリズムは存在しない。 1970 第11(英語版) 任意の代数的数を係数とする二次形式 Quadratic forms with any algebraic numerical coefficients 代数体上の二次形式の分類 部分的解決 — 第12 アーベル体に対するクロネッカーの定理の代数的な有理数への拡張 Extension of Kronecker's theorem on abelian fields to any algebraic realm of rationality 類体の構成問題 未解決 — 第13(英語版) 任意の7次方程式を2変数の関数だけで解くことの不可能性 Impossibility of the solution of the general equation of the 7th degree by means of functions of only two arguments 部分的解決 — 第14(英語版) 不変式系の有限性の証明 Proof of the finiteness of certain complete systems of functions 否定的解決 1958年、永田雅宜が反例を作り、否定的に解決した。 1959 第15(英語版) シューベルトの数え上げ計算の厳密な基礎づけ Rigorous foundation of Schubert's enumerative calculus 部分的解決 — 第16(英語版) 代数曲線および曲面の位相の問題 Problem of the topology of algebraic curves and surfaces 未解決 — 第17(英語版) 定符号の式を完全平方式を使った分数式で表現すること Expression of definite forms by squares 解決 1927 第18(英語版) 合同な多面体による空間の構築 Building up of space from congruent polyhedra 結晶群・敷きつめ・最密充填(球充填)・接吻数問題 解決 1928 (a) 1928(b) 1998 第19(英語版) 正則な変分問題の解は常に解析的か Are the solutions of regular problems in the calculus of variations always necessarily analytic? 解決 1904年にセルゲイ・ベルンシュテインが解決した。 1957 第20(英語版) 一般境界値問題 The general problem of boundary values 解決 ? 第21(英語版) 与えられたモノドロミー群をもつ線型微分方程式の存在証明 Proof of the existence of linear differential equations having a prescribed monodromic group 否定的解決 リーマン・ヒルベルト問題とも呼ばれる。フレドホルム積分方程式に関するヒルベルトの研究を応用して、1908年にヨシップ・プレメルヒ(英語版)が積分方程式の問題に再定式化して、肯定的に解決した。1913年にジョージ・デビット・バーコフがリーマン・ヒルベルト問題とは気づかずに別証明を与えた。だが、1989年にドミトリー・アノゾフ(英語版)とアンドレイ・ボリブルヒ(英語版)が正則であるがフックス型でない微分方程式系があることを示して、プレメルヒとバーコフの証明の誤りを明らかにし、リーマン・ヒルベルト問題が否定的に解決されることを証明した。モノドロミー表現が既約である場合にだけ、リーマン・ヒルベルト問題は肯定的に解決される。 ? 第22(英語版) 保型関数による解析関数の一意化 Uniformization of analytic relations by means of automorphic functions 部分的解決 パウル・ケーベとアンリ・ポアンカレがそれぞれ独立に肯定的に解決した。一意化定理は1880年代からポアンカレが研究し、その一部を証明していたが、ヒルベルトは23の問題の一つとして取り上げて、その厳密な証明を求めた。 ? 第23(英語版) 変分法の研究の展開 Further development of the methods of the calculus of variations 未解決 この分野でのカール・ワイエルシュトラス、クネーザー、アンリ・ポアンカレの貢献を評価して、変分法の重要性と研究課題を指摘することで、ヒルベルトはその後の関数解析や偏微分方程式論の発展を促した。変分法は数学と物理学が深く関連した研究分野である。ヒルベルトもクーラントとの共著『数理物理学の方法』で変分法を広範に論じた。 — (第24(英語版)) 簡潔性と総合的な方法の評価基準に関する証明論 解決か否かを決めるには 問題が曖昧
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