柱神とその縁者
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/26 10:07 UTC 版)
アマンシール フルネームはガジェストリオ・アマンシール・アルス・ファラスース。ディエーン王国当代柱神。黄属の神宝「貴人の午睡」の半身。 現王家・ファラスースの初代国王の弟で、黒髪に灰色の瞳を持つ。30代前半の容姿だが、すでに100年以上は生きている。柱神として覚醒すると同時に元々持っていた権力等を放棄することが多い柱神の中で、数少ない「王家の一員」としての権力を保持したままの柱神である。柱神が選ばれるごとに王朝交代劇が起こるディエーンにおいて、それを阻止しようと候補者達を王家の養子とする作戦に出た。これは本来、彼が柱神候補と判明する前に、柱神の代替わりによる王朝交代劇の流血沙汰をなくそうと、家族やエルスース王家の協力を得て画策していたもの。なお、彼が柱神となった時の選定者は何者かに暗殺され、第2候補だったマルシアス侯爵家の次男も暗殺と思われる不審死を遂げた。 当主である父・リュシアンドは国王の又従兄弟にあたるという家系の、経済や外交を得意とするファラスース侯爵家の三男に生まれるも、政治や経済より自然科学に興味を持ち、それらを学ぶべく大貴族の息子でありながら王立学院への入学を希望し続けた変り種。何とか入試を乗り切ったため、国王の興味を引いたらしく、11歳の時父親に連れられて王宮へやってきた時に、庭の散策をしていて迷子になり、クランクレイアと出逢った。以来、話し相手として度々王宮に通うも、恋愛感情に疎く、結果的にクランクレイアとの間をよくフィオーンに取り持ってもらっていた。 ガスカールの育ての親で、ガスカールにとって頭が上がらない人物の1人。 ギスカリール フィレアのダカール家の裏山に無断で隠居している老人。アマンシールが神籍に入る前からの悪友で、柱神の縁者であるらしい。もともとはアマンシールの王立学院での友人・ハーリクの父親の知人。ナルレイシアを「リル・ナーシャ」の愛称で呼ぶ。また、ナルレイシアからは「お師匠」と呼ばれている。暗黒期以前に書かれ、現在は禁書とされる本をいくつか所蔵している。 ナルレイシアの父が幼い頃から現在と同じ老人の姿であり、度々からかわれたため、老人を大切にする風潮があるフィレアにいながらも、彼からは「妖怪爺ぃ」と呼ばれ、嫌われている。 本人曰く「生まれたときから成長が遅かった」らしく、『古戀唄』の時点では外見が二十歳前後なのにも関わらず、クランクレイアの実父であるクアン・クランドの幼い頃からの友人であり、20年以上外見が変化していないという。クランクレイアの実父から彼女の母を見守るよう頼まれていたこともあり、彼女を大切に思っていて、彼女に近づくことを許されているアマンシールを度々試していたが、彼が柱神候補となったことで相談役の1人となった。コーランジュとも顔見知りの間柄。 ネイスリーズ ガライラ大公国の柱神。スカルトードの大伯父に当たり、外見は双子のようにそっくり。紫属の神宝の半身。 現在、最強といわれる紫属の柱神が極端に少なく、「精霊の声を聞いた」と言っては行方をくらますため、周辺の人物を翻弄する。また、「身内の敵はわたしの敵、女性の敵もわたしの敵」を信条のひとつとして掲げている、やや迷惑な人ではあるがその力は本物。 プライドの高い幻獣・雷馬の「閃公」を友人とし、頼み込んで函型の車を牽かせたことがある。 出会った当初の事件以来、ナルレイシアを「黄金の小鳥姫(あるいは「小鳥姫」)」と呼び、ランディータを「琥珀の女神(あるいは「女神」)」と呼ぶ。 ユーカリィヤ・アライア・アルス・オースリン ディエーンの斎王院で生活している次代柱神候補の1人で、侯爵令嬢。病がちな体質の少女で、13歳だが、痩せており年齢より幼く見える。家族や親類に「病弱」を連呼され続けて育ったためか、やや遠慮がちな性格だが、貴族の令嬢としての態度はしっかりしている。ごく親しい人には「ユーリ」の愛称で呼ばれる。 柱神としての潜在的な素質は、5人いる斎王のうちで最も高いとされる。生き別れた双子の妹と度々夢の中で交感していたが、ある日彼女の危機を知り、ナルレイシアらに救援を求めた。また、実家にいた頃、次期王太子と見なされる王子ウォルカードと出会い、王や両親の許可を得て文通していた。 リオライーシャ 黄属の神宝「黄昏の黄金」に選ばれた次代柱神の少女。13歳。生まれてすぐに里子に出され、その存在が伏せられていた、ユーカリィヤの双子の妹。3歳で大きな病を患って以来病弱な姉とは違い、健康優良児である。親しい人には「リーシャ」、養父母には「リオ」の愛称で呼ばれる。男の子のような服装と肩にかかる程度に揃えた金褐色の髪と青い瞳が特徴。 姉妹の交感は毎夜あるわけではないものの、その日あったことを追体験するように行われ、食べ物の味や体調なども感じ取れる。また、選定者であるナルレイシアは、黄神神殿で説明を受けていたときに「助けて」と呼びかける彼女の幻影を見ている。 実の両親が事故で亡くなった後、ナサリエル公爵家に誘拐され幽閉されていたが、運良く脱出に成功し、姉とは知らないままユーカリィヤに会うためロスタロイドまでやってきた際に、ユーカリィヤの話を受けて動いていたナルレイシアと偶然出会うも、公爵家に連れ戻されてしまう。しかし、一緒に連れてこられたナルレイシアが仮死状態に陥ったのがきっかけで力が暴走、公爵家の上空に金色の竜の幻影を生み出したことで、神宝の半身であることが判明。ガスカールらによってナルレイシアと共に無事助け出された。 その後、次代候補の1人として斎王院に入っていた姉と入れ替わった。柱神となるのは成人の儀式を終えてからとのこと。 ウォルセン・ディーシア・オルス・マルシアス 緑属の神宝「翠唱子」に選ばれた次代柱神の青年。ナルレイシアと同年代。緑がかった栗色の髪と、緑寄りの榛色の瞳を持つ。線が細く色白なため、鬘と女装で性別をごまかせてしまうのが悩みの種。精霊に愛されており、その姿を見て会話することが出来る異能を持つ。「マーシャスの女神」と呼ばれた先祖の女性・ファタランテの額にあったという緋色の痣が左腕にある。特技は胡琴と歌で、妙歌星と呼ばれた彼女と同じ。 そのため、一族としては名ばかりの貧乏貴族という分家のひとつに生まれた彼は、両親と引き離されないよう他人には痣と異能を隠してきたが、7歳の頃、偶然やってきた本家に近い血を引く分家の少年に見つかってしまったのがきっかけで両親と引き離されて本家の養子となり、彼女が定めたという「約束の地」の場所を教えろと、度々迫られるようになった。 脅すように迫ってくる親類にうんざりして死を選びかけた彼を救った、義兄に当たる少年・アシュアイードと絆を結んでいるが、精霊との交流すら封じられた長い幽閉生活に耐えかねていたところ、リオライーシャが力を暴走させた際に彼を閉じ込めていた結界が壊れたため、何度目かの家出を決行。義父である侯爵は「自分の息子以外を後継者にするつもりはない」とかつて彼に明言していたが、聖印をもつ自分を当主の座に据えようとする一派や排除しようとする一派といった複数の追っ手から1年もの間逃げ回っていた。この間、幼い頃にアシュアイードの母から教わって腕を磨いた裁縫と編み物の腕を利用して生計を立てているが、外出時、男装ではすぐにバレてしまうので、コンプレックスを逆手に取るように女装し、ミドルネームの「ディーシア」と名乗っていた。アシュアイードのみ彼を「ディー」と呼ぶ。 当初から彼を見極めたナルレイシアが付きまとったため彼女の悪運に振り回され、さらにアシュアイードとの絆を守るため神宝を拒んでいた。しかし最後は神宝を受け入れ、ファティ・リンシャの知人である柱神たちを巻き込んだ大芝居を打ち、一族のしがらみから抜け出す。 アシュアイード・ヴィーオラ・オルス・マルシアス ディエーン南部の都市・アシャスを治めるマルシアス侯爵家の次期当主。褐色の髪と翡翠色の瞳を持つ美青年で、ずば抜けた頭脳と采配力を持つが、体が弱く寝込みやすいのが玉に瑕。ウォルセンからは「アッシュ」と呼ばれる。 1つ年下の義弟・ウォルセンを偏愛しているが、そのウォルセンを、当人に知らせず囮として使うなど、性格は結構黒い。父である侯爵が不審死を遂げて以降、ごく一部の親族にのみ事実を告げ、自身は影武者を立てて寝込んでいるように見せかけ、当主代行として一族の粛清を実行。その後、正式に侯爵家当主となり、400年ぶりに王家に伺候した。 クランクレイア 『古戀唄』に登場。王家エルスースの末の王女。愛称は「クラン」。紫の瞳と紫がかった黒髪をもつ。精霊に愛されており、その助力を得て空を飛ぶこともやってのけるお転婆で、王女らしからぬ口調で話す。「王と夢で逢瀬を重ねた女神が連れてきた娘」という話だが、実は隣国・ルーシアルの柱神と病弱な王妹の間に生まれた娘で、体の弱かった実母が病に倒れたため、その兄である王に引き取られたというのが真相。 7歳の頃、当時侯爵家だったファラスースの三男(アマンシール)と偶然出会い、「女神の娘」と噂される自分に対して、王女と臣下としての対応をしたアマンシールに興味を覚えたことで、話し相手とすることを父に頼み込んだ。王と王太子であるフィオーンには可愛がられているが、その弟であるケルティス王子と王妃には疎まれており、幼いながらも立場を思うがゆえに、フィオーンに全力で甘えることを自ら禁じていることもあって、植物採集という趣味が共通するアマンシールを「ジェス」と慕い、甘えてきた。 そうして交流するうちに恋に落ちるも、彼が柱神候補となったために、兄とも慕う王太子フィオーンに命を狙われたところをアマンシールの元に飛び込んできた神宝によって救われた。その後、アマンシールとともに20年眠り続け、目覚めてから5年後に、兄の代わりに王位を継いだケルティスの側室の1人が産んだ、自分と同じ特徴を持つ娘・アランヴィータを妹分として預かった。アランヴィータがエルスカーネ侯爵家の嫡男・アスクライムと結ばれた後、自身はアマンシールとの間に子供を身ごもり、無事に出産するが、衰弱が激しく、回復することなく亡くなる。生まれた子供はアランヴィータが引き取り、養子として育てた。 コーランジュ 『古戀唄』に登場。「貴人の午睡」の半身(アマンシールの先代)。エルスース王家初代国王の母親にあたり、柱神となった時はすでに50歳を越えていた婦人。200年は生きていたが、老いの兆しを感じ始め…。 王宮の庭の一角に精霊たちに結界を張ってもらい、屋敷を構えていた(その後、次の柱神となったアマンシールがクランクレイアとともに住む)。 アマンシールの頼みを受けて、次代柱神の候補者を王家の養子とする作戦に協力するが、筆頭候補がアマンシール自身であることや、第2候補がマルシアス家次男だったことを受けて頓挫。アマンシールが拒み続ければ命に関わることや、それでもクランクレイアとの生活を望んでいることを知っていて、「神殿(選定者)に預けた神宝を奪って、駆け落ちする」という作戦を提案した張本人。 クアン・クランド 『古戀唄』に登場。クランクレイアの実父にして、ディエーンの隣国・ルーシアルの当代柱神。 もともとはルーシアルの第二王子で、ディエーン留学中に王宮の庭で迷ったところ、王妹・オルレイジア姫と出会い、恋に落ちた。 女性関係が派手だったらしいが、ルーシアル王家に呼び戻された際、いずれ正式にオルレイジアを迎えるため父に話を通す前に、次代柱神であることが判明。神宝に触れた途端に昏睡状態に陥った。その後10年以上仮死状態になったため、王家が死亡を発表したというやや可哀想な境遇の柱神である。 昏睡した時点でオルレイジアは身ごもっていたが、父親の名は信頼の置けるごく少数にしか明かさなかったらしい。しかし、クランが10歳になる年の豊穣祭の日にディエーンを訪れ、彼女の後見に立つことを公に表明した。
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