ウルトラマンのデザイン・造形
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/19 04:02 UTC 版)
「ウルトラマン」の記事における「ウルトラマンのデザイン・造形」の解説
ウルトラマンのデザインは、『ウルトラQ』でも怪獣や宇宙人のデザイン、セットの美術デザインを手がけた彫刻家の成田亨が担当。仕上げの最終段階で平面上の作業に見切りをつけたため、デザイン画の決定稿は存在しない。成田の指示のもと、美術スタッフの佐々木明が粘土による造型作業を繰り返す中で、マスクと身体の模様が完成した。成田のデザインイメージでは、ウルトラマンはマットなシルバー塗装ではなく、メッキ加工による銀であったという。ウルトラマンでは実現しなかったが、後に成田が美術を担当する『突撃! ヒューマン!!』において、主役ヒーローのステンレス製マスクで結実した。 造形は、演技者の古谷敏の体型を採寸してライフマスクを取って完全に古谷専用として作られており、他の演技者が着用することは考慮されていない。古谷の体型が八頭身であることから、マスクを着けることで成田が人体の美の理想とする七頭身になるとしている。 撮影での傷みによる作り直しと改良・修正の意味も併せて、2度大きなモデルチェンジが行われている。これはAタイプ(第13話まで)、Bタイプ(第14 - 29話)、Cタイプ(第30話以降)と呼ばれて区別されている。 マスク Aタイプのマスクはそれ以降のマスク同様に土台となるFRP樹脂製マスクの表面に、合成ゴム・ラテックスの表皮をコートする形で作成されている。これは当初、作中で口を可動させる予定だったが、撮影が開始されてから口の開閉の効果が充分に発揮できないことが判明し、なおかつ口の横に不自然なシワができてしまったため、開閉がオミットされた。1クール分の撮影が終了したころ、傷みと劣化が進行したため、Bタイプに新調されるが、この際に口の開閉が廃されてラテックス使用の必要性がなくなったため、素材はFRP製となり、Aタイプの原型からポリエステル(FRP)で抜いて仕上げて製作している。一部の文芸スタッフ[誰?]はこの経緯を知らず、放送を見て「前回まで宇宙人然としていた顔が鉄仮面のようになって驚いた」と証言している[要出典]。Bタイプマスクの特徴としてアゴの部分がやや張りぎみで頬がほっそりし、口幅が狭く口元が締まっていることもあってやや口の上部分が出ており、知的でシャープな顔立ちである。Bタイプマスクの左右の耳には目とカラータイマーの電飾のスイッチが付けられている。CタイプマスクはBタイプに比べて細身ながらも、丸みを帯びた印象で口幅がより広く、穏やかに微笑んでいるかのような口元と、どことなく温和な雰囲気の顔立ちが特徴であり、Bタイプと比べると目の取り付け位置、耳の形状、その位置や角度も異なっている。耳の中心をくり抜くことで外部の音が聞こえやすくなっており、外側には銀色に塗った薄いスポンジが張られている。 BからCに新たに造形し直されたことについては、デザイン・造形ともに関与していた成田の「晩年近くになるまで全く知らなかった」との証言や「佐々木明が自身で造形したBタイプにどうも満足がいかず、それを解決するため独自の判断で全面的に作り直ししたのではないか」との憶測はあるが、現在に至るもはっきりとわかっていない。 この新たに作られたCタイプマスクの原型は、ゾフィーや後の『帰ってきたウルトラマン』にも流用され、以降は長期に渡ってウルトラマン(ゾフィーと新マン含む)の標準的マスクになる。 目の形状は3タイプとも共通である。最初の撮影会の段階では目に覗き穴はなかった。内部の電球が見えないよう薄めたFRPが内側に塗られている。 A・B・Cマスク共通で2ミリのエンビ板がヒートプレスしてあり、目の押し型は木製となっている。 スーツ スーツは前作のケムール人で使用したウェットスーツが質感として成功したため、ウルトラマンもウェットスーツで製作されることになった。初期のAタイプは銀と赤(朱)のラインでそれぞれ型紙を起こし、スキューバダイビング用のポリエチレンの黒いウェットスーツ生地を古谷の体形に合わせて裁断し、バラバラに作ったラインのパーツを接合して、ラテックスを張って製作されている。その後、当初の「宇宙人」からヒーロー性を強調した造形に変更が加えられ、スーツが作り替えられるたびに上半身がより筋骨隆々としたたくましい体型に変化していった。BタイプとCタイプは、赤い素材に銀の模様が描かれている。AタイプとBタイプはマスクとの境目付近が銀色に塗装されていたが、Cタイプは塗装されておらず、マスクとの境目がそのまま色の境界線になっている。その後、アメリカから輸入した銀色のウェットスーツを基に赤いラインを描いて使うようになり、後に赤いウェットスーツを入手するとそれらを裁断して1つのスーツに縫い合わせていたという。 足(靴)は、Aタイプは市販のゴム地下足袋の改造品。当初はラテックスのオリジナルのブーツを作っていたが、崩れたり破れたりとダメージが酷かったことから、後に既製品のブーツが改良されたものが使用された。Bタイプはブーツの爪先が尖って反り返っている上に、踵の上に縦に小さなヒレ(ファスナー隠しと思われる)が付いている。Cタイプは靴底を薄いゴムに貼り替えた皮革製ブーツであるため、両内側にファスナーラインが見える。 手は医療用(外科手術用)の極薄手の手袋を使用し、スーツとの継ぎ目を撮影のたびにテープで貼って隠した上で、手から手首全体をスーツと同じ銀色に塗装することで、視聴者に「人が着ぐるみを着て演じている」印象を薄める処理がなされている。足についても靴とスーツの境目に同様の処理が施されている。 ウルトラマンのスーツアクターを務めた古谷敏は、隆々とした体型にするためにウレタンを入れていたことから、古谷自身の皮膚感として伝わってこず、殴られた際の痛みは少ないものの、芝居はし難しかったとしている。 塗装 塗装にもウェットスーツ(ゴム)に対する密着性とアクションに伴う伸縮性が求められたが、当時はウェットスーツ専用の塗料が存在しなかった。そこで、ゴム系接着剤を溶剤で希釈したものに銀粉を混ぜた専用の塗料を手作りし、使用している。これは通称「円谷銀」「ボンド銀」と呼ばれ、ムラにならないようにするために非常に薄く、何度も塗り重ねてようやく塗装面として完成する。ウェットスーツ専用の塗料が一般に出回るようになるまで、以降のシリーズや他の円谷ヒーローなどの塗装の基本になった。黒いスーツの全体を銀色に塗装し、赤い色を上から重ねて塗っていたが、当初用いられていた塗料は色落ちや乾燥後のひび割れが激しく、撮影の度に補修が必要となっていた。 Aタイプでは配色に合わせてスーツが継ぎ接ぎされていたが、Bタイプ以降は塗料のみで色分けされている。 また、ウルトラマンの赤色は本来は朱色だが、ネロンガ戦とその時の雑誌用特写で見られる色は真っ赤である。これは当時、まだ主流だったモノクロでの掲載を考慮してコントラストをハッキリさせるためのこの撮影時のみの処置で、後から拭き取れるように朱色の上からポスターカラーで赤く塗ったものだった。 スーツの保存・その後 これら撮影用スーツのその後の処理、保存状況などの詳細は以下の通りである。Aタイプ - Bタイプに交代後、マスクを剥がしてにせウルトラマンを経て、ゾフィーに改造。マスクはラテックスのために劣化し、廃棄されて現存しない。 Bタイプ - Cタイプに交代後は円谷倉庫で保管されていたが、1970年代に盗難に遭って現在に至るまで所在不明。 Cタイプ - 撮影終了後に番組スタッフの手元に渡っており、スーツ本体は経年劣化してしまったが、マスクのみスーツから外され当時の実物が現存する。 ウルトラマンのスーツはゴム素材のウェットスーツを使用しているため、ゴムの腐食による傷みが激しく、数年以上完全な形で保存できない。また、銀色などの塗装にも合成ゴム系接着剤が使用されるため、日ごとに柔軟性が下がり、塗装面が大きいほどスーツが硬化して縮んでしまう。また撮影用スーツについては、爆発の爆煙効果に使用されるセメント粉が表面の微細な気泡に入り込んで硬化してしまうため、なお劣化が早い。後のウルトラシリーズの各番組や映画、またイベントや展示、CM撮影時には、数年ごとに新調されている。作品の制作が終了後もこうして多くのスーツが作られる。またこれらは基本的に手造りであり、当初はこれほど長期的コンテンツになるとは考えられておらず、身体のラインの型紙なども存在しなかった。既存の写真などを参考に作るため、細部の異なった様々なバリエーションのスーツが存在することになる。スーツは中に入る演技者の体形に合わせて製作されるため、身長や体型の違いによるバリエーションも非常に多い。 Cタイプを模したマスクは、佐々木明が撮影当時にオリジナルの型から作成したレプリカを原型としているが、古谷のような長身のスーツアクターは稀であるため、マスクを小さくしてバランスをとっている。目やカラータイマーの電飾は電球ではなくLEDが用いられている。
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