ほととぎす
(ホトトギス)俳句雑誌。明治30年(1897)松山で創刊。正岡子規主宰。翌年東京に移して高浜虚子が編集。日本派の機関誌として、写生を主唱し、近代俳壇に大きな影響を与えた。現在も続刊。
(不如帰)徳冨蘆花(とくとみろか)の小説。明治31〜32年(1898〜1899)発表。海軍少尉川島武男と妻浪子との純粋な愛情が、封建的家族制度の中で壊されていく悲劇を描いた家庭小説。
ほととぎす【時=鳥/子=規/杜=鵑/不=如=帰/郭=公】
読み方:ほととぎす
[名]
1 カッコウ科の鳥。全長28センチくらい。全体に灰色で、胸から腹に横斑がある。アジア東部で繁殖し、冬は東南アジアに渡る。日本には初夏に渡来。キョキョキョと鋭く鳴き、「てっぺんかけたか」「ほぞんかけたか」「特許許可局」などと聞きなし、夜に鳴くこともある。自分の巣をもたず、ウグイス・ミソサザイなどの巣に托卵する。古くから春のウグイス、秋の雁(かり)とともに和歌に詠まれ、また冥土に往来する鳥ともいわれた。別名が多く、文目鳥(あやめどり)・妹背鳥(いもせどり)・黄昏鳥(たそがれどり)・偶鳥(たまさかどり)・卯月鳥(うづきどり)・早苗鳥・勧農鳥(かんのうちょう)・魂迎鳥(たまむかえどり)・死出田長(しでのたおさ)などがある。杜宇(とう)。蜀魂(しょっこん)。しき。とけん。《季 夏》「—大竹藪をもる月夜/芭蕉」
2 (「杜鵑草」「油点草」などと書く)ユリ科の多年草。本州以南の山野に自生。高さ約60センチ。茎はやや斜めに伸び、葉は長楕円形で先がとがり、基部は茎を抱く。9月ごろ、6弁花を上向きに開く。花びらは白地に紫の斑が散り、1の胸模様を思わせる。《季 秋》
[枕]ホトトギスが飛ぶ意から、「飛ぶ」「とば」にかかる。

不如帰
子規
時鳥
杜宇
杜鵑
蜀魂
不如婦
子規
時鳥
杜宇
杜鵑
杜鵑草
沓手鳥
油点草
蜀魂
霍公鳥
ほととぎす
杜鵑
郭公貝
杜鵑
杜鵑
杜鵑草
油点草
郭公
不如帰
子規
時鳥
杜魂
杜鵑
杜鵑草
読み方:ホトトギス(hototogisu), ホトトギスソウ(hototogisusou)
山地に自生しているユリ科の多年草で、花はユリの花を小さくしたような形で、内面に濃い紅紫色の斑点が密布しており、この斑点が鳥のホトトギスの胸毛の斑点に似ている
季節 秋
分類 植物
蜀魂
郭公
不如帰
杜鵑
油点草
ホトトギス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/06/17 00:00 UTC 版)
ホトトギス | |||||||||||||||||||||||||||
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ホトトギス
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保全状況評価 | |||||||||||||||||||||||||||
LEAST CONCERN (IUCN Red List Ver.3.1 (2001)) |
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分類 | |||||||||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||||||||
Cuculus poliocephalus Latham, 1790 |
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和名 | |||||||||||||||||||||||||||
ホトトギス、杜鵑 | |||||||||||||||||||||||||||
英名 | |||||||||||||||||||||||||||
Lesser Cuckoo |
ホトトギス(鵑、学名:Cuculus poliocephalus)は、カッコウ目・カッコウ科に分類される鳥類の一種[注釈 1]。特徴的な鳴き声とウグイスなどに托卵する習性で知られている。日本では古来、様々な文書に登場し、杜鵑、杜宇、蜀魂、不如帰[注釈 2]、時鳥、子規、田鵑など、漢字表記や異名が多い。季語では夏を示す[1]。
形態
全長は28cmほどで、ヒヨドリよりわずかに大きく、ハトより小さい。頭部と背中は灰色で、翼と尾羽は黒褐色をしている。胸と腹は白色で、黒い横しまが入るが、この横しまはカッコウやツツドリよりも細くて薄い。目のまわりには黄色のアイリングがある。
分布
アフリカ東部、マダガスカル、インドから中国南部までに分布する。
インドから中国南部に越冬する個体群が5月頃になると中国北部、朝鮮半島、日本まで渡ってくる。日本では5月中旬ごろにくる。他の渡り鳥よりも渡来時期が遅いのは、托卵の習性のために対象とする鳥の繁殖が始まるのにあわせることと、食性が毛虫類を捕食するため、早春に渡来すると餌にありつけないためである。
生態
日本へは九州以北に夏鳥として渡来するが、九州と北海道では少ない。沖縄本島北部での確認例もあり。
カッコウなどと同様に食性は肉食性で、特にケムシを好んで食べる。また、自分で子育てをせずに主にウグイスに托卵する習性がある。
オスの鳴き声はけたたましいような声で、「キョッキョッ キョキョキョキョ!」と聞こえ、「ホ・ト・…・ト・ギ・ス」とも聞こえる。早朝からよく鳴き、夜に鳴くこともある。この鳴き声の聞きなしとして「本尊掛けたか」や「特許許可局」や「テッペンカケタカ」が知られる。
文学や芸術とホトトギス
故事
ホトトギスの異称のうち「杜宇」「蜀魂」「不如帰」は、中国の故事や伝説にもとづく。長江流域に蜀という傾いた国(秦以前にあった古蜀)があり、そこに杜宇という男が現れ、農耕を指導して蜀を再興し帝王となり「望帝」と呼ばれた。後に、長江の氾濫を治めるのを得意とする男に帝位を譲り、望帝のほうは山中に隠棲した。望帝杜宇は死ぬと、その霊魂はホトトギスに化身し、農耕を始める季節が来るとそれを民に告げるため、杜宇の化身のホトトギスは鋭く鳴くようになったと言う。また後に蜀が秦によって滅ぼされてしまったことを知った杜宇の化身のホトトギスは嘆き悲しみ、「不如帰去」(帰り去くに如かず。= 何よりも帰るのがいちばん)と鳴きながら血を吐いた、血を吐くまで鳴いた、などと言い、ホトトギスの口の中が赤いのはそのためだ、と言われるようになった。
日本の芸術とホトトギス
- 古典文学
日本では、激情的ともいえるさえずりに仮託して、古今ホトトギスの和歌が数多く詠まれ、すでに『万葉集』では153例、『古今和歌集』では42例、『新古今和歌集』では46例が詠まれている。鳴き声が聞こえ始めるのとほぼ同時期に花を咲かせる橘や卯の花と取り合わせて詠まれることが多い。
他にも夜に鳴く鳥として珍重され、その年に初めて聞くホトトギスの鳴き声を忍音(しのびね)といい、これも珍重した。『枕草子』ではホトトギスの初音を人より早く聞こうと夜を徹して待つ様が描かれる。
平安時代以降には「郭公」の字が当てられることも多い。これはホトトギスとカッコウがよく似ていることからくる誤りによるものと考えられている。松尾芭蕉もこの字を用いている。
宝井其角の句に「あの声で蜥蜴(とかげ)食らうか時鳥」がある。ホトトギスは美しい声で鳴くが醜いトカゲなどの爬虫類や虫などを食べる、すなわち「人や物事は見かけによらない」ということを指す。
万葉の時代から「ウグイスの巣に卵を産んで育てさせる」という托卵の習性が知られる一方、時代や地域によってはカッコウあるいはウグイスと混同されている例もある。下記「天下人」を詠んだ句では鳴き声を愛でる鳥すなわちウグイスであるとの考え方も一般的である。従って作品中に「ホトトギス」とある場合でも、季節や時間帯によっては注意が必要となる。
- 近代文学
正岡子規は1895年(明治28年)4月に近衛師団つきの従軍記者として遼東半島に渡ったものの予定通りにはゆかず同年5月には帰国の途につくはめになり、帰国の船中で喀血して重態に陥り、神戸病院に入院し、結核と思われ、当時は結核は「不治の病」という位置づけであったので、自分に死・死期が迫っていると覚悟した。喀血した(血を吐いた)ことから、「鳴いて血を吐く」と言われているホトトギスと自分を重ね合わせ、ホトトギスにちなむ句を一晩で数十も作ったという。そして、ホトトギスの漢字表記のひとつの「子規」を自分の俳号とした。
- 音楽
- 『ほととぎす』(山田流箏曲) - 文化初年頃、山田流の流祖・山田検校作曲。ホトトギスの忍音をたった一声でも聞くため、船に乗り隅田川を徹夜でさかのぼる様が詠われた曲。
- 『時鳥の曲』(箏曲) - 1901年、楯山登作曲。明治時代に大阪で活躍した盲人音楽家・楯山の数多い作品中、代表作。古今和歌集の「我が宿の池の藤波咲きにけり 山ほととぎすいつか来鳴かむ」「今更に山に帰るなほととぎす 声の限りは我が宿に鳴け」の2種を歌詞とし、ホトトギスの声を描写した手事(てごと - 長い間奏器楽部)を持つ。この作曲のため楯山は関西中のホトトギスの名所を巡り、また何日も山にこもって声を研究したと言う。
- 『夏の曲』(箏曲) - 幕末の安政・嘉永頃、吉沢検校作曲。「古今組」5曲の一つ。古今和歌集から4首を採り歌詞とした中に「夏山に 恋しき人や入りにけむ 声振り立てて鳴くほととぎす」がある。
- その他、『四季の眺』(松浦検校作曲)、『里の暁』(松浦検校作曲)、『夏は来ぬ』(小山作之助作曲)など、曲中一部にホトトギスを詠んだ曲は少なくない。
- 芸術の関連人物
- その他
江戸時代から「厠(かわや)の中にいるときにホトトギスの声を聞くと不吉である」という言い伝え、迷信が日本各地に伝わっているが、この出典は『酉陽雑俎』および『太平広記』である。夏目漱石が西園寺公望におくった「時鳥(ほととぎす)厠(かわや)半(なか)ばに出かねたり」という俳句も、この迷信をふまえる[2]。
天下人とホトトギスの喩え
三人の天下人(三英傑)の性格を、鳴かないホトトギスをどうするかという題材で後世の人が言い表している(それぞれ本人が実際に詠んだ句ではない)。これらの川柳は江戸時代後期の平戸藩主・松浦清の随筆『甲子夜話』巻53に見える[3](q:時鳥#近世)。
以下に引用とその解釈を記す。
- 「なかぬなら殺してしまへ時鳥 織田右府」(織田信長)
- この句は、織田信長の短気さと気難しさを表現している。
- 「鳴かずともなかして見せふ杜鵑 豊太閤」(豊臣秀吉)
- この句は、豊臣秀吉の好奇心旺盛なひとたらしぶりを表現している。
- 「なかぬなら鳴まで待よ郭公 大權現様」(徳川家康)
- この句は、徳川家康の忍耐強さを表している[注釈 3]。
- 「鳴け聞こう我が領分のホトトギス」(加藤清正)
- この句は、加藤清正の配慮を表している。
なお、松下電器(現:パナソニック)の創業者である松下幸之助は生前、これらの句に対抗して「鳴かぬなら それもまた良し ホトトギス」と詠んだことで知られる[注釈 4]。
切手
3円普通切手
- 1954年(昭和29年)5月10日発売
- 1971年(昭和46年)7月15日発売 刷色変更、“NIPPON”追加
- 1988年(昭和63年)5月22日発売 60円 国土緑化運動 屋島とホトトギス
- 2010年(平成22年)11月29日書体変更の発表[4]
- 2015年(平成27年)9月30日販売終了[5]
県の鳥
- 香川県:1966年(昭和41年)5月10日選定[6]
- 岡山県:1964年(昭和39年)にホトトギスを県の鳥に指定したが、托卵性のイメージの悪さ等を理由に1994年2月に県民投票で「県民の鳥」としてキジに変更された。
人との関わり
別名
和名では「あやなしどり」などとも言う。また異名が多く、アヤメドリ、イモセドリ、ウヅキドリ、ウナイドリ、サナエドリ、シデノタオサ、タチバナドリ、タマムカエドリ、トキツドリ、フジョキ、ユウカゲドリなどと呼ばれる[要出典]。
脚注
注釈
- ^ 「ホトトギス目ホトトギス科」と書かれることもあるが、カッコウ目カッコウ科と同じものである。
- ^ 「杜鵑」「杜宇」「蜀魂」「不如帰」などは、中国の故事「杜鵑の啼血」にちなむ。故事の節で説明。
- ^ 家康の句にある郭公(ホトトギス)とは前田利家のことを指し、家康は利家が死ぬのを待っていたとする説がある[要出典]。
- ^ ただしこの句は、根岸鎮衛の著になる『耳嚢』にある紹巴の句「なかぬなら鳴かぬのもよし郭公」と同趣向である。また織田信長の七男・織田信高の系統の旗本織田家の末裔であると自称している(彼が織田信高の子孫にあたるという第三者視点での明確な証拠は本人家族どちらからも全く明示されていない)フィギュアスケート選手の織田信成も、テレビ番組のインタビューにおいて、信長を詠んだ句への返句として「鳴かぬなら それでいいじゃん ホトトギス」と、松下と同じような句を詠んで話題になった。なお種田山頭火は「鳴かぬなら鳴かなくてよいホトトギス」のパロディを作っている。(『草木塔』所収)
出典
- ^ “トピックス:公益信託 サントリー世界愛鳥基金”. www.koueki-suntory-aityou.jp. 2024年5月12日閲覧。
- ^ 加藤徹『怪力乱神』中央公論新社、2007年8月10日、161-164頁。ISBN 978-4-12-003857-0。
- ^ 「夜話のとき或人の云けるは、人の仮托に出る者ならんが、其人の情実に能く恊へりとなん」として、「「郭公を贈り参せし人あり。されども鳴かざりければ、 なかぬなら殺してしまへ時鳥 織田右府 鳴かずともなかして見せふ杜鵑 豊太閤 なかぬなら鳴まで待よ郭公 大権現様」
- ^ 『普通切手の一部券種で使用している書体の変更』(PDF)(プレスリリース)郵便事業株式会社、2010年11月29日 。2022年6月9日閲覧。
- ^ “普通切手の一部券種の販売終了” (PDF). 日本郵便株式会社 (2015年9月1日). 2022年6月10日閲覧。 “別紙1”
- ^ “都道府県の鳥について”. 日本鳥類保護連盟. 2013年10月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年5月27日閲覧。
参考文献
- 山渓ハンディ図鑑7『日本の野鳥』 山と渓谷社 ISBN 4-635-07007-7
- 真木広造、大西敏一 『決定版 日本の野鳥590』 平凡社、2000年 ISBN 4-582-54230-1
- BirdLife International 2004. Cuculus poliocephalus. 2006 IUCN Red List of Threatened Species. Downloaded on 24 July 2007.
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