托卵とは? わかりやすく解説

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托卵

読み方:たくらん

托卵は「実の親ではない者に(自分実子であると信じ込ませて)子育て行わせること」。とりわけ通俗的な文脈では、「夫ではない相手との間にデキ子供を(夫の子であると偽って)夫と共に養うこと」を指す意味で用いられる表現他人(≒浮気相手の子を夫に育てさせるという所業。夫は自分の子供と信じて育児に励むのであるこのように夫を偽る女は、俗に托卵女子」や「托卵妻」などと呼ばれる

托卵はもともとはカッコウホトトギスなどに見られる習性を指す語である。人間関係における托卵は、鳥類の托卵になぞらえた比喩メタファーといえる

たく‐らん【×托卵】

読み方:たくらん

他種鳥の巣に卵を産み抱卵育雛(いくすう)をさせる習性日本ではホトトギス・カッコウ・ジュウイチ・ツツドリにみられる


托卵

英訳・(英)同義/類義語:brood parasitism

鳥類生殖行動で、カッコウ等が他の種類の巣に自身の卵を生み付け巣立ちまで世話をさせること。

托卵

作者平山夢明

収載図書贈る物語Wonder
出版社光文社
刊行年月2002.11

収載図書贈る物語 Wonder―すこしふしぎの驚きあなたに
出版社光文社
刊行年月2006.11
シリーズ名光文社文庫


托卵

作者島村洋子

収載図書勿忘草恋愛ホラー・アンソロジー
出版社祥伝社
刊行年月2003.1
シリーズ名祥伝社文庫


托卵

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/05/22 14:48 UTC 版)

コウウチョウに托卵されたツキヒメハエトリ英語版
自分より大きいカッコウに餌を与えるオオヨシキリ
テリバネコウウチョウ英語版の若鳥に餌を与えるアカエリシトド
それぞれの卵のグループには、ヨシキリの卵に混じってカッコウの大きい卵が1つずつ含まれている

托卵(たくらん、brood parasite、brood mimicryegg mimicry)とは動物の習性のひとつ。自分のへの世話を他の動物に托す(代行させる)こと。巣作り・抱卵・子育てなどを仮親に托す(代行させる)ことを托卵。育ての親を「仮親」と表現する[1]

もともとは鳥類の行為を指したが、魚類昆虫類の行為も指す。寄生の一種と言って良い[2]。同種に対して行う場合を種内托卵・他に対して行う場合を種間托卵と言う[1]

鳥類

種間托卵

種間托卵でよく知られているのは、カッコウなどカッコウ科の鳥類が、オオヨシキリホオジロモズ等の巣に托卵する例である。カッコウのは比較的短期間(10 - 12日程度)で孵化し、巣の持ち主の雛より早く生まれることが多い。孵化したカッコウの雛は巣の持ち主の卵や雛を巣の外に押し出してしまう[3]。その時点でカッコウの雛は仮親の唯一の雛となり、仮親の育雛本能に依存してをもらい、成長して巣立っていく。托卵を見破られないようにするため、カッコウは卵の色や斑紋などを仮親の卵に似せている[4][5][6](仮親の卵に似た卵を生む性質が代を経て選択された)。また、托卵する際に仮親の卵を抜き出すが、その行動の意義は判っていない[7][8]。基本的に、卵を託す相手は、同種または近縁種が選ばれる。しかし、稀に猛禽類など、場合によっては卵や雛を食べる肉食鳥が、選ばれることもある[9]

他にはスズメ目コウウチョウ[10]キツツキ目ミツオシエ科カモ目ズグロガモが挙げられる。ズグロガモは離巣性で,雛は孵化するとすぐに独立する[11]

種内托卵

種内托卵を行う鳥類としてはダチョウムクドリが知られている。ダチョウはオスが地面を掘ってできた窪みに高位のメスが産卵、そのまわりに群れのメス達が産卵する。これを最初に産卵したメスとオスが交代で抱卵する。

2008年にリスト化された時点で、カモ目74種、スズメ目66種、キジ目32種、チドリ目19種、ツル目8種、カワラヒワ目6種、その他の鳥類を合わせて234種で確認された[12]

対抗策

托卵されるということは繁殖のためのリソースを空費させられることにほかならず、托卵が始まったことにより生息数が減少する鳥も見られる[13]。托卵に対抗できれば繁殖で有利となるため、「個体差の大きな卵を産むことで、托卵された卵を見分けやすくする[14]」、さらに托卵者との共生が長く続く環境では「托卵による雛を殺す、あるいは巣ごと放棄して育てない[15]」といった進化を遂げた鳥も存在する[16]。種内托卵でも自分の雛を見分けて、托卵された雛を排除する例が見られるという[17]

人工的な托卵

動物園などでは親鳥が放棄した卵を同種、あるいは近縁種の鳥に育てさせることがある。この場合、卵を人工孵化させて雛を仮親に託す方法と卵を仮親に抱卵させる方法の2通りがある。

爬虫類

北米に生息するフロリダアカハラガメは同所に生息するアメリカアリゲーターの巣に托卵する。巣の発酵熱で孵化を早めると同時に、巣を守るアリゲーターの親を卵の護衛役に利用するが、托卵先のアリゲーターの卵に危害を加えるわけではない。

魚類

魚類では、日本に生息するコイ科の淡水魚であるムギツクが、オヤニラミギギドンコヌマチチブブルーギル等の卵を親が保護する魚類の巣に卵を産み付ける。近縁種で朝鮮半島に生息するホソムギツク、クロムギツクは、主にコウライオヤニラミに托卵する。 また、ナマズ類に属し、アフリカのタンガニーカ湖に生息する、シノドンティス・ムルティプンクタートス(和名・カッコウナマズ)は、マウスブルーダーであるシクリッドに卵を託す習性を持つ[18]。このナマズの稚魚は、シクリッドの口腔内でシクリッドの卵を食べながら成長する。

タナゴなどの淡水魚類は、ドブガイなどの淡水二枚貝のエラに托卵する[19][20]。産み付けられる貝は、産卵母貝という[21]

巻貝

エゾボラのメスは他個体の貝殻に卵を産み付ける行動が確認された[22]

昆虫類

昆虫類のシデムシの一部は種内托卵を行う。モンシデムシは托卵を行うが、托卵される側はこれに対抗する防衛本能として子殺しの特徴を備えている。すなわち、親は通常の孵化に要する時間と比べて孵化が早すぎる個体を殺す。

カッコウ蜂英語版と呼ばれる別の蜂が作った巣に卵を産み付けて、先に孵化して元々の蜂の幼虫を殺してしまう蜂が存在する[23]

ヒト

ヒト夫婦において、配偶者以外の者(以前の恋人不倫相手など)との間に生まれた子供を夫婦の実子として養育させることがあり、これを俗に「托卵」と表現することがある[24]

2017年、オランダの男性医師であるヤン・カールバルトは、不妊治療として精子提供を受ける女性たちに対して、「指定された提供者の精子」と偽って自身の精子による人工授精を行い、数十人以上の女性たちを妊娠・出産させていたとされる[25]


関連作品

  • 絵本
    • おのきがく『もずのこども』[26](1976年、講談社) - 講談社の創作絵本シリーズの一つ[27]
  • 漫画

脚注

  1. ^ a b 山内 1995, p. 131.
  2. ^ 田中 2012.
  3. ^ 樋口 1995, p. j127.
  4. ^ 山内 1995, p. 138.
  5. ^ 樋口 1995, pp. j129–j130.
  6. ^ 田中 2012, p. p62-65.
  7. ^ 樋口 1995, pp. j128–j129.
  8. ^ 田中 2012, p. 65.
  9. ^ JASON BITTEL (2019年5月3日). “なぜフクロウの巣にカモのヒナが?専門家に聞いた”. ナショナルジオグラフィック: p. 2. https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/19/041800234/ 2019年5月3日閲覧。  {{cite news}}: |accessdate=|date=の日付が不正です。 (説明)
  10. ^ Jeffrey P. Hoover; Scott K. Robinson (2007-03-13) (英語). Retaliatory mafia behavior by a parasitic cowbird favors host acceptance of parasitic eggs. 104. Proceedings of the National Academy of Sciences. pp. 4479–4483. オリジナルの2017-11-20時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20171120043316/http://www.pnas.org/content/104/11/4479.abstract 2023年4月28日閲覧。. 
  11. ^ 托卵(タクラン)とは? 意味や使い方”. コトバンク. ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典. DIGITALIO. 2025年5月22日閲覧。
  12. ^ Yom‐Tov, Yoram (2001-01). “An updated list and some comments on the occurrence of intraspecific nest parasitism in birds” (英語). Ibis 143 (1): 133–143. doi:10.1111/j.1474-919X.2001.tb04177.x. ISSN 0019-1019. https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1474-919X.2001.tb04177.x. 
  13. ^ 濱尾 2018, p. 88.
  14. ^ 濱尾 2018, pp. 86–87.
  15. ^ 濱尾 2018, pp. 91–92.
  16. ^ 田中 2012, pp. 65–66, 71–72.
  17. ^ 濱尾 2018, pp. 97–98.
  18. ^ 田中 2012, p. 61.
  19. ^ ミヤコタナゴの特徴と仲間 - 御宿町役場”. www.town.onjuku.chiba.jp. 2023年8月5日閲覧。
  20. ^ NPO法人 ニッポンバラタナゴ高安研究会 » 第4章 ドブガイに托卵されたタナゴの卵”. n-baratanago.com. 2023年8月5日閲覧。
  21. ^ 北村, 淳一、諸澤, 崇裕「霞ヶ浦流入河川におけるタナゴ亜科魚類の産卵母貝利用」2010年、doi:10.11369/jji.57.149 
  22. ^ コース: 巻貝も「托卵」する”. repun-app.fish.hokudai.ac.jp. 2024年6月19日閲覧。
  23. ^ The secret life of solitary bees – National Biodiversity Data Centre”. biodiversityireland.ie. 2024年6月16日閲覧。
  24. ^ 猫山ニャン子 (2016年7月28日). “他人ごとではない!夫以外との子を育てている「托卵女子」の割合が判明”. しらべぇ. https://sirabee.com/2016/07/28/144867/ 2022年1月12日閲覧。 
  25. ^ “オランダの医師、自分の精子で無断体外受精 49人の父親と判明”. BBC. (2019年4月15日). https://www.bbc.com/japanese/47931231 2022年1月11日閲覧。 
  26. ^ 『子どもの文化 10(2)』 p.27 文民教育協会子どもの文化研究所 1978年2月 [1]
  27. ^ もずのこども 講談社
  28. ^ 「サンデーらいぶらりい」『サンデー毎日 71(10)(3908);1992・3・15』 毎日新聞出版 1992年3月

参考文献

  • 濱尾, 章二『「おしどり夫婦」ではない鳥たち』 276巻、岩波書店〈岩波科学ライブラリー〉、2018年。 ISBN 978-4-00-029676-2 
  • 山内, 淳「鳥類における托卵行動の進化 : 野外観察・実験と理論」『日本生態学会誌』第45巻第2号、1995年、131-144頁、doi:10.18960/seitai.45.2_131ISSN 0021-50072022年1月22日閲覧 
  • 樋口, 広芳「托卵習性に見る鳥類の繁殖適応」『Journal of Reproduction and Development』第41巻第6号、1995年、j127-j133、doi:10.1262/jrd.95-416j127ISSN 0916-88182022年1月22日閲覧 
  • 田中, 啓太「騙しを見破るテクニック:卵の基準,雛の基準」『日本鳥学会誌』第61巻第1号、2012年、60-76頁、doi:10.3838/jjo.61.60ISSN 0913-400X2022年1月22日閲覧 

関連項目


托卵

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/02 15:47 UTC 版)

ヨーロッパカヤクグリ」の記事における「托卵」の解説

ヨーロッパカヤクグリカッコウ仮親でもある。1912-1933年、イングランドエセックスにおける調査では、托卵のあった509巣のうち、302巣がヨーロッパカヤクグリの巣であった。現在、イギリス農地森林周辺および低木地におけるカッコウの托卵は本種に特化している。 カッコウは、ほかの仮親が卵を区別することを学んで以来仮親に合う卵に進展させたが、ヨーロッパカヤクグリ場合、その卵は無地でほかのイワヒバリ科の種と同様に青み帯びており、托卵される卵と似ていないにもかかわらずカッコウの卵を受け入れている。これは本種が、歴史的にそれまで托卵されてこなかったことから、似ていない卵も受け入れ、そのためカッコウもこの仮親似た卵を産まないことによるカッコウ仮親が卵を区別するうになると、卵を似せるように進化する考えられるが、1939-1982年のイギリスにおける托卵率は、本種2万3352巣のうちの2%であり、比率的に托卵の影響少ないことから、区別する至っていないと考えられるヨーロッパカヤクグリ孵化までの抱卵日数は12-14日であるが、カッコウの卵の場合11日であり、約1日前に孵ったカッコウの雛は、仮親であるヨーロッパカヤクグリの卵や後に孵った雛を巣から追い出す

※この「托卵」の解説は、「ヨーロッパカヤクグリ」の解説の一部です。
「托卵」を含む「ヨーロッパカヤクグリ」の記事については、「ヨーロッパカヤクグリ」の概要を参照ください。

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