POC
「POC」とは・「POC」の意味
POCとは「proof of concept」の略で、新しい技術や手法、理論、アイデアなどが実現可能なものかどうかを確認するための検証工程をいい、「概念実証」や「コンセプト実証」と訳され、主にビジネスの場やit業界、セキュリティ業界、医療の分野で用いられる言葉だ。企業が新たに企画・開発したサービスは、市場に投入される以前にその実現可能性を検証し、安定した収益化の確証を得ることが必要である。特にAIやIoTなどといった未知の ITテクノロジーを導入して行われるシステム開発やセキュリティ構築は、新たな概念をもって顧客ニーズを開拓するものであり、サービスコンセプトの実効力をはかるうえでも実現可能性の事前検証は不可欠のプロセスとなる。
ビジネスシーンでPOCが注目を集め始めている背景には、IT投資に対する企業のスタンスの変化がある。IT導入当初は、企業は主に業務効率化に向けてそのテクノロジーを活用していた。システムの導入による事務の省力化、販売管理の一元化、それらによる人員の削減などがその実例で、いずれも既存業務の改善に資することが主要な目的であった。この流れに変化を生じさせたのは、DX(デジタルトランスフォーメーション)の潮流である。DXはいやおうなしに企業風土の変革を促し、企業は市場での競争優位性を維持し続けるために、デジタル技術による新規事業の創出や新たな販路拡大を行うことにIT投資の軸足を移すようになった。一方で、デジタル技術による新規事業の創出は多くの企業にとって前例のない取り組みであり、既存の業務施策やノウハウが応用できないことから、不確実な要素が多くリスクを避けるためにはこれまでにない検証工程が必要となった。これがPOC導入の増加をもたらした背景である。
企業にとってPOCを導入するメリットの一つは、コストの削減をはかることができるという点である。新たなコンセプトに基づくアイデアは、机上では完璧なものであったとしても、実際に市場に投入してみると全く受け入れられなかったというケースも少なくない。検証なしに開発を進めると、失敗した際にはそれまでにかかった工程や日数、資金などあらゆるコストが無駄になってしまう。POCを導入すれば各段階でシミュレーションを行いながらアイデアの実現性を検証でき、結果的に全体のコストを抑えることができる。
POCでは、実際に市場に投入するデモ版を作成して検証が行われる場合がある。各々の検証フェーズで問題点が見つかると、そのつど改良を繰り返しながら工程を進めていく。この中で、実現化に踏み切ることがどうしても難しいという局面も生じるが、一度立ち止まることでプロジェクト自体を冷静に客観視する機会となり、結果的に開発リスクそのものを低減させるという効果もある。また、POCは検証効力だけでなく、内外へのアピール効果も備えている。POCで得られた成果は外部の投資家にとって出資を進めるうえでの有力な判断材料となる。新しい技術を活用した新たなサービスであれば注目度はなおさらである。POCで得られた成果は内部の社員やスタッフにとってもメリットとなる。新たなサービスに有効性が見られることはモチベーションの向上につながるからである。
これらのメリットがある一方、POCにはデメリットもある。その一つがコスト増大のリスクである。POCは繰り返し検証を行うことでアイデアの実現可能性を高めていくことができるが、検証の回数が多くなるとその分コストの増大も避けられない。これはPOCにおける検証課題の設定が不十分な場合などに起こりがちであり、そのまま進めるとPOCの実効性が損なわれるだけでなく、商品化して投入しても市場に全く受け入れられないというケースもある。このような失敗はAI業界のスラングで「POC死」などと称されている。情報漏えいに対するリスクも見逃せない。POCで得られたデータは今後のプロジェクトを左右する貴重な資料である。POCセキュリティは厳重に管理される必要がある。
POCの実施に向けては4つの流れを押さえておく必要がある。1つ目は「目的の設定」である。目的の設定がぶれるとPOCの方向性が失われる。POCを行うことでどのような成果を得たいのか、どこをゴールに設定するのかといった点を細かく決めておく。2つ目は「実施内容の設定」である。条件や場所、経費、必要な設備など、初めに目的として決めた項目に具体的な肉付けを施していく段階となる。3つ目は「実証」である。試作品などを用いて実際に現場で運用し、結果を積み上げる。4つ目は「POCの結果の検証」である。実証段階で積み上げられた結果などからデータを抽出し、当初の想定との差異や検証を重ねる中で気づいた改善点などをまとめて、最終的な開発の可否につなげていく。
POCはすでにさまざまな業界で取り入れられている。システム導入などにPOCを活用しているのがIT業界である。クライアントの依頼を受けてそのアイデアを実現可能にするための仮説を立て、デモ作品を作成して検証を重ね、クライアントとモニターの意向を調整しながらサービスの実現性を探っていく。またセキュリティ業界でPOCといえば、脆弱性を実証するためのプログラムを指す場合が多い。セキュリティの脆弱性は、ある一定の条件下のもとで露呈し、OSや修正プログラムなどの適用状況によっても影響を受けることがある。脆弱性がどのような条件で生まれ、どのような場合に悪意あるプログラムに侵入されるのかといった点を証明したうえで、ウィルスなどに対して効果的な対策を行うのがセキュリティのPOCである。医療の分野で用いられるPOCとは、主に新薬等の有効性が実証されることをさす。新薬の有効性が認められることを「POCを取得した」などといい、このPOC取得を経て初めて製品化が可能となる。
POCといえば多くの場合、「proof of concept(プルーフ・オブ・コンセプト)」をさすが、同じスペルの3文字で他の意味となる言葉もある。その一つが「担当者」を意味する「Point of contact(ポイント・オブ・コンタクト)」である。「彼がこの案件のPOCだ」といえば、「彼がこの案件の担当者だ」という意味となる。また、医療の現場でPOCが「Point of care」の略である「医療実施時点管理システム」をさす場合もある。
「POC」の読み方
POC(proof of concept)はアルファベット3字の頭文字をとって「ポック」と読む。あるいはアルファベットをそのまま読んで「ピーオーシー」という場合もある。業界や業種、企業風土などによって読み方が異なる場合が多い。「POC」の熟語・言い回し
POC開発とは
POC開発とは、スタートの企画段階から実際の開発に至るまでの間に、検証内容を設定し、内容実証を経て実証評価を行い、結果を受けて見直しをはかるといった一連のサイクルを実施し、これを繰り返してアイデアの実効性を高める開発方法をいう。POCを伴わない通常の開発方法に、プロトタイプを作成して実効性を確認するやり方があるが、プロトタイプがすでにアイデアの方向性や実現性を確保したうえで試作品を作るのに対して、POCはアイデアの方向性や実現性が定まっておらず、むしろそれらの実現性そのものを検証するために行うという点で大きな違いがある。
POC試験とは
薬学の世界では、新薬候補となる成分の有用性や有効性が、ヒトや動物への投与によって認められることをPOCといい、3段階で新薬承認されるうちの第2段階である「第II相試験」前期がこれにあたる。POC試験とは、この第II相での試験をさし、この試験で成分の有効性と安全性が確認されると最終の第3段階へ進むことができる。最終段階に至るまでには通常9年から17年を要し、量産体制に移るためにはこの3段階すべての認証を受ける必要がある。
ピー‐オー‐シー【PoC】
読み方:ぴーおーしー
PoC(概念実証)
PoC
読み方:ピーオーシー
PoCとは、ボタンを押す操作によって複数の通話を切り替えることができる通話システムのプッシュトゥトーク(Push To Talk)を、携帯電話で実現するシステムのことである。
PoCは2.5G/3Gの携帯電話において、SIP(Session Initiation Protocol)やRTP(Real-time Transport Protocol)のパケット交換システムを用いることによって実現されている。PoCでは、電話番号を入力する代わりに特定のボタンを押すだけで通話状態が築かれる。PoCを用いることによって、いわば、携帯電話をあたかもトランシーバーのように扱うことが可能になる。
PoCは、モバイルでWebアプリケーション技術の標準化を行っている団体であるOpen Mobile Alliance(OMA)によって、IMS(IP Multimedia Subsystem)の一部として定義、標準化されている。
参照リンク
OMA Technical Section - Push to Talk Over Cellular Working Group - (英文)
POC
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/01/23 02:04 UTC 版)
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- 概念実証 (Proof of Concept)
- 携帯電話によるプッシュ・トゥ・トーク (Push-to-talk over Cellular)
- 工事進行基準 (Percentage of Completion) (建設業会計)
- スウェーデンのスノーボード関連製品を製造、販売するブランドPOCスポーツの略称。
- IT分野において連絡窓口となる人や組織(Point of Contact)。サービスデスク。
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