工事進行基準とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 同じ種類の言葉 > 人文 > 概念 > 基準 > 工事進行基準の意味・解説 

工事進行基準


工事進行基準

読み方こうじしんこうきじゅん
【英】percent of completion method

工事進行基準とは、長期的なプロジェクトにおける会計基準のうち、売上を期毎に進捗度に合わせて分散計上する方式のことである。

工事進行基準は、決算日ごとに人件費等の原価売上計上されるため、プロジェクト終了時一括して計上する方式比べて不採算案件迅速に発見でき、企業会計透明性保てる、という利点がある。

建築業における長期請負工事契約などでは、工事進行基準が多く採用されている。また、海外SIer等でも同様に広く採用されている。国内ソフトウェア受託開発事業においても、2009年4月をもって、工事進行基準が原則的に適用されることとなっている。

工事進行基準における進捗率算出方法主なものとしては、全体予想コストに対してすでに投入した費用割合進捗率であるとする、原価比例法などを挙げることができる。この際打ち合わせ等の投入コスト成果計れないものの分離や、開発保守を一体科した複合取引分割などが必要となる。また、開発着手前に全体コスト算出できる正確な見積もりを出す必要がある

工事進行基準に対して検収時に収益一括計上する方式は、工事完成基準呼ばれる

企業活動のほかの用語一覧
財務・会計:  経常利益  減価償却  キャッシュフロー計算書  工事進行基準  ROI  在庫  財務会計システム

工事契約に関する会計基準

(工事進行基準 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/27 19:39 UTC 版)

ナビゲーションに移動 検索に移動

工事契約に関する会計基準(企業会計基準第15号)とは、財団法人企業会計基準委員会(ASBJ)より公表された、工事契約に関する原則、基準である[1]。本基準の公表により、21年4月以降の工事施工者の工事契約にかかる収益及び原価に関して、工事の進行途上においても、原則として工事進行基準[注釈 1]の適用が強制されることとなった。

なお、本会計基準は、国際会計基準(IAS)第11号(工事契約)に相当する。

制度の概要

主な要点は以下の通りである。

  • 工事契約に関して、工事の進行途上においても、その進捗部分について成果の確実性[注釈 2]が認められる場合には工事進行基準を適用する。工事進行基準とは、工事全体の完成及び発注者からの請求前にかかわらず、工事の進捗度に対応する部分について収益計上を行う会計処理である。
  • 本会計基準は、仕事の完成に対して対価が支払われる請負工事のうち、基本的な仕様や作業内容を顧客の指図に基づいて行う工事契約が適用対象となる。したがって、ソフトウェアの開発業務は本会計基準の適用対象となるが、工事設計や労働のみを提供するような契約は本会計基準の対象とはならない。
  • 工事進行基準適用工事契約に関しては、決算日における工事進捗度[注釈 3]に対応する工事収益及び工事原価を計上する。
  • 工事進行途上に計上された工事収益に対応する未収債権(売掛金)については、金銭債権として取り扱い、貸倒引当金の設定対象となる。
  • 当該工事契約に対応する工事原価が工事収益を上回る(いわゆる赤字工事の)場合には、工事損失引当金繰入額(売上原価及び工事損失引当金(流動負債を計上する[注釈 4]

重要性の判定について

本会計基準の適用対象工事は、原則として工事進行基準の適用が強制されるが、工期のごく短い工事契約については、これまでどおり工事完成基準の適用が認められる。

税法との関係について

法人税法では、従来より一定の規模を超える工事契約[注釈 5]を対象に、工事進行基準の強制適用が求められており、会計と税法との間で収益(益金)上の認識差異が発生していた。一方、今回の工事契約に関する会計基準の施行に伴い会計上も工事進捗度に対応する収益が計上されることとなったため、従来存在していた収益(益金)上の認識差異は解消され、両者の認識は概ね一致することとなった。

注記の取り扱い

工事契約に関しては、次の事項を注記する。ただし、当期の工事損失繰入額に関する注記を除き、重要性が乏しいと判断される場合には、注記の省略が認められる。

  1. 工事契約に係る認識基準
  2. 決算日における工事進捗度を見積るために用いた方法
  3. 当期の工事損失引当金繰入額
  4. 同一の工事契約に関する棚卸資産と工事損失引当金がともに計上されることとなる場合には、その金額[注釈 6]

工事進行基準における収益認識基準について

工事進行基準は、収益の発生に焦点をおき、収益発生の事実に基づき収益を認識する発生主義に基づく会計処理である。一方、工事完成基準は、収益を計上する事実が確実となった時点で収益を認識する実現主義に基づく会計処理である。[注釈 7]

連結決算上の会計処理について

本会計基準は、専ら工事の施工者に焦点を当てた内容であるが、もう一方の当事者である発注者側では、工事完成時まで施工者に対する費用及び債務の認識を行わない。

そのため、グループ会社で親会社が発注者として子会社に請負工事を発注する場合、工事進行途上の工事契約について、連結決算上の債権債務の消去額は必ずしも一致せず、内部取引消去上の差額が発生してしまう(施工者である子会社が発注者である親会社に対して工事進捗度に対応する工事収益及び債権額を一方的に認識する状況となる)。

したがって、グループ間で工事契約を行う場合を念頭に、連結上の処理手順を決めておく必要がある[注釈 8]

脚註

注釈

  1. ^ 従来(21年3月以前)、工事進行基準については例外処理として認められていた会計処理であった。
  2. ^ 工事進行基準の適用要件である成果の確実性とは、当該工事契約に関する①工事収益総額②工事原価総額及び③工事進捗度の3点について、信頼性をもって見積もることができる状況をさす。なお、信頼性をもって見積りできない工事契約については、従来の工事完成基準を適用できるが、監査上の見地から、成果の確実性をもって管理できない場合、当該施工者の工事管理方法に何らかの問題があるのではないか、との疑念を持たれかねず、ひいては監査証明や顧客の信用(例えば、工事管理能力のなさから工事遂行能力への信用が失われる等)及び業績等への影響も及ぼしかねない点に留意する必要がある。
  3. ^ 工事進捗度の見積りにあたっては、原価比例法等により、各企業の実態に応じて合理的に見積ることが求められる。
  4. ^ 正常営業循環基準に基づき計上された売掛金に対応して、工事損失引当金を売掛金(流動資産)に対応して流動負債に計上するとともに、その繰入額を売上原価として計上する。なお、本会計基準の適用基準以前には、工事損失引当金を計上する旨を明記する会計基準等はなかったが、企業会計原則の注18等をふまえ、実務上引当金の計上が計上されてきた。今回の会計基準適用により、引当金計上がはじめて本会計基準に明記されたものである。
  5. ^ 具体的には、契約金額が10億円以上かつ工期が1年以上の長期大規模工事をさす[2]
  6. ^ 棚卸資産と工事損失引当金の両建表示の場合には、その旨と工事損失引当金額に対応する金額を注記し、相殺表示(純額表示)の場合にはその相殺額を注記する。
  7. ^ 逆にいえば、工事進行途上で進捗度に対応する収益を認識することは、発生主義の見地から要請される会計処理方法であるが、実現主義の見地からは、まだ工事全体が完成もしていないうちに収益認識するのは、工事完成という債権債務に係る具体的な裏づけが何らとれていないまま収益計上するに等しい、ということになる。
  8. ^ 具体的には、工事進捗度に対応して計上された親会社向け工事収益と債権額を連結決算上どのように取り扱うのか(親会社に合わせて子会社の収益認識を戻すのか、もしくは売上計上額を優先して親会社側の当該工事に関する費用認識を修正するのか、など)、また、当該工事が建設工事の場合、未実現利益の取り扱いをどうするのかという点が焦点となる。

出典

  1. ^ 「工事契約に関する会計基準」(企業会計基準委員会)https://www.asb.or.jp/asb/asb_j/documents/docs/kouji-keiyaku/kouji-keiyaku.pdf
  2. ^ 法人税法第64条:工事の請負に係る収益及び費用の帰属事業年度

工事進行基準

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/10 02:56 UTC 版)

建設業会計」の記事における「工事進行基準」の解説

工事進行基準は決算期末に工事進捗程度見積り適正な工事収益率によって工事収益一部当期損益計算書計上する方法である。

※この「工事進行基準」の解説は、「建設業会計」の解説の一部です。
「工事進行基準」を含む「建設業会計」の記事については、「建設業会計」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「工事進行基準」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ

「工事進行基準」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。



工事進行基準と同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「工事進行基準」の関連用語

工事進行基準のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



工事進行基準のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
株式会社シクミカ株式会社シクミカ
Copyright (C) 2024 株式会社シクミカ. All Rights Reserved.
IT用語辞典バイナリIT用語辞典バイナリ
Copyright © 2005-2024 Weblio 辞書 IT用語辞典バイナリさくいん。 この記事は、IT用語辞典バイナリの【工事進行基準】の記事を利用しております。
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの工事契約に関する会計基準 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaの建設業会計 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2024 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2024 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2024 GRAS Group, Inc.RSS