養殖の問題点とは? わかりやすく解説

養殖の問題点

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/01 07:53 UTC 版)

養殖業」の記事における「養殖の問題点」の解説

生産過剰 養殖技術確立され稚魚から成魚になるまでの歩留まり向上すると、生産過剰になり、成魚市場価格暴落する。ある魚種収益が高いと注目される多く養殖業者がその魚種取り扱おうとすることから生じ、また市場価格低迷しているからといって長期間蓄養すると餌代金無視できないので、安値でも出荷せざるを得なくなる。稚魚確保制約のある魚種場合一定のブレーキがきくが、幼生から養殖できる魚種場合、その歯止め利かない周辺の水質汚染 餌の過剰投与過密養殖等による周辺富栄養化水質汚染指摘されている。養殖は波や海流穏やかな内湾行われる事が多く海流による浄化作用起きにくい。近年では餌も改良され、また投餌技術進歩したため、食べ残し汚染少ない餌が用いられるようになっているまた、フグ養殖業者によるホルマリンたれ流し騒動かつてはあった。 品質への不信 日本消費者には天然物志向極めて強く、「養殖物何を食べさせているかわからない」という観念支配的である。また、抗生物質など投与物への不信根強いものがある。例えば、大日本水産会2003年度平成15年度)に行なった水産物中心とした消費に関する調査若年層対象調査)」では、養殖海水汚染問題魚病対策使用される抗生物質抗菌剤残留など、多く消費者が不安を抱いていることがわかった報告されている。 養殖業者では餌の改良など食味改良取り組み品質の向上に努めている。また、関係団体では消費者への広報活動等も行っている。なお、養殖業においては何を餌に食べているかわからない天然物より食べさせた餌のはっきりしている養殖物の方が安心」と主張している。 また、近年では遺伝子組み換え技術取り入れたアクアドバンテージ・サーモンのような養殖用品種に対す安全性への懸念論争起こしている。 天然資源の減少 完全養殖成功している海生魚類少なく天然未成魚捕獲し養殖しているのが実態である。養殖稚魚全て人工的に供給しており、自然界資源減少には与していないと思われがちであるが、実際にマグロ類、ウナギハマチなどでは自然界から稚魚捕獲し育て蓄養という手段養殖しており、クロマグロ極一部完全養殖されている他は、商業ベースでの完全養殖至っておらず、資源減少要因として非難されている。また、餌に使用されるマイワシ自然界から捕ったものであり、しかも人間食用よりも肥料養殖の餌としての消費の方が多いという問題もある。ブリテッシュコロンビア大学漁業センター2006年の調査によれば漁獲され海洋37%は養殖用の魚粉飼料になっているという(1948年には7.7%でしかなかった)。 トラウトサーモンのような肉食性養殖を1トン生産するのに、小魚を3トンから5トン必要とする。世界漁獲高の約5分の1が、ほかのの餌になる。 環境負荷 甲殻類養殖養豚養鶏以上にCO2排出量が多い。また、エビ養殖場にするために、世界最大CO2吸収源1つであるマングローブ林1980年から約150ヘクタール失われている。 温暖化による死亡率上昇 気温の上昇により、養殖のの死亡数が大幅に増加している。ニュージーランド最大キングサーモン会社では、2018年には死亡率10%であったものが、2022年には37%に増加した外国産水産物との競合 外国産の水産物多量に流入し、これらとの競合揉まれている。 遺伝的多様性が欠如した集団の形成 世代重ね交配していく事で、遺伝的多様性薄れ画一的個体群形成されていく。この、遺伝的な多様性欠け個体群感染症対す耐性弱くなっている場合があり、感染症蔓延しやすい。また、自然環境への放流後の環境対応力が薄れていくことが指摘されている。一方多様性維持できている個体群であれば感染免れ生存する個体があり全滅可能性低くできる。 外来種化と遺伝子攪乱 養殖用に他地域から持ち込まれ生物自然界逃げ出し外来種として野生化した事例多く周辺生態系破壊したり、在来種との交雑による遺伝子攪乱懸念されるまた、植物ほ乳類において一般的に行われている F1 と呼ばれる一代雑種の手法を養殖生産性成長速度)を上げるため、導入することがある。しかし、サケ科魚類一代雑種では致死性仔魚のみが誕生する組合せ有る。そのため養殖自然界逃げ出しさらなる交雑個体生じないようにするため、不妊化処理を施した生殖能力持たない3倍体メス(3倍体では繁殖力無くなったため天然であれば生殖の為に消費されていたエネルギー成長向けられるので短期間出荷可能な大きさ成長する)を作出することが多い。 福祉 から引き揚げられた最大250分間感覚を保つことができるがため、迅速な屠殺求められるOIE国際獣疫事務局)は、水生動物衛生規約の「養殖福祉」の中で、「養殖屠殺され前に気絶させられるべきであり、その気絶手段は、確実に即効性あり、か意識喪失から確実に回復しないようにすべき」と記載している。しかし実際には、そのまま冷蔵処理されるなど気絶処理が行われないケースがある。 養殖サーモンでは、海シラミ食べさせるために、ベラなどの掃除魚使用されるが、不適切飼育環境死亡率が非常に高く最大100%)、生き残ったとしても、最終的にサーモン生産サイクル最後に殺されてしまうことが問題提起されている。 天然魚への影響 種々の病気感染症寄生虫罹患した養殖が、周辺水域病気持ち込むことがあるサーモン養殖場ウオジラミ温床になる。天然サーモン稚魚は、海へ戻る際に養殖場のすぐそばを泳ぎ、数週間わたってウオジラミ大群さらされ、そのせいでやがて命を落とすものもいる。1999年にはスコットランド環境保護省による研究が、サーモン減少ウオジラミとの関連は「疑う余地なし」と結論づけている。 品質の劣化 米国農務省調査によると、養殖されアトランティック・サーモンは、天然ものの2倍の脂肪含み養殖ニジマス天然ものタンパク質量はほぼ同じだが、脂肪の量は最大79多かった

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