魚病 [Fish diseases]
これらの魚病が発生する環境的な原因(間接的原因)としては
(1)自然または人為的な海況や水質の物理・化学的変化
(2)環境水の循環・流動の悪化
(3)過密な増養殖による負傷や摂餌不足による栄養障害
(4)過剰な投餌による環境水の富栄養化(過剰な有機物の溶存)や栄養過多
(5)各種薬剤の過剰投与による薬害や耐性菌の出現
(6)保菌卵や保菌魚の導入(防疫体制の不備)などが挙げられる。
このような種々の環境変化で魚類に異常をきたし、魚類の体表、鰓(えら)、口、肛門あるいは傷口などから病原体が感染して発病する。また、保菌親魚あるいは保菌卵などによる感染(垂直感染)や保菌幼魚や成魚による感染(水平感染)もある。感染した魚類は病原体によって種々の組織・器官に障害を受けてついには死亡する。そこで適切な処置がなされないと魚病はさらに他の魚へ伝染して被害が拡大する。
現在、魚病対策として上記のような環境悪化を防止する種々の方法や防疫処置がとられているが、一部の魚病を除いてワクチンなどによる予防法の開発は今後の課題として残されている。ほとんどの場合、抗生物質や合成化学療法剤あるいは殺菌剤や消毒剤による処置がなされている。しかし、今のところ、とくにウイルス感染症に対する的確な薬剤はなく、細菌感染症の場合も薬剤耐性菌の出現などが予防・治療対策を困難にしている。また、水産増養殖では技術的にも多量の環境水と多数の魚類が対象であるから、その対策も容易ではない。したがって、魚病を防止するには魚類の飼育環境をよくすることが先決である。
魚病
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/08 21:19 UTC 版)
粘液胞子虫には魚類の病原体が多く、養殖を始めとする水産業に重大な経済的影響を及ぼすものも数多く知られている。以下に粘液胞子虫による魚病の例をいくつか挙げる。なお和名は特記なき場合2014年の和名目録による。 Myxobolus(シズクムシ) 多系統的な属であるが中でも M. cerebralis が最も有名であり、研究もよく進んでいる。これはサケ科魚類の旋回病の病原体で、軟骨組織に胞子を形成するため骨格が曲がりまっすぐ泳ぐことができなくなる。サケ科の様々な魚に感染するが、とくに養殖ニジマスにおいて深刻である。元々ヨーロッパに分布していたが、養殖用に輸出されたニジマスによって北アメリカに分布を広げ猛威をふるっている。釣り人も分布拡大に一役買っていると考えられている。他にコイの筋肉ミクソボルス症を引き起こすダエンシズクムシ(コイ筋肉ミクソボルス) M. artusなどが重要な病原体である。 Ceratomyxa(ミカヅキムシ) C. shasta は北アメリカの太平洋岸でよく見られるサケ科魚類の寄生虫。症状は魚種により様々であるが、消化管、内臓、筋肉などに影響を及ぼし、体重減や皮膚などの黒化に加えて致死的な場合もある。 Kudoa(クドア) 粘液胞子虫を始めとする原虫の研究者でありアメリカに帰化した工藤六三郎 (Richard R. Kudo) に献名された属。分子系統解析に基づき、胞子に4つ以上の極嚢があるもの全てを Kudoa 属に所属させることになった。筋肉組織にシストを多数形成する場合と、魚の死後にジェリーミートと呼ばれる筋肉融解を引き起こす場合とがある。世界的にはジェリーミートを引き起こすホシガタクドア K. thyrsites が有名である。日本では特に奄美クドア症の病原体 アマミクドア(奄美クドア) K. amamiensis が深刻で、奄美・沖縄水域の一部でブリの養殖をすると高い確率で感染し商品価値が失われる。2010年にヒラメ、マグロに寄生するナナホシクドア K. septempunctataを摂食したことによる食中毒事例が報告され、水産業上のみならず公衆衛生の観点からも注目されるようになっている。
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