薬剤耐性菌
抗菌薬・抗生物質などへの耐性を持ち、従来の処方が期待された効果を発揮しない菌の総称。薬剤耐性を持つ菌。
薬剤耐性菌は、菌が薬剤にさらされる中で耐性を持つことにより生じる。それまで有効とされた薬剤が十分な治療効果をもたらさなくなる、あるいは全く治療効果がなくなる場合もある。また、接触感染するため、院内感染などのリスクが高い。
複数の薬剤に対する抵抗性を持った菌は、特に「多剤耐性菌」と呼ばれている。多くの場合、薬剤耐性菌が生じても、他の抗菌薬・抗生物質を用いることで治療を行うことが可能であるが、多剤耐性菌が発生した場合、他の有効な治療方法が極めて限られてしまうことになる。
薬剤耐性菌は必要以上に多くの薬剤を服用するなどした場合に起こりやすいとされる。薬剤は多ければ多いほど良い、というような考え方をせず、必要最低限の分量を使用するべきとされる。
関連サイト:
薬剤耐性菌Q&A - 東京都感染症情報センター
多剤耐性菌情報 - 日本感染症学会
薬剤耐性菌感染症 - 国立感染症研究所 感染症情報センター
やくざい‐たいせいきん【薬剤耐性菌】
薬剤耐性菌 [Drug resistant bacterium(ia)]
薬剤耐性は細菌自体がもっている仕組みで、化学療法剤の過剰投与によっておこる場合が多いが、細菌の細胞質内にある薬剤耐性因子(DNA)であるプラスミド(R plasmid)が他の同種の細菌へ組み込まれて耐性菌になる場合もある。また、染色体性の自然耐性菌や染色体遺伝子の突然変異による耐性菌もある。
そのメカニズムはR プラスミドによって薬剤を不活化する酵素がつくられて薬剤耐性になる場合が多いが、薬剤の能動輸送が阻害され、薬剤分子中の活性基が変換される場合もある。
近年、抗生物質をはじめ各種の化学療法剤が医療分野や農林水産分野で、多量に使用されて、種々の薬剤耐性菌が出現して問題になっている。また、最近メチシリン耐性ブドウ球菌(Methicillin resistant Staphylococcus aureus:MRSA)やバンコマイシン耐性腸球菌(Vancomycin resistant Enterococcus: VREC)が出現して病院などで問題視されてきた。
薬剤耐性
薬剤耐性菌
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/13 19:59 UTC 版)
世界の抗生物質の70%が集中的に飼育されている家畜に供給されており、家畜に成長目的や病気予防目的で多用される抗生物質が耐性菌を産み出す原因になっていると指摘されている。例えばフルオロキノロン系抗菌剤は、大腸菌症の予防・治療のために家禽に広く使用されているが、家禽でのフルオロキノロンの使用がヒトのフルオロキノロン耐性カンピロバクター感染の増加を引き起こしたという理由で、米国FDAは2001年に家禽へのフルオロキノロン承認を1つ取り下げ、2005年にさらにもう1つの承認を取り下げた(アメリカ合衆国では1999年の時点でカンピロバクターの54パーセントが耐性菌になっていたといわれている)。2020年10月に、米国ノースカロライナ州東部の集約的養豚場の下流と上流の8か所から45の水サンプルと45の土壌サンプルを採取して抗生物質耐性遺伝子が行われた結果、すべての水と土壌のサンプルが、少なくとも1つの抗生物質耐性遺伝子に対して陽性の結果を示し、さらに、サンプルの92%は、3つ以上の異なる抗生物質耐性遺伝子に対して陽性という結果であった。 EUでは薬剤耐性菌対策として、2022年1月以降、家畜への抗生物質の予防的使用を原則禁止した。 2015~2017年度に実施された厚生労働省研究班の調査では、日本国産の鶏肉の59パーセントから抗生物質耐性菌が検出された。研究班の富田治芳・群馬大教授は「半数という割合は高い」と指摘し家畜や人で「不要な抗菌薬の使用を控えるべきだ」と訴えている。
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