性器(男)
『江談抄』第2-31 右大臣実資が上卿として陣の座にいて申し文を下す時、弾正弼顕定が紫宸殿の東軒下で陰茎を出した。蔵人範国はこらえきれず笑ったが、実資は事情を知らず、範国をきびしく咎めた〔*『今昔物語集』巻28-25に類話〕。
『詩語法』(スノリ)第3章 巨人族の娘スカジが、父を殺されたことの償いを要求して、アース神族のもとへのりこむ。ロキが山羊のひげと自分の性器とを紐で結び、紐の引き合いをしながら奇妙な踊りを見せると、怒り顔のスカジも笑い出し、神々とスカジは和解する。
*睾丸を見せて娘を笑わせる→〔笑い〕3cの『金玉医者』(落語)。
『太陽の季節』(石原慎太郎) 竜哉の家へ英子が来た時、竜哉は庭に立てられた離れの部屋へ彼女を案内した。竜哉は風呂から上がり、離れに上がって、障子の外から「英子さん」と声をかける。英子がふり向いた気配に、竜哉は勃起した陰茎を、外から障子に突き立てた。障子は音を立てて破れ、英子は読んでいた本を、力一杯投げつけた。
『蛙(かわず)茶番』(落語) 町内の素人芝居で、おっちょこちょいの半次が舞台番(=舞台脇にすわって客席を静める係)を引き受ける。半次は「尻をまくって派手な緋縮緬のふんどしを見せ、客席の娘たちをわーっと言わせよう」と、張り切る。ところが、風呂へ入ってふんどしをするのを忘れたまま、半次は尻をまくる。客席がどよめくので、半次は「緋縮緬を見て感心しているな」と喜ぶ。
『人間失格』(太宰治)「第一の手記」 「自分(大庭葉蔵)」は幼い頃から道化を演じ、周囲を笑わせようと必死の努力をしていた。ある時「自分」は、下男や下女たちを洋室に集め、インデヤン踊りをして皆を大笑いさせた。兄がそれを撮影し、出来上がった写真を見ると、踊りの腰布の合わせ目から小さいおチンポが見えていたので、家中がまた大笑いした。「自分」にとって、これは意外な成功だった。
★3.男性器を失う・傷つける。
『イシスとオシリスの伝説について』(プルタルコス)18 テュポン(=セト)は兄オシリスを殺し、その死体を14に切り分けてばらまいた。オシリスの妻イシスはパピルスの舟に乗って、切断された各部分を捜し、見つけるとそこに葬った(このため、エジプト中にオシリスの墓がたくさんある)。しかし、生殖器だけは魚に食べられてしまったので、見つからなかった。
『今昔物語集』巻20-10 信濃国の郡司の家に宿り、その妻に夜這いした九人の男たちは皆、幻術によって性器を失った〔*翌朝、性器は返してもらえた〕。
『トリストラム・シャンディ』(スターン)第5巻第17章 女中スザンナが5歳のトリストラムを椅子によじ登らせ、窓から小便をさせようとした時、窓枠が落ちる。血はほとんど流れなかったが、スザンナは「何も残っていないわ」と叫んで、逃げ出した。
『トリストラム・シャンディ』(スターン)第9巻 トリストラムの叔父トゥビーは、かつて戦争で鼠蹊部に重傷を負った。未亡人ウォドマンがトゥビーに思いを寄せるが、彼女は、トゥビーの鼠蹊部のどの部分に傷があるのかが大いに気がかりで、結局結婚話は立ち消えになった。
『二人兄弟の物語』(古代エジプト) 兄嫁を犯そうとしたと疑われたバタは、兄アヌプの前で、自らの性器を葦のナイフで切り取り、河に投げる。ナマズがそれを呑みこみ、バタは力が萎え弱々しくなる。バタは兄と別れて杉の谷へ行く。
*→〔伯父(叔父)〕6の『パルチヴァール』(エッシェンバハ)第5巻・第9巻・第16巻。
*→〔去勢〕5の『パルチヴァール』(エッシェンバハ)第13巻。
『古今著聞集』巻16「興言利口」第25・通巻547話 嫉妬深い妻と別れようと考えた男が、亀を1匹買い、首を3~4寸引き出して切り取っておく。妻と喧嘩になった時、男は「すべてはこれがあるため」と、男根を切るふりをして、亀の首を投げ出し、帰って行く。数ヵ月後に男が訪れると、妻は股のあたりに黒布を着けており、「故人(=男根)のための喪服です」と言った。
★5.美しい男性器。
『子不語』巻19-503 少女が窓から外を見ていたら、美少年が小便をしに来た。その陰茎は紅くて新鮮で玉(ぎょく)のようだった。少女は、「男性器は皆あんなふうなのだ」と思い、あこがれる。しかし少女が嫁いだのは菜売りの周某という男で、顔もまずく、陰茎も小さく汚かった。少女は悲しんで病気になり、そのわけを口に出して言うこともできず、死んでしまった。
『古事記』上巻 高天原からオノゴロ島へ、イザナキ・イザナミ2神が降りて来る。イザナキがイザナミに「汝の身体はどのように出来上がったか?」と問う。イザナミは「私の身体には、出来上がらずに合わさっていない所があります」と答える。イザナキは「私の身体は出来過ぎて、余った所がある」と告げ、「私の身体の余った所を、汝の身体の合わさっていない所に刺し入れて、国土を産もう」と提案する。
*イザナキ・イザナミ2神が互いの身体の凹凸を合わせて合体するのは、切り離された球状人間が互いの半身を求め合う物語を連想させる→〔人間〕1bの『饗宴』(プラトン)。
『なぜ神々は人間をつくったのか』(シッパー)第8章「性器の欠落」 「人作りの魔術師」は、自分そっくりの人間を2体作ったが、それだけでは人間が増えていかないことに気づいた。魔術師は一方の人間の股間を少し引っ張り、もう一方には爪で小さな割れ目を作った。それから、彼らがすべきことを確実になすように、両方に快感を与えた(アメリカ、ピマ族)。
『なぜ神々は人間をつくったのか』(シッパー)第8章「性器の欠落」 神はアダムとエバ(=イヴ)を作った後、アダムの身体には土塊をくっつけ、エバの下の部分には斧を当て、2人がなすべきことをする準備をととのえた(ブルガリア)。
『南島の神話』(後藤明)第4章「日本神話と南島世界」 昔、男神アゴクラヤンと女神タリブラヤンが、台湾の東海の孤島に天降った。2人が芋を焼こうとうずくまった時、女神は、男神の下半身の長く突き出たものに気づいた。男神は、女神の下半身の窪みに気づいた。そこへ、つがいのセキレイが飛んで来て腰を振ったので、2神は交合の方法を知り、多くの子孫を産んだ(台湾、アミ族)。
★7.男も女も同じで、ほんの少しだけ差がある。
『アダム氏とマダム』(キューカー) 20世紀半ばのニューヨーク。検事補アダムと弁護士アマンダは、仲の良い夫婦だった。しかし裁判では、敵味方に分かれて争わねばならぬこともある。アマンダは男女同権の堂々たる論陣を張って、夫アダムを苦しめる。でも、裁判が終わって夜になれば仲直りだ。アマンダは「男も女も同じだわ。あっても僅かな差よ」と言う。アダムは「楽しいのはその差だ」と笑い、2人はベッドに入る〔*原題は "Adam's Rib" 〕。
『デカメロン』(ボッカチオ)第3日第10話 若い聖者が勃起した性器を「これは悪魔だ」と言って、処女アリベックに見せる。聖者は「悪魔を、あなたの身体にある地獄の中に閉じ込めることが、神様への奉仕になる」と説いて、アリベックと交わる。何度も交わりを繰り返すうちに、アリベックは「神様への奉仕は、本当にこころよいものだ」と感じるようになった。
*男性器の身代わり→〔身代わり〕4bの『風流志道軒伝』巻之5。
*落ちそうで落ちない睾丸→〔落下〕6bの『パンチャタントラ』第2巻第6話。
*男女が性器を隠す→〔裸〕3。
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