交通機関の割引
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/08 03:50 UTC 版)
「精神障害者保健福祉手帳」の記事における「交通機関の割引」の解説
鉄道事業者においては、JR・大手私鉄など、身体障害者・知的障害者(身体障害者手帳や療育手帳を所持する精神・発達障害者を含む)に対しては割引を行ってる事例が大半であるが、精神障害者(精神障害者保健福祉手帳のみの所持者及び手帳非所持者)に対しては、後述の西鉄を除く大手私鉄では割引を行っていない上、他の事業者は地域によって導入に差が出ている。 東海旅客鉄道(JR東海)では、2008年(平成20年)度に国土交通省が行った業務監査において、「福祉割引(障害者割引)は日本国政府の福祉政策の一環として、行政の費用負担で行われるべき」と回答した。それから10年以上が経過し、同じ地域の名古屋市交通局や名鉄バス、長距離においては競合となる航空会社での割引が開始されているが、JRは方針転換していない。 ただし愛知県名古屋市在住の障害者(身体、知的も含む)が、名古屋市内の駅同士(東海道本線南大高~名古屋、関西線名古屋~春田、中央西線名古屋~新守山)を利用する場合は、2022年(令和4年)2月より地下鉄などと同様、名古屋市の負担で無償化(地下鉄と異なり一度立て替える必要があるが後日全額返金される。)している。名古屋鉄道(名古屋市内各線)、近畿日本鉄道(名古屋線近鉄名古屋~戸田)も同様である。 2017年(平成29年)4月1日からは、大手私鉄では初めて西日本鉄道が筑豊電気鉄道や西鉄バス(系列会社も含む)とともに精神障害者割引を導入し、同日福岡県に路線網を持つJR九州バスや昭和バス(佐賀県内では導入済み)・堀川バス、福岡市交通局(福岡市地下鉄)も西鉄と同様に割引制度を開始している。一方、中小私鉄や第三セクター鉄道=例として近年開業した新幹線/在来線分離第三セクターの大半、富山地方鉄道、三陸鉄道、松浦鉄道、熊本電鉄など徐々に対象とする事業者が増えている。 2023年(令和5年)4月1日より近畿日本鉄道でも精神障害者割引が実施される予定である。(ただし等級別の介護者の有無、距離制限などは現時点では発表されていない。) バス輸送に関しては、2012年(平成24年)7月31日に改定された「一般乗合旅客自動車運輸事業標準輸送約款」24条に「精神保健及び精神障害者福祉に関する運賃を割引する」旨明記された。但し運賃自体は、各運輸局に届け出た上限運賃に則るものに従うため、罰則規定は無い。 精神障害者全体への割引制度がないが、その市の市民(都民)である精神障害者(精神障害者手帳所持者・療育手帳や身体者手帳の場合は条件が異なる)に対しては何らかの証明書などを交付し、運賃を無料あるいは割引とする例もある(例:京都市交通局)。仙台市交通局は、2021年3月31日まで宮城県在住のみ割引の対象(ただし身体、知的と異なり定期券の割引は対象外で普通乗車券のみ対象)としていた。現在は居住地問わずに精神障害者は割引対象である。 地域独自のICカードでは自動的に割引運賃を引き去る機能のある障害者用カードを発行するものがあり、精神障害者保健福祉手帳を提示することで購入できるが、多くのカードにおいて有効期限が1年あるいは当初翌々年の誕生日、以後毎年など短期間で更新するケースが多い。交通系ICカード全国相互利用サービス加盟のICカードについては、中京圏各社で導入されている「manaca」と西日本鉄道などで導入されている「nimoca」、福岡市交通局の「はやかけん」では精神障害者保健福祉手帳の提示で購入できる障害者用カードがあるが、いずれも導入各社の障害者割引制度との関係で、利用できる事業者は限定される。(身体、知的も同様の運用である。) 都市間高速バスの割引は、他交通機関と比較した考えになったり行政の助成外となるため、加越能バスの名古屋=高岡(氷見)線、同社と北陸鉄道バスの金沢=砺波・高岡線、ブルーライナー、平和交通及びJRバス関東、京成バスの「エアポートバス東京・成田」などごく一部に限られている。高速バス業界では精神障害者への割引の縮小が顕著で、東京バスグループは、2019年12月31日、オリオンバスは2022年1月1日に割引を撤廃した。 また、鹿児島県のいわさきコーポレーション(1級=介護者を含む、2級=本人のみ、3級=対象外)等のように、等級別で割引に差異があるため同社と共同運行している鹿児島空港=市内便など共通運行の場合、乗車事業者(南国交通・鹿児島市営バス)によって、扱いが異なる場合もある。 なお、相模原市・堺市以外の政令指定都市では、静岡市や広島市などで手帳発行自治体に問わず一律の割引措置を行うか、在住者に自治体内の無料(割引)パスの交付、或いは双方の措置をとっている。また名古屋市においては、手帳所持の市民に市営交通無料パスを配布した上、2015年(平成27年)10月1日から名鉄バス、2016年(平成28年)4月1日から千葉市(モノレール・県内のJRバス関東以外の一般バス)に続き、市が主に出資する全ての交通機関(地下鉄・市バス・名古屋ガイドウェイバスガイドウェイバス志段味線・あおなみ線)で全都道府県・全等級の精神障害者保健福祉手帳所持者に対して、半額割引を行っている。(地下鉄は日進市、ガイドウェイバスは春日井市、市バスは両市を含む9市町に跨がるがいずれも対象である。相互直通運転を行っている名鉄豊田線、犬山線、小牧線は対象外、市も僅かに出資しており、藤が丘駅にて地下鉄と乗り換えが可能なリニモ(筆頭株主は県)は介護者同伴1級のみ対象(身体、知的も介護者同伴の第1種のみ対象)の為注意が必要である。) 船舶運賃については、シルバーフェリー、太平洋フェリー、新日本海フェリー、商船三井フェリー、小笠原海運、東京九州フェリー、名門大洋フェリー、阪九フェリー、四国オレンジフェリー(東予~大阪)、松山・小倉フェリー、フェリーさんふらわあ、マルエーフェリーなどの中長距離フェリー事業者が、2等船室相当額に対して割引を行う事例がみられるほか、短距離の航路(市営船含む)も割引が実施されている地域がある。 航空運賃については、2016年以降に国土交通省と航空各社の間で精神障害者への割引導入に向けて協議し、準備を進めていた。日本航空とJALグループ各社が2018年(平成30年)10月4日予約・搭乗分より、天草エアラインが同年12月22日搭乗分(同年10月22日予約分)より、全日本空輸・ソラシドエア・スターフライヤー、AIR DO が2019年1月16日予約・搭乗分より、フジドリームエアラインズが同年3月31日搭乗分(同年1月31日予約分)より、東邦航空が同年6月1日予約・搭乗分より従来から設定していた国内線の身体障がい者割引が、新たに精神障害者も対象となった。新中央航空も2020年10月1日より身体障害者割引運賃を障がい者割引運賃に変更し、精神障害者も対象とした。同伴者も1名に限り、同様の割引が適用となる。 障がい者割引は、区間により割引率が異なる。先得やANAスーパーバリューのような早期購入割引や株主割引、パッケージツアーと比較すると割高になる場合が多い(繁忙期はこの限りでない)一方で、障がい者割引の場合は、早期購入割引等やパッケージツアーのように発売できる座席数や予約変更に制限がなく、空席があれば片道から購入可能で、且つ予約変更可能であるのが利点となる。国際線および格安航空会社(LCC)、一部の離島発着便の場合は、従前から身体障害者・知的障害者・精神障害者を問わず障害者割引自体が存在しない。更にLCCの場合は、小児運賃についても存在しない。 NEXCO管轄の高速道路・有料道路、都市高速などの地方道路公社の多くでも精神障害者向けの割引は行われていない。2021年7月19日~2021年8月9日の東京オリンピック期間中と2021年8月24日~2021年9月5日の東京パラリンピック期間中に首都高速道路が行う1000円上乗せは通常割引の対象とならない精神障害者も事前申請により免除となる。(新型コロナウイルス感染症の流行拡大に伴い東京オリンピック・パラリンピックが364日延期した為対象期間が変更された。) タクシーは地域、会社により異なり割引が行われる場合10%引となる。中には同じ地域でも会社により異なる場合もある。また運転手の知識のなさゆえに本来割引が受けられる場合でも拒否されたり逆に対象外であるにも関わらず身体、知的の手帳と誤認するなどし割引を適用されたりするケースも多く混乱の原因となっている。他の交通機関と異なり歩合給などの制度が影響しクレジットカードでの支払いとは併用出来ないなどと意図的な不正拒否も行われることもある。 上記の問題に対し、国が主体となって3障害一律の割引を行なうために動くべく、2016年3月頃から各地の都道府県議会で「障害者差別解消法に基き、精神障害者に対しても同一の交通機関の割引を行う」決議が全会一致でなされている。 2021年6月11日、赤羽一嘉国土交通大臣から国土交通省内各局に対し、「真の共生社会実現に向けた新たなバリアフリーの取組」に関する大臣指示を行った。その中で、精神障害者割引の導入促進に関して、「本取組の具体的な方向性や目標等を早期に定め、その実現に向けた検討等を開始すること。」を指示内容として明記している。 なお療育手帳では、全日本手をつなぐ育成会等、関係諸団体の運動の結果、JR運賃や鉄道料金の割引制度が設けられた。
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