ヴォルスンガ・サガ
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『ヴォルスンガ・サガ』(Völsunga saga)とは、北ヨーロッパのサガ(伝説物語)である。現在はアイスランド語のものが伝わっており、1260年ごろにアイスランドで書かれたとも、それ以前にノルウェーで書かれたものが翻訳されて残ったともいわれている[1]。ニーベルンゲン伝説がその大元となっている。
ヴォルスングの一族の起源と衰退を描いており、シグルドとブリュンヒルドの物語、およびブルグント族の滅亡に関する記述も含んでいる。
『ヴォルスンガ・サガ』の大部分は、『古エッダ』の『シンフィエトリの死について』などに見られるような古代の伝説に基づいている。この伝説は、古くは西暦1000年ごろに作られたとされるスウェーデンのラムスンド彫刻画などに見られる。しかし、その原型はずっと古く、5世紀から6世紀の間に中央ヨーロッパで起こった実際の出来事に基づいているのではないかと考えられている。
中高ドイツ語で書かれた叙事詩『ニーベルンゲンの歌』は、その大部分を中世初期からドイツで広く知られていた古い物語から取っており、『ヴォルスンガ・サガ』とはその祖を同じくしているものと考えられている。しかし『ニーベルンゲンの歌』において、その伝説の骨子は中世風の設定に作り直されている。
脚注
- ^ 『アイスランドサガ』p.853
日本語訳
- 『ゲルマン北欧の英雄伝説 ヴォルスンガ・サガ』、菅原邦城訳、東海大学出版会、ISBN 4-486-00501-5、1979年。
- 『アイスランドサガ』、谷口幸男訳、新潮社、ISBN 4-10-313702-9、1979年。
関連項目
外部リンク
- ヴォルスンガ・サガ - Volsunga Saga(日本語)
- ニーベルンゲン伝説(日本語)
- Fornaldarsögur Norðurlanda(古ノルド語)
- Völsunga saga (古ノルド語) - 以上2つは、ノルウェーの「Kulturformidlingen norrøne tekster og kvad」より。
- Read the Volsunga Saga Here(英語) - ウィリアム・モリス と Eirikr Magnusson による翻訳。
- Timeless Myths: Volsunga Saga(英語)
- The Story of Sigurd(英語) - Andrew Lang による改作。
ヴォルスンガ・サガ
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「ジークフリート」の記事における「ヴォルスンガ・サガ」の解説
『ヴォルスンガ・サガ』は、『詩のエッダ』と並んで、北欧・大陸の双方においてシグルズの物語が最も詳細に記載された文献である。『詩のエッダ』のプロットに非常に近い筋をたどるが、著者が『詩のエッダ』を知っていたと示すものはない。著者はノルウェーで働いていて『シズレクのサガ』を知っていたと考えられており、したがって『ヴォルスンガ・サガ』は13世紀後半に作られたとされる。このサガでは、シグルズの物語の舞台をドイツでなくスカンディナヴィアとしている。このサガには続編『ラグナル・ロズブロークのサガ』があり、ラグナル・ロズブロークがシグルズとブリュンヒルドの娘アスラウグと結婚するというエピソードが加えられている。 『ヴォルスンガ・サガ』によれば、シグルズはシグムンド王とヒョルディース妃の間に生まれたとされる。王は恋敵であったリュングヴィと戦って死んだ。シグムンドの斃れた戦場に一人残されたヒョルディースは、そこでアールヴ王に見初められ結婚することになるが、彼はシグムンドの遺品である毀れた剣を回収する。幾ばくもせずヒョルディースはシグルズを生むが、シグルズはヒャルプレク王の宮廷に仕える鍛冶師レギンのもとで育てられた。ある日、レギンはシグルズに、ファーヴニル竜の守る財宝の話を聞かせる。それはドヴェルグのオトの死への賠償としてオーディンとロキとヘーニルから支払われたものであるという。シグルズはレギンに、竜を屠るための剣を作るよう頼むが、作られた剣をシグルズが鉄床に打ちつけるとどれも折れてしまった。最後にシグムンドの毀れた剣を打ち直してもらい、シグルズがその剣で試し切りをしてみると、鉄床は真っ二つになった。レギンは財宝の分け前を要求するが、シグルズはまず父の仇を取ることに決める。シグルズはオーディンの助けを得て、兵を引き連れてリュングヴィを攻め、殺す。 その後、シグルズは竜を殺すべく竜の住まうグニタヘイズに向かい、ファーヴニルの通り道に掘った穴に身を隠した。ファーヴニルが上を通ったとき、シグルズは下からその心臓を一突きにして殺した。レギンが現れ、竜の血を飲み、竜の心臓を料理するようシグルズに言う。シグルズは焼け具合を確かめるために指で心臓を触り、やけどしてしまう。指を口に入れたシグルズは、鳥の声が分かるようになる。鳥たちは、レギンがシグルズを殺そうとしていて、レギンを殺せばシグルズが財宝を独り占めしてブリュンヒルドのところに行けるのに、などと話している。シグルズはこの言葉のとおりにレギンを殺し、財宝を得て、ブリュンヒルドの眠る地に向かう。彼女は楯に囲まれ、肌から直接生えているかのような鎧を着て眠っていた。シグルズは鎧を切り裂いて脱がし、ブリュンヒルドを目覚めさせる。ブリュンヒルドとシグルズは結婚の約束をし、ブリュンヒルドの義理の兄であるへイミル王の宮廷でも改めて結婚を誓う。 その後、シグルズはギューキ王の宮廷を訪れる。妃グリームヒルドに忘れ薬を飲まされたシグルズは、ブリュンヒルドとの婚約をすっかり忘れてしまい、ギューキ王の娘グズルーンと結婚することに同意してしまう。シグルズは、ギューキ王の息子グンナルとホグニと忠義の誓いを結び、義兄弟となる。その間に、グリームヒルドはグンナルを説得してブリュンヒルドと結婚させようとし、ブリュンヒルドの一族もそれに同意する。しかし、ブリュンヒルドは、城を廻る炎の壁を越えられないのならばグンナルと結婚しないという。グンナルはこれをなすことができず、グリームヒルドから教わった呪文で互いの姿を交換する。グンナルの代わりにシグルズが炎の壁を越えると、それができるのはシグルズだけのはず、とブリュンヒルドは驚く。シグルズは三晩ブリュンヒルドと寝床を共にするが、二人の間に剣を置いて過ごす。ブリュンヒルドとグンナル、グズルーンとシグルズは、同じ日に結婚する。 ある日、川で水浴びをしているグズルーンとブリュンヒルドが、お互いの夫のどちらが高貴かでもめる。グズルーンはブリュンヒルドに、グンナルとシグルズによるぺてんを暴露し、その証拠としてシグルズがブリュンヒルドとの初夜にくすねた指輪を見せる。激高したブリュンヒルドは復讐を求める。ブリュンヒルドに話をしに行ったシグルズは、お互いに愛を告白し、グズルーンと離婚してブリュンヒルドと結婚すると提案する。ブリュンヒルドはそれを拒否し、グンナルにシグルズを殺すよう求める。グンナルは、シグルズと義兄弟になっていない弟グットルムにシグルズを殺すように言う。グットルムは狼の肉を食べ、シグルズの寝室に押し入り、剣で背中を突き刺す。シグルズは反撃してグットルムを殺し、グンナルを裏切ってなどいないことをグズルーンに伝え、息絶えた。ブリュンヒルドは直後に自殺し、二人は同じ炎で荼毘に付された。
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