ロワー・サーヴァント(下級使用人)
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「家事使用人」の記事における「ロワー・サーヴァント(下級使用人)」の解説
フットマン(従僕) バトラーの直接の配下にいた。仕事は、夏は朝6時半から冬は朝7時から始まり、夜は家族が寝るまで働いた。主人達が寝るのがどんなに遅かろうと、朝の勤務開始時間には変わりはなかった。忙しい夜は一睡も出来なかったらしい。 仕事内容はランクによって異なり多岐にわたる。馬車に乗った女主人の世話、馬車の供回り(主人が馬車で出かける時に、シークレットサービスのように常に駆け足で伴走した)、夜間の明かり持ち、ブーツ磨き、石炭運び、ランプや蝋燭立ての世話、テーブルでの給仕、玄関で主人一家の帰りを待ち、ベルへの応答やパーティーの手伝いなどをした。また、主人を起こしたり、衣類にブラシをかけて揃えておき、夜会服を整えていつでも主人がディナー・パーティーに着ていけるようにした。午後の4時半には紅茶を、午後6時には酒類の用意をし、ディナーが終わると紳士達の部屋の整理をし、衣服にブラシをかけ、夜10時半か11時には客間に酒を運んだ。 スチュワード・ルーム・フットマン 家令室(ランド・スチュワードの仕事部屋)の給仕。スチュワーズ・ボーイ(給仕見習い)と同じだと思われる。アッパー・サーヴァント達が食事の時に給仕した。 スクールルーム・フットマン 勉強室付き従僕。 アンダー・バトラー 副執事。執事の助手。執事の仕事を手伝った。 マスター・オブ・ザ・サーヴァンツ・ホール サーヴァンツ・ホールの責任者。 ペイジ・ボーイ(小姓) 主人の雑用を行う。 ホール・ポーター 荷物運びを行った。 ホール・ボーイ キッチン・ポーター オッド・ジョブ・マン 便利屋もしくは臨時雇いの人間を指す。食材を運んだり、力仕事を含む雑用をしていた。 セカンド・シェフ アッパー・サーヴァントであるヘッド・シェフ(コック)の助手。 セカンド・ベイカー アッパー・サーヴァントであるヘッド・ベイカーの助手。 ヘッド・キッチンメイド 台所の女中頭。キッチンメイドを管理・統括していた。 ファースト・キッチンメイド 第一女中。コックの下で料理の手伝いをする女性使用人。ファースト・キッチンメイドの仕事は毎朝7時までにキッチンに入り、鳥の翼と足を胴体に串で固定する。また、料理の手伝いや様々な料理の下拵え、アイスクリーム、ソースを作り、子供部屋に出す食事や使用人の食事も作った。年収は19世紀末で20-28ポンド(約48万-67万2000円)だった。 セカンド・キッチンメイド 第二女中。コックの下で料理の手伝いをする女性使用人。夏は朝の6時から、冬は朝の6時半から働き始めた。仕事内容は、朝はキッチンテーブルの支度から始まった。テーブルの中央にある真鍮の粉ふり器に粉と砂糖を縁まで入れ、塩入れにも塩をしっかり補充し、さらにコックが料理の付け合せに欲しいとも思った場合にはコックがすぐに取れるように生野菜とハーブの載った皿を用意しなければならなかった。また、コックとヘッド・キッチンメイドが作業するためのまな板を2枚、テーブルの両側に置く必要があった。そしてまな板の脇には白い布を置き、その上にはコックが朝食を調理し、盛り付けをするために必要なスプーンとナイフも並べた。使用したスプーンやナイフは食器洗い場へ急いで片付けて洗い、コックのスプーンとナイフの一式は食事の都度交換するか付け足した。 他には、小麦粉の準備、イーストを泡立つまで温める、パンを焼く底浅鍋に油をひいてファースト・キッチンメイドがいつでもパンを焼けるように準備(ファースト・キッチンメイドが忙しい時は代わりにパンを焼いた)、アイスケーブの支度、鰻の皮はぎ、また焼肉料理の時は50ポンド(約22.7kg)もの牛肉の前肢をレンジの火へ運んだ。 年収は19世紀末で14-22ポンド(約33万6000-52万8000円)だった。 2-3年経つと他の屋敷のファースト・キッチンメイドの職に応募して昇進することもできた。 サンドリー・ヴェジタブル・メイド(ヴェジタブル・ガール) 野菜係の女性使用人。野菜の下準備をした。 スカラリー・メイド(皿洗い女中) 大抵の場合、女性が初めて屋敷に奉公に行くと、最初に就く仕事は下っ端のハウスメイドか皿洗い女中だった。従って、彼女達の年齢は12-3歳程だった。 持ち場は食器洗い場で、仕事内容はキッチン道具のこすり洗い、床や棚磨きから鳥の羽根むしり、猟獣の皮を剥ぐといった雑用までもこなした。またキッチンメイドの数が少ない時は野菜を洗い調理した。就業時間は夏は朝の6時から、冬は朝の6時半から働き始め、夜は11時になっても鍋を洗っていた。年収は1880年で12-18ポンド(約28万8000-43万2000円)だった。 こんなに大変な仕事でも労働者階級の親たちにとって、結婚前の娘が皿洗い女中として働くことは家事を覚えるので良い花嫁修業と見なされていた。 皿洗い女中の服装は胸当てのついたオランダ・エプロンにたくしあげることができる袖付きの服(生地は丈夫なオックスフォード地)。それに厚い靴かブーツを履いていた。髪型は編んで帽子の中に収めていた。 1-1年半後にセカンド・キッチンメイドへ昇進できる機会があった。 ヘッド・スティ・ルーム・メイド 食料品貯蔵室の責任者。ハウス・キーパーの仕事を助け、あてがわれた自分の部屋に陶器類を保管した。ハウス・キーパーの部屋を掃除し、暖炉に火をつけるために毎朝6時に起きた。 スティルーム・メイド ハウスキーパー(もしくはヘッド・スティ・ルーム・メイド)の下に就き、レンジや菓子製造用のオーブンがある食品室で働いていた。ここでハウスキーパーと共にジャム、ケーキ、ビスケット、紅茶、コーヒー、清涼飲料水、屋敷で採れた果物や花々の砂糖漬けなどを作った。 ハウスメイド 一般女中とも言われている。仕事範囲は多岐に渡り、使用人が食事や休息をとるサーヴァンツ・ホールで食事の手はずを整え、時には主人役も務めた。また、家具を磨くなど館全体を清潔にし、様々な雑用をこなした。部屋係や食卓係のメイドはその立場にふさわしい名前を持つべきものとされていた。本名はどうあれジェーン、メアリ、イーディスといったメイドとしてふさわしい名前を屋敷では名乗った。ハウスメイドのうち一番序列の高い(=最先任の)メイドをヘッド・ハウスメイド(メイド長)と呼んでハウスキーパーの代行を担わせることもある。 メイド・オブ・オールワーク(雑役婦) 中流以下の家に雇われる、家事全般を行うメイド。一定以上の規模を持つ館ではメイドも職域によって分業がなされているが、多数のメイドを雇う余裕のない家庭では1~2名のメイドにあらゆることをさせるのが常だった。 メイド・オブ・ビトゥイーン メイド経験のない年若い少女などが見習いとして館に入る際に用いられることが多かった立場。ビトゥイーン(~と~の間の意)とは「ハウスメイド」と「キッチンメイド」の間という意味であり、仕事を覚えるために双方の職務を兼務した。二つの職域をこなすため仕事量は膨大で、見習いという立場のため給金は安かった。 パーラー・メイド 食卓を整え、給仕を行い、訪問者の到来を告げたりした。 洗濯女中 その名の通り洗濯係。館一家の洗濯要員と使用人の衣類を洗う要員のランクに分かれていた。 ミルク・メイド(酪農婦) キッチンメイドとほぼ同じ仕事をこなした。 コーチマン(御者) アウトドア・スタッフの中では最高位を占めていた。馬が50-60頭もいるような大きなカントリー・ハウスでは2人の御者がおり、御者の助手であるアンダー・コーチマンが数人、その他大勢の馬丁がいた。 アンダー・コーチマン コーチマンの助手。 グルーム(下男) 馬小屋の管理や飼っている馬の世話をする。 ポーター 領地のゲート・ハウスで入場者をチェックしたり、鍵をかけたりする。 庭師 植物の世話や館内の装飾をした。また訪問客をガイドする必要があるため、礼儀正しいマナーを身につけていなければならなかった。 パーク・キーパー 主に領地内の鹿の世話をする。 ゲーム・キーパー 狩の規則を知っていて、違反を咎める審判の役割をする。 ランプ・ボーイ/ブーツ・ボーイ ハンティング時、汚れた猟の装具一式を次回に着用する時のために新品同様になるまで洗濯し、手入れをした。 ポスティリオン 騎手。馬の乗り手。 ヤード・ボーイ 雑役夫。 プロヴィジョン・ボーイ 食糧準備係。 フット・ボーイ 家庭用菜園管理者 機械工 火工 電話番 外線を直接受けて取り次ぐ。 メッセンジャー 伝令。伝言や手書きの書簡を相手先へ届けに行ったり郵便物の発送をする。 夜警 厩舎要員 自動車・ガレージ要員 運転手など。 体育室・ゴルフコース要員 窓拭き人夫頭 窓拭き人夫 吟遊楽人、トランペット吹き、鷹匠、道化師 いわゆる「芸能人」。祝宴の舞台で活躍した。
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