アッパー・サーヴァント(上級使用人)
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「家事使用人」の記事における「アッパー・サーヴァント(上級使用人)」の解説
ランド・スチュワード 全使用人の長。主人の領地の管理をする役目を負い、農地を賃貸し、借地料を徴収し、境界線を調査し、借地人の間の争いを調停し、領収・支出の細かい記録を保管する。屋敷にランド・スチュワードがいない場合はバトラーが兼任していた。 ※スチュワードは日本語訳では「家令」又は「執事」と翻訳される場合が多い。従って、スチュワード、バトラー共に執事にされ、区別が困難な場合がある。 ハウス・スチュワード 館の管理や、男性使用人の雇用や解雇を行った。役割上、堂々とした風采の持ち主が多かったらしい。屋敷にハウス・スチュワードがいない場合はバトラーが兼任していた。 バトラー バトラーを参照。 マスター・オブ・ザ・ホース 厩舎の責任者。1825年頃にはカントリー・ハウスからほとんど姿を消した。 レディーズ・メイド 侍女。別名ウェイティング・ウーマン。女主人の寝室での世話、衣装選びや着付け、髪結いや旅行の準備など全ての事柄に気配りをした。また、女主人がディナー・パーティーや舞踏会に出席すると夜遅くまで起きて待っていなければならなかった。 一般的にレディーズ・メイドはフランス人女性が良いとされ、フランス人でなくてもフランス人女性のような名前を名乗らされる場合もあったらしい。 女性使用人の中でも別格の位置付けだった。ただし、女主人が老齢になると職を失うかもしれないという不安があった。この職に就くには針仕事や帽子作りの技能を要した。特典として女主人のお下がりの服を貰うことが出来た。 ジェントルマン・イン・ウェイティング 侍従。レディーズ・メイドの男性版。1825年頃にはカントリー・ハウスからほとんど姿を消した。 ハウスキーパー(家政婦長) ナニー、ガヴァネス、レディーズ・メイドの三者を除く、台所担当及び全ての女性使用人を管理・統括した。また食料品貯蔵室の鍵を預かり管理もしていた。リネンと高価な陶器の管理も任されており、自分の部屋と鍵がかかる戸棚とシンクを備えた小さな陶器部屋とは繋がっていた。私室は仕事部屋も兼ねていた。そこには奥行きの深い高棚と床から天井まで届く戸棚があり、保存食品、ピクルス、スパイス、極上の食品、菓子、砂糖、ビスケットが置かれていた。尊敬の印として独身であっても常に「ミセス」の冠付きで呼ばれていた。 クラーク・オブ・ザ・キッチン(厨房係) 食糧を調達し、肉屋、パン屋、食料品雑貨屋と値段を交渉する。ハウス・スチュワードがこうした商人への支払いをあてがう手持ち資金を支出し、注文はコックから定期的に出された。 ヘッド・シェフ/コック 一般には女性のコックが雇われていたが、大きな屋敷には男性のシェフがいた。男性のコックは女性スタッフに技術を教えるため短期間だけ採用されていることもあった。女性の料理人はハウスキーパー同様、独身であっても常に「ミセス」の尊称付きで呼ばれていた。 仕事はその名の通り料理人。キッチンの最高責任者でキッチンメイド、皿洗い女中達を統括していた。邸宅勤めのコックの年収は19世紀末で50-70ポンド(約120万-168万円)だった。 ヘッド・ベイカー パン職人。 糖菓製造人 パティシエ。 ヴァレット(従者、近侍とも) 主人の行き先に常にお供し、主人服装に気を使い、履物までも注意した。朝は主人を起こすことから仕事が始まり、主人が寝るまで仕事は終わらなかった。常に主人の気持ちを素早く察する必要があった。 グルーム・オブ・ザ・チェンバーズ 家具、暖炉、窓、鍵などの管理や客の送り迎え、部屋の案内、そして全てのレセプション・ルームの責任者として日に数回、いくつかの部屋を回って整えていた。フットマンの監督も行っていた。 大規模なカントリー・ハウスにしかいなかった。 屋敷のチェンバー(部屋)全てを管理する役目だったので複数形。 チェンバー・メイド 女主人の寝室の掃除、ベッド・メイキング、女主人の服装の世話をした。レディーズ・メイドと役割が重なる部分もある。 ナニー/ナースメイド 貴族の女性は子供を産んでも胸の形が崩れるから、社交に忙しいからという理由で母乳を与えることから下の世話に至るまでナニーに任せきりだった。また田舎の健康な女性の方が乳の出も良く、丈夫な子が育つとしてナニーに頼っていた。子供が乳離れした後の面倒を見るナニーもいた。子供の朝食を作り、子供に規則正しい生活を守らせ、子供にきちんと喋らせ、行儀振る舞いを厳しくしつけることが要された。子持ちである必要はなく、独身で若い女性もナニーの仕事をしていた。子供達の就寝は18:30頃で、毎日1時間ほどしか居間で親たちに会うことができなかった。 ガヴァネス 住み込みの家庭教師。中流階級出身の女性はガヴァネスとコンパニオンしか仕事が無かったので、ガヴァネスは常に供給過剰状態だった。 コンパニオン 上流階級の女性の話し相手をする仕事。中流階級出身の女性がこの任に就いた。ガヴァネスと同じく常に供給過剰状態だった。 シャペロン 若い未婚の女性が外出する時、もしくは社交場に出る時に付き添いをした。多くは年配の婦人で社交の行儀作法が守られているかを監督する目付。 チューター 未成年者の後見人。
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