「徳治人治」「尚同の治」「無為の治」「法治」とは? わかりやすく解説

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「徳治・人治」・「尚同の治」・「無為の治」・「法治」

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/14 08:44 UTC 版)

中華法系」の記事における「「徳治・人治」・「尚同の治」・「無為の治」・「法治」」の解説

紀元前770年周王朝が、首都宗周から成周へ移転してから、紀元前221年秦の始皇帝による中国最初統一政権成立までは、東周または春秋戦国時代呼ばれる時代である。この時期中国古代社会大動乱、大変革の時期に入り各種政治思想法律思想流派競い合った。「諸子百家」とも呼ばれる知識人たちが各国為政者に、国をいかに収め、さらにその先天下を以下に統一させるかという道理説いて回った主な流派として、儒家墨家道家法家あげられる春秋時代末期孔子戦国時代孟子中心とする儒家が「徳治」や「人治」を唱えた孔子は、礼を通じて内面的な徳性政治思想としての礼治との両面重んじたが、孟子は、礼の内面化志向した。孔子当時の社会変革に不満を感じ西周王朝の宋法等級秩序伝統的な礼楽制度復活させるために諸公奔命し、「為政以徳」(政治為すには道徳頼りにしなければならない)という徳治思想と「為政在人」(政治為すには人にあり)の人治思想打ち出した国家治めるためには「在於得賢人也」(道徳修養素晴らしい人を得ることにある)と主張した孔子思想忠実な祖述者を以って自任し孔子の後を受け継いだのが孟子である。当時中国情勢は、急速に勢力拡大した秦を台風の目として列強はいずれ侵攻防衛明け暮れていた。孟子諸国駆け巡り仁義」の言葉代表される理想主義的な王道政治諸国君主説いた先に孔子は、自己修養強調する「仁学」の思想説いていたが、孟子はこれを発展させた「仁政」の思想、すなわち「施仁政於民、省刑罰、薄税斂」(仁政を民に施し刑罰省き租税軽減する)、「以徳服人」(道徳をもって人を従わせる)を強く主張した孟子説く王道主義をよく表すのが、いわゆる五十歩百歩」の成語である。恵王が「自分隣国よりも心を尽くして治政行っているのに、自国人口増えず、隣国人口減らない。何故だと思うか」と孟子尋ねると、孟子は「凶作餓死者が出ても、倉を開いて救うことはしない。民が死ねば自分のせいではない。凶作のせいだ』という。これでは人を刺し殺しながら『自分のせいではない。刃物のせいだ』というのと、どこが違いましょう五十歩百歩)。王様餓死者がでても凶作のせいにせず、自分責任引き受けられるうになるなら、天下の民は王様のもとに集まってまいりましょう。」と答えた妥協なき「王道政治」の理想と現実ギャップ突き付け、王に厳しく反省を迫るものであったこのように孟子思想には「民こそが主人公」という愛情政治核心をなしている。孟子の「王道政治」の理想根幹をなすのが、「性善説」と「井田制せいでんせい)」である。性善説については、『孟子』(滕文公篇上)に「孟先生は人の先天的な性質善いことを述べ、言う時は決まって堯や舜の人格引き合いに出す」と述べている。井田制については、同書に「一里四方九百畝の田土を井の字型に分け中央の田を公田とし、八家はいずれも(公田周囲の)私田百畝をもち、共同公田経営する公田仕事耕作収穫)を終えてから、私田仕事をする」とする。これは公田収穫を税として納入し、各家族私田収穫生活するというものであり、均分主義理想的な考えであったが、現実的に実施するのは困難であった戦国時代初期墨子によって作られ墨家は、「尚同の治」を主張した墨子民衆立場に立ち、各諸公間で頻繁に行われた覇権争い戦争反対し、「兼愛」と「非攻」の思想打ち出し、「尚賢」(出身問わず有能な者を抜擢する)を主張した。「兼愛」とは、単なる博愛ではなく無差別愛のことである。墨子は、差別することから争いが起こると考え儒家の「仁」にもとづく愛を「別愛」として批判した。「兼愛」では、お互いお互い利益考えることになるため、これを「交利」という。また「非攻」とは、単なる非戦論戦争反対主義ではなく他国と争わないで相手立場保障することである。墨子また、「官無常貴而民無終賎」(官吏永遠に尊いものではなく民衆終始賎しいものではない)、「賞当賢、罰当暴、不殺不辜、不失有罪」(有能な者を奨励し、乱暴な者を処罰すべき、無実な者を殺さず有罪の者を漏らさず処罰する)と主張し、「尚同」(法の前の平等)の思想提起し法律適用についても全ての人々平等に扱い社会秩序統一を図ることを強調した。 「無為の治」を主張したのは、春秋後期老子戦国時期荘子よって創立され道家である。老子は夏、商、周代形成された宋法等級制度崩壊していく社会危機直面して救いようがない感じ国家治める最も良い方法は「我無為而民自化」(支配者は何もなさずに民は自ら進化していく)とし、「無為の治」を唱えた。彼はまた、人法地、地法天、天法道、道法自然」(人間大地従い大地は天に従い、天は道に従い、道は自然に従う)を主張しあらゆる人為的な法治つや礼儀規範反対した。老子のこの「道は自然に従う」の思想極端にまで発展させ、絶対的な無為」の主張をしたのが、荘子である。荘子は、いわば隠者哲学であり、儒家現実社会への働き掛け重視することに対し徹底的な批判揶揄姿勢をとった。 「法治」の主張打ち出したのは法家である。法家春秋時代後期管仲子産鄧析等によって形成され戦国時代李悝商鞅慎到等により発展され韓非子仕上げた学派である。春秋戦国すさまじ社会変革に伴い天命神権思想疑われ、「軽天重民」の思想台頭してきた。「夫民、神の主也」(民とは神の主である)、「国将興、聴於民、将亡、聴於神」(民衆意思従えば国家発展していく。神の意志従えば亡びていく)との声はその変化表したのである子産はさらに「天道遠、人道迩、非所及也」(天道遠く人道近く天道人道及ばない)を指摘し人間と神との主従関係逆転させ、「天罰神判」の法律思想否定した儒家人知徳治や礼治思想による統治主張したのに対し鄧析は「事断於法」(法に従い裁判を行う)と、また管仲は「君臣上下貴賎皆従法」(君主であろうと、臣下であろうと、貴族であろうと、民衆であろうと、全て法律に従わなければならない)と、それぞれ主張した商鞅は「縁法而治」(法による支配)の法治主張鮮明に掲げた韓非子はさらに「以法為本」の思想唱え、法本位思想唱えた法家思想には、以下の3つの側面がある。<1>まず刑罰には等級がなく、何人に対しても法の適用平等にすべきという主張側面がある。商鞅は「自卿相将軍以到大夫庶人、有不従王令、犯国禁、乱上制者、罪死不赦。有功於前、有敗於後、不為損刑、有善於前、有過於後、不為虧法」(政府大臣軍隊将軍から知識人庶民まで、国王命令従わず国家法律犯し国家制度損壊した場合、その罪が死刑該当するなら死刑処して赦さない。以前功労立てたでも、その後罪を行った場合でも法の処罰から免れない善行有ったでも、その後過ち犯した場合でも法の処罰から免れない)と主張した。<2>次に重刑軽罪」「以刑去刑」の側面指摘できる。すなわち軽い犯罪でも厳し刑罰処罰し、重い刑罰科し犯罪をなくすという「厳刑峻法」である。<3>最後に、法を民衆知らせるべく公開すべきであるとの主張側面がある。つまり民衆国法に従わせ、犯罪走らせないためには、法律分かり易く作成し全ての人々知らしなければならないそうすれば民衆も必ず法を遵守し社会安定するであろうという。法家思想は、民衆思想や行動を統一させるという点からは儒家墨家思想上回るところがあり、秦国をはじめ多くの国によって採用された。特に秦国は、商鞅重用し彼の改革主張採用し法家思想に基づき政治制度の改革全面的に推進した。そのため、秦の始皇帝は秦を弱国から強国変身させ、中国統一事業成し遂げ中国最初中央集権国家作り上げた法家の「以法為本厳刑峻法」の法律思想秦王朝において主導的地位占めた。筍子の弟子韓非李斯法家として始皇帝政治支えた。しかし、秦王朝は「厳刑峻法」の効用過信しすぎたため、僅か25年しか存続できず、短命政権終わった

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