税理士 国税OB

税理士

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/30 16:07 UTC 版)

国税OB

毎年7月になると、財務省・国税庁の定期人事異動がある。大学進学率の向上に伴い、国税庁内部には出身大学ごとの校友会(大蔵国税三田会等[43])が形成され、人事異動先での人脈形成等を行っている。税務署職員等は極めて短期(数年以内)で頻繁に各地へ人事異動となる。私人との癒着(依怙贔屓)等の不正を未然に防ぐためでもある。

2019年6月に発覚した国税幹部とOBとの接触について国税幹部が懲戒処分を受けた[44][45]。その後、これを受け、東京国税局から現役職員と原則接触禁止の通達が出されたと各種メディアにより報道された[46][47]

2019年07月08日、関東信越税理士会は公式サイトにて、税理士会会員向けに「<国税局からのお知らせ>「国税職員の綱紀の厳正な保持」に関するお願いについて」とするお知らせと国家公務員倫理審査会が作成したリーフレットを配付した[48]

国家公務員倫理法令における「社会通念上相当と認められる」か否かは、利益供与の理由、額、頻度、国家公務員との関係性などを総合的に勘案して判断される。判断に迷う場合は、相手方機関または倫理審査会事務局への問い合わせが望ましい。

その他

2000年代に入り、国会において官公庁全般から民間への関与の在り方が問題視され、国税についても、民主党所属衆議院議員長妻昭より質問主意書が出された[49]

この質問主意書に対し、閣議決定を経た政府答弁において、「税理士資格を有する職員に対する退職後の顧問先企業のあっせんは、現在も行っている。(中略)民間の需要に対する的確な対応等の面でも有益であるので、今後とも必要であると考えている」と認めた[50]

その後、政権交代を経た民主党政権下において、このようなあっせんについては廃止された。

世界の税理士

税理士に相当する資格制度を維持している国は、アメリカ、ドイツ[51]、韓国、中国である。

アメリカ

米国税理士 (EA) という資格制度が存在する。米国では資格の有無にかかわらず有料で税務申告を作成することができるなど、日本の税理士制度とは大きく異なる[52]。ICT産業が盛んなことから、en:Comparison of accounting software の一覧に掲載されているような業務内容に応じた多数のソフトが販売されており、目的に合わせてソフトを選ぶことになる。

税務申告、記帳代行に関して、自由競争の下、en:H&R Block[53][54] をはじめアメリカ本土に様々な業者が存在する。

ドイツ

税理士は、de:Steuerberater と呼ばれ、de:Steuerberaterkammer (税理士会。ドイツ全国に21の税理士会と、それらの連合組織である連邦税理士会がある。)に登録している資格者は、93,950名(2014年)である。

ドイツにおける税理士制度について歴史を遡ると、1919年、ライヒ租税通則法第88条2項において、税務署長は納税義務者の代理人を許可することができると規定されたことに由来する。 同規定は、1931年の改正に伴い同法第107条第3項に引き継がれた。この流れを受け、1961年、日本における税理士法に相当するde:Steuerberatungsgesetzが制定された。

1980年、連邦憲法裁判所 における決定(BvR 697/77)が下され、税理士業における独占業務が、「職業選択の自由」(de:Grundgesetz für die Bundesrepublik Deutschland Art 12)に違反するとされた。かかる決定に基づき、de:Steuerberatungsgesetzは改正され、de:Buchführungshelferは、それまで参入できなかった税理士業における独占業務へ参画するようになった。後述する2000年の大改正までは、いわゆるドイツにおける税理士業務を行う者はde:Vereidigter Buchprüferde:Steuerbevollmächtigterde:Steuerberaterおよびde:Wirtschaftsprüferの4資格者を主に指していた。その後、1982年、連邦憲法裁判所 における決定(BvR 807/80)が下され、広告活動の自由化がされた。また、東西冷戦終結以降、EU域内における人・物・サービスの移動の自由、営業の自由が求められ、ついに、2000年、de:Steuerberatungsgesetz は抜本的な大改正がなされた。

韓国

韓国では「税務士」と呼ばれ、日本の税理士制度とほとんど同じである。税務士法により税務士資格を有するものは、税務士資格試験に合格したもの、公認会計士資格を有するもの、弁護士資格を有するものと定められていたが、2011年の税務士法改正により公認会計士への資格付与が廃止された。しかし、大韓民国 公認会計士は、公認会計士法により税務代理業務を行うことができ、実質は変動がない。

なお、かつては資格取得要件のひとつに国籍条項(大韓民国国籍を有すること)が存在したが、1995年の改正で削除されており、現在は外国人であっても税務士となることができる。

中国

zh:国家税务总局の統制を受ける税務師の資格が存在するが、業務独占はない[55]


注釈

  1. ^ なお、法務省の日本法令外国語訳データベースシステムにおいては、税理士法は「Certified Public Tax Accountant Act」と訳されているのに対し(ただし標題のみで本文は未訳)[2]弁護士法の訳文中には「tax attorney」(第3条第2項、第7条第3号)と「tax accountant」(第83条、昭和三十二年六月一日法律第百五十八号附則第15項)の双方が混在しており[3]、その訳語は一定していない。
  2. ^ 故意に真正の事実に反して税務代理もしくは税務書類の作成をしたこと、または不正に国税もしくは地方税の賦課若しくは徴収を免れ、または不正に国税若しくは地方税の還付を受けることにつき、指示をし、相談に応じるなどすること

出典

  1. ^ 日本税理士会連合会 (2015年10月20日). “国際交流”. 2022年2月24日閲覧。
  2. ^ 税理士法”. 日本法令外国語訳データベースシステム. 2022年2月25日閲覧。
  3. ^ 弁護士法”. 日本法令外国語訳データベースシステム. 2022年2月24日閲覧。
  4. ^ 貢士対策所に提出された大溝藩(近江国2万石)の租税改革の答申
  5. ^ 当時の世情について 国税庁 なぜ、税を納めなければならないのでしょうか税のエピソード・日本編 の福澤諭吉と税を参照。
  6. ^ 税務大学校租税史料1 近代税制の幕開け ―地租改正― を参照。
  7. ^ 東京地方税理士会『東京地方税理士会沿革史』「第一編 草創期」“第一 税務代理人時代”p2 昭和48年2月20日発行
  8. ^ 日本税理士会連合会業務対策部「税理士業務報酬算定に関するガイドライン(指針)」(閲覧日2016.2.25)
  9. ^ 大学院提携研修 ・ 補佐人講座 (慶応、早稲田、筑波)
  10. ^ オックスフォード大学マイケル・A・オズボーン博士の論文「未来の雇用」
  11. ^ 人工知能は本当に仕事を奪うのか:“10年後になくなる職業”税理士に聞く 生き残るための生存戦略 (1/2) 2016年03月09日 閲覧:2016.05.27
  12. ^ 内閣官房IT総合戦略室「デジタル手続法案について」2019年3月(閲覧:2019.6.5)
  13. ^ 税理士情報検索サイト
  14. ^ 平成十二年政令第二百七十八号国税審議会令第二条
  15. ^ 税理士分科会の概要等”. 国税庁ウェブサイト. 2021年7月27日閲覧。
  16. ^ 平成十二年政令第二百七十八号国税審議会令第四条
  17. ^ 国税審議会委員名簿 令和2年6月25日現在(敬称略)(最終閲覧日:2021.2.23)
  18. ^ researchmap 田近栄治 (最終閲覧日:2021.2.23)
  19. ^ a b 教員紹介 (最終閲覧日:2021.2.23)
  20. ^ a b 専任教員紹介 (最終閲覧日:2021.2.23)
  21. ^ 執筆者プロフィール (最終閲覧日:2021.2.23)
  22. ^ 文芸創作学科 教員紹介 (最終閲覧日:2021.2.23)
  23. ^ 380年を超える歴史、14代の伝統(最終閲覧日:2021.2.23)
  24. ^ 研究者総覧(最終閲覧日:2021.2.23)
  25. ^ a b 税務経営情報ネット「国税庁幹部の異動発令、新長官は川北力理財局長」税務関連情報 -2010年08月02日(最終閲覧日:2021.3.1)
  26. ^ 新任代表執行役の略歴(最終閲覧日:2021.2.23)
  27. ^ PROFILE(最終閲覧日:2021.2.23)
  28. ^ 研究者情報(最終閲覧日:2021.2.23)
  29. ^ a b 慶應義塾研究者情報データベース(最終閲覧日:2021.2.23)
  30. ^ 手島麻記子プロフィール(最終閲覧日:2021.2.23)
  31. ^ 中空麻奈 略歴(最終閲覧日:2021.2.23)
  32. ^ researchmap 三村 優美子 (最終閲覧日:2021.2.23)
  33. ^ 吉村 典久 教授(租税法、国際租税法) (最終閲覧日:2021.2.23)
  34. ^ researchmap 渡辺 哲 (最終閲覧日:2021.2.23)
  35. ^ 略歴 (最終閲覧日:2021.2.23)
  36. ^ 第95回 国税審議会税理士分科会の開催について(最終閲覧日:2021.4.1)
  37. ^ 懲戒手続”. 近畿税理士会ウェブサイト. 2021年7月27日閲覧。
  38. ^ 参考:週刊ダイヤモンド 2024年3月23日号第112巻11号 p56 株式会社ダイヤモンド
  39. ^ 改正税理士法の「学位による試験科目免除」制度のQ&A”. 国税庁ウェブサイト (2004年5月10日). 2021年7月28日閲覧。
  40. ^ 平野由美子「昭和初期における計理士法改正運動 : 木村禎橘の運動を中心に」『立命館経営学』第50巻第5号、立命館大学経営学会、2012年1月、57-79頁、doi:10.34382/00001019ISSN 0485-2206NAID 110008802941 
  41. ^ 原征士「公認会計士法の改正」『経営志林』第26巻第4号、法政大学経営学会、1990年1月、67-79, 76、doi:10.15002/00003340ISSN 02870975NAID 120000994276 
  42. ^ 第25回参議院議員通常選挙における日本税理士政治連盟の推薦議員(閲覧:2022年1月23日)
  43. ^ 「最強の学閥パワーを解剖する 慶應義塾の人脈と金脈」、p133、『文藝春秋』2023年11月号
  44. ^ 朝日新聞DIGITAL 「国税幹部4人を懲戒処分 OBから「陣中見舞い」の現金」2019年6月25日 19時11分
  45. ^ 日本経済新聞 「OB税理士から金銭 国税職員を処分」2019年6月26日 9:54
  46. ^ 週間エコノミストOnline 「「税理士の憂うつ」 国税OBの落日 開業しても仕事ない… 現役との“接触禁止令”追い打ち=宮口貴志」2020年4月6日
  47. ^ 週刊ダイヤモンド2021年2月13日号 69頁「情報網は細り威光に陰り国税OBに待ち受ける受難」株式会社ダイヤモンド社
  48. ^ <国税局からのお知らせ>「国税職員の綱紀の厳正な保持」に関するお願いについて”. 関東信越税理士会 (2019年7月8日). 2021年9月1日閲覧。
  49. ^ 国税OB税理士に対してあっせんした顧問先企業での勤務実態に関する質問主意書 提出者長妻昭
  50. ^ 内閣総理大臣小泉純一郎 答弁書
  51. ^ TKC全国会『TKC海外視察研修ードイツ会計人業界視察レポート』TKC出版2001年
  52. ^ TKC全国会『TKC海外視察研修ー米国会計人業界視察レポート』TKC出版2000年
  53. ^ “朗報? 確定申告を「無料」で代行 税還付立替への批判とネットの普及に対抗”日経ビジネスオンライン(2011年1月21日(金))2016年1月3日閲覧
  54. ^ “What's Behind H&R Block's Free Tax Service” Bloomberg Businessweek (January 14, 2011)2016年1月3日閲覧
  55. ^ 東京税理士会 会報『東京税理士界』Volume No.686【12】 2014年〔平成26年〕3月1日〔土曜日〕






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