税率の試算
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/31 23:36 UTC 版)
「日本の消費税率5%は、国際的にみて低すぎる」「福祉先進国のスウェーデンの5分の1、欧州各国の4分の1」との指摘がある。しかし、国税収入に占める消費税収入の割合をみると、スウェーデンは約22%と日本と同程度である。これは、日本の消費税が医療や福祉などの一部非課税項目を除けば網羅的に課税されているのに対し、欧州各国の付加価値税は、医療・教育から住宅取得・不動産・金融など幅広い非課税項目があることと、食料品や医薬品などの生活必需品は軽減税率をとっているためである。 エコノミストの鈴木準は「物価が上がった時に年金の水準を据え置くなどの限られた給付抑制策だけでは、2030年代に消費税を25%程度まで引き上げたとしても、税収で政策的経費を賄えない。公的な皆保険や皆年金を最低限にして民間の保険・サービスの利用が広がれば、民間の伸びで成長率を維持することができ、消費税は20%程度で抑えられるかもしれない」と述べている。 原田泰は「財政赤字を増税によって賄おうという議論はいいが、増税分を社会保障に回すとの考えは根本的に間違っている。社会保障給付費の対名目GDP比を見ると、1970年は4.6%だったものが、2010年は24.6%までに上昇した。2060年には53.5%までに達する。消費税1%はGDPの0.5%の税収に相当する。そうなると社会保障給付費は現状から28.9%まで上昇するためそれを0.5%で割ると57.8%となる。現在(2012年)の消費税率が5%に57.8%を上乗せした62.8%が、2060年時点の消費税率という計算が成り立つ。このような増税が可能だとは思えない。つまり、現在の社会保障を維持するために必要なお金を、増税のみで賄うのは不可能である。あまりにも高税率になると経済効率が低下する上、税金を納めるのがバカらしくなり、節税と脱税行為が横行する。結果税率をあまりに引き上げると、逆に税収が減ることになる。高齢者1人あたりの社会保障支出を減らさざるを得ない」「高齢化はこれまで以上のペースで進んでいくことを考慮しなければならない。高齢化がほぼピークになる2050年に必要な消費税増税を15%、現行(2011年)の消費税と合わせて20%とあらかじめ決定し、その範囲内での財政支出しか行わず、消費税増税を順次行っていくべきだ」と指摘している。 総合研究開発機構主任研究員の島澤論は「2011年時点で社会保障費の支出は約108兆円で2030年には226兆円になると予想されている。消費増税だけで赤字を解消しようとすると、2030年の消費税は37-41%程度になる」と指摘している。
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