B-1Bの特徴と性能
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/13 13:42 UTC 版)
「B-1 (航空機)」の記事における「B-1Bの特徴と性能」の解説
B-1Bは、超低空侵攻による核/爆弾攻撃、通常の戦略爆撃、巡航ミサイルプラットホーム、などの任務をこなすため、地形追随レーダーや、赤外線監視装置、ドップラー・レーダー、ECMシステムなど、充実した電子機器を搭載。エンジントラブルや搭載コンピュータとECMのミスマッチング(B-1BのECMは自身を妨害するなどと揶揄された)により開発は遅延、初期作戦能力獲得は1986年であった。 第二次戦略兵器削減条約(START II)の対象となったため、1994年に核攻撃任務から外され、現在配備の機体は全て核兵器搭載能力がない。1990年代半ばより、近代化改装とともに通常兵器搭載能力・精密兵器搭載能力の向上が図られている。 B-1B搭乗員は、機長、副操縦士、兵装システム操作員、防御システム操作員の4名、座席はすべてACES II 射出座席となっている。 B-1Bの機体はB-1Aに引き続き、主翼から固定内翼部を介して胴体と滑らかに融合したブレンディッドウィングボディとなっている。固定内翼部分が発生させている揚力も小さくはなく、迎え角が大きいときには特に顕著となる。主翼は、前縁に全翼幅にわたるスラットと防御装備と一緒の埋め込み式アンテナが、後縁に全翼幅の約3/4を占める隙間式フラップを装備、コックピットから同じレバーを使って操作できるようになっている。エルロンは無く、代わりにスポイラーを上部に装備。十字尾翼の垂直尾翼は、垂直安定板と方向舵で構成されているが、水平尾翼は全体が可動する全遊動式で、ローリングの際には主翼のスポイラーと水平尾翼の差動により行われる。後退時、主翼後端はヒンジの付いた上部パネルによって巧みに覆い隠され、2重膨張シールによって保護される。機首下部には、2枚の低高度ライド・コントロール・ベーンが装備されており、低高度の飛行中に起きる乱気流を打ち消して飛行を安定させる。操縦装置はフライ・バイ・ワイヤ方式を装備しており、機体のローリングとピッチングを操作する操縦装置は大型機で使用される操縦輪ではなく、戦闘機等に使用されている操縦桿を装備。また、乗員は前脚の後部にある機体下面から昇降する梯子を使用して乗り降りする。 エンジンは、ゼネラル・エレクトリックF101-GE-102アフターバーナー付きターボファンエンジンを4基搭載。B-1A用に開発されたF101は、典型的な戦闘機用エンジンより幾分大きく、ミリタリー推力は海面高度で75.6kN、離陸時はアフターバーナーを使用、138kNの最大推力を発揮する。エンジンは2基組合わせポッド式で主翼付け根付近に搭載。 ランディング・ギア(着陸装置)は3脚、主脚は二輪ボギー式の二重タイヤで四輪、前脚は二重タイヤで、前脚は前方に引き込まれ収納されるが、主脚は二組のエンジンに挟まれたスペースに収納されている。「七面鳥の羽」と呼ばれるアクチュエーター・カバーがエンジンに装着されているが、取り外して軽量化も可能。 兵装最大搭載量は56,000kg(機内34,000kg、機外23,000kg)。胴体中央には、機内の3区画の兵器倉が主脚前方に2つと主脚後方に1つあり、その中の前方の2つは、中央にある区間隔壁が可動式になっており、搭載される兵装の種類により区画割りが変更できるほか、取外して1つの兵器倉とすることが可能である。また、その下面には、6つの二重パイロンと2つのシングル・パイロンの8つの機外搭載ステーションがあり、そこに巡航ミサイルが搭載可能である。 機内の兵器倉には空中発射巡航ミサイル(ALCM)のAGM-86Bなら8発、発展型巡航ミサイル(ACM)のAGM-129なら4発、短距離攻撃ミサイル(SRAM)のAGM-69なら24発、自由落下式のMk82 通常爆弾とMk36DST機雷なら(ともに重量は500lb)84発が搭載できる。8つの機外搭載ステーションにもAGM-69とAGM-129をそれぞれ12発が搭載可能である。それらの兵装類を兵器倉に搭載する際には最初に専用の回転式ランチャーに取付けてから兵器倉に搭載される。搭載されると油圧により回転するようになっており、作戦行動中は、最初に使用が選択された兵器が真下に来るように回転してセットされ、投下されると、2番目に選択された兵器が真下に来るように回転してセットされる。500lbの通常爆弾を搭載する際には、3区画の兵器倉に通常兵器用モジュールを回転式ランチャーの支持架に装着して、各区画に28発収めて最大で計84発搭載できるが、この場合では回転式ランチャーは回転しないようになっている。 その後、能力向上による搭載兵装類の追加が行われており、ブロックCでは、各種のクラスター爆弾が搭載可能となり、ブロックDでは、軍規格1760兵器データバスが完全統合化されたことにより、GPS誘導爆弾(JDAM)の運用が可能となり、ブロックEでは、風偏差修正子弾散布装置(WCMD)のAGM-154 JSOWとAGM-158 JASSMの搭載が可能となっている。2008年からは、AN/AAQ-33 スナイパーXR照準ポッドの運用能力が付与されており、自らの目標指示によりレーザ誘導爆弾を投下することが可能となっている。 レーダーは、AN/APQ-164多モードパッシブフェーズドアレイレーダーを、機首に装備している。これは、F-16で使用しているAN/APG-66を発展させたもので、TACANや機体に装備された慣性航法装置からの情報を基に精密爆撃を行うほか、低空での地形追随・回避機能も持つ攻撃電子機器システム(OAS)の中核として機能しており、機種の左右45度の範囲においてリアルビームモードでの地上のマッピングを行いその周囲の地図を瞬時に作成するグランドマッピング、地上の正確な指示目標能力により指示目標の高解像度の地図を作成するハッチマップ、正確な大気速度を計測するベロシティーアップデート、飛行中でのオフセットの位置にある地上の位置情報を把握する精密位置アップデート、正確な高度を計測する高度計測、他の航空機を発見・追跡するランデブー、気象探知などのモードを備えている。 B-1Bの電子戦自衛装備の中核となるのが、防御システム操作員によって操作される防御電子機器システム(DAS)である。DASは、レーダー受信と対レーダー妨害を統合していることが特徴で、AN/ALQ-161A 無線周波数監視(RFS)/電子妨害システム(ECMS)、AN/ASQ-184 攻撃電子機器システム/防衛管理システム(DMS)と防衛操作および表示システム、AN/ALQ-161尾部警戒機能(TWF)の3つのパートで構成されている。 AN/ALQ-161Aは、データバスにより他の機器とリンクしてインターフェースを行い、AN/ASQ-184を介して防御システム操作員との間で操作と表示ができるようになっており、データパスのインターフェースが故障して操作・表示ができなくなっても、単独での運用が可能である。また、自身のデジタル・データ通信ネットワークにより、機体の周りに多数取付けられているDASのアンテナの制御を行い、機体のあらゆる方向からやって来る、多数のレーダー周波数の電波に対して、内蔵されたライブラリーを基に自動で同時に妨害を掛けることができるようになっている。 尾部警戒機能(TWF)は、パルス・ドップラー・レーダーを使用して、後方から来る複数のミサイルを探知して位置のモニターを行い、その中から脅威のものが探知されると、TWFから妨害信号が発信されて、AN/ASQ-184を介してミサイル警報音とともにその方位と距離情報が表示され、防御システム操作員に知らせる、その後、その方位と距離情報を基に、DMSがコックピット後方の上面に搭載されている使い捨て式妨害装置(EXCM)のどちらかの側面を使用する判断をしてチャフ/フレアを射出する。また、2005年には、データリンク装置の導入と、乗員へ知らせる各種表示装置のアップグレードが行われ、2010年には、完全統合型データリング(FIDL)の装備が行われている。前述のSTART IIに従い、2007年から2011年にかけて、空中発射核巡航ミサイル(ALCM、ACM)の搭載をプレートの溶接により不可能にし、爆弾倉の核兵器用投下準備シグナル発信ケーブルを外す工事が行われ、本機は核攻撃能力を失った。 チャフ/フレアは、前述したコックピットの後方上面にあるコンピュータ制御の自動および手動発射式の使い捨て式妨害装置(EXCM)に搭載、各8つの赤外線フレアとチャフのディスペンサーを構成して収納庫に格納されている。 最近では、機体後部に曳航式のレーダー囮装置が装備されており、機体後部に取付けられたフェアリングから囮を展張させることができる。
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