兵装システム
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/21 03:43 UTC 版)
「A-10 (航空機)」の記事における「兵装システム」の解説
A-10は、7tを超えるペイロードを持ち、主翼と胴体下にある計11ヶ所のハードポイントに様々な兵器を装備できる。また、劣化ウランを弾芯とした30 mm徹甲弾を使用するGAU-8 アヴェンジャーガトリング砲を主要武器として内蔵している。 GAU-8は当初の設計では毎分2,100発と4,200発に切り替え可能な発射速度だったが、現在は毎分3,900発に固定している。射撃開始から発射速度になるまで0.5秒かかるため、最初の1秒で50発を発射し、その後は毎秒65発となる。GAU-8の照準はA-10が30度で降下した際の射程1,220 mに最適化されて12.4 mの円内に80 %という集弾率となっている。 なお、発砲時の砲口炎と排煙の排出量が多量のため、操縦士の視界に与える悪影響やエンジンが発砲煙を吸うことへの懸念(故障、特に飛行中のエンジン停止の要因となる)が生じることが実用試験の際に判明したため、初期型の就役後には砲口に発砲煙を散らすためのデフレクターであるGFU-16/A、通称 “Tickler” が装着されたが、効果が低い上に乱流を発生させることによる問題が発生し、その後順次撤去された(装着したままの機体も存在している)。砲口部をフェアリングで覆う形状とすることも検討されたが、テストの結果空力特性の悪化などの問題が生じ、砲口は露出式のままとなった。GAU-8の発砲煙による問題に対しては、発砲時は自動式の風防前面洗浄装置とエンジンの再点火装置を連動して作動させることで対処している。 機体自体もGAU-8の搭載を優先した設計としており、発射の瞬間に砲口に向かって9時位置となる砲身を機体中心と合わせるために砲自体を進行方向左、前脚を右に寄せて配置している。地上での旋回半径は内側の主輪と前輪の距離で決まるため、右回りの方が小回りになる。 弾倉は初期の機体では1,350発収容していたが、装填時の弾倉の螺旋部分の破損が多かったために1,174発の砲弾を収容する補強された弾倉に交換された。リンクレス弾薬の装填にはGAU-8専用のGFU-7E 30 mm弾ローディングアセンブリカートを必要とする。大量の弾薬の誘爆は壊滅的な結果となるため、幅1.52 m、長さ2.74 mにもなる弾倉の防護には充分な注意が払われており、弾倉と外板の間には異なった厚さを持つ幾枚ものトリガープレートと呼ぶ多くの板を配置し、炸裂弾を外側の装甲で起爆させ、内側の装甲でその破片を防護する空間装甲としている。 また、電子光学 (TV) 誘導または赤外線誘導のAGM-65 マーベリック空対地ミサイルも頻繁に使用している。機関砲よりも長い射程を持つマーベリックは、近代的な対空システムに対するより安全な選択肢となる。 湾岸戦争では前方監視赤外線カメラを装備していなかったため、夜間任務ではマーベリックの赤外線カメラをFLIRの代用とするアイディアが実行された。このため信頼性の問題から利用されなくなりつつあったLAU-88(三連装ランチャー)によりマーベリック3本を搭載し、内1本をカメラとして利用していた。 他には集束爆弾やハイドラ70ロケット弾ポッドも使用する。 A-10は、レーザー誘導爆弾の運用能力も備えているが、A-10の作戦高度速度域では安価な無誘導爆弾で充分な精度を発揮できる上に誘導兵器の操縦時間をほとんど取れないため、実際の使用は希なこととされている。 また、A-10は通常自衛用として片翼にALQ-131ECMポッドともう一方に2発のAIM-9を携行する。 翼下のハードポイント 機首下部に露出した30 mmGAU-8 ガトリング砲の砲口 30 mm砲の砲弾 LAU-88により3発のAGM-65を搭載した状態。色が違う1本がFLIRの代用
※この「兵装システム」の解説は、「A-10 (航空機)」の解説の一部です。
「兵装システム」を含む「A-10 (航空機)」の記事については、「A-10 (航空機)」の概要を参照ください。
- 兵装システムのページへのリンク