八代弥とは? わかりやすく解説

八代弥

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/07/22 17:06 UTC 版)

 八代弥 八段
名前 八代弥
生年月日 1994年03月03日(31歳)
プロ入り年月日 2012年04月01日(18歳)
棋士番号 287
出身地 静岡県賀茂郡
所属 日本将棋連盟(関東)
師匠 青野照市九段
段位 八段
棋士DB 八代弥
戦績
一般棋戦優勝回数 1回
2025年7月10日現在
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八代 弥(やしろ わたる、1994年3月3日 - )は、日本将棋連盟所属の棋士。青野照市九段門下。棋士番号は287。静岡県賀茂郡東伊豆町出身。

棋歴

プロ入り前

将棋を覚えたのは小学校1年生の頃。ちょうど東伊豆町から隣の伊東市に引っ越すタイミングで、中学校教師である父から教わった。4年生になって伊東の支部の小さな道場に行くようになり[1]、5年生のときに奨励会を受験するも不合格。師匠の勧めもあり研修会へ入会。月に2回ほど東京に通った[1]

奨励会

2005年9月、6級で奨励会に入会。後にプロ棋士となる会員としては珍しく、入会後間もなく成績不振により“B”と言われる降級点を喫し、7級降級の危機[注 1]に瀕するなどで、最初の昇級に1年を費やした。八代本人は後の四段昇段内定のインタビューで、この6級当時の辛いときに周囲の応援が励みになった旨を述懐した[2]。それからしばらく順調に昇級を続け、2008年2月に初段に昇段[注 2]。しかし、そこで再び長いトンネルに入り、2009年7月にようやく二段昇段。

二段では再び順調に勝ち星を重ね、2010年3月に三段に昇段。これに伴い2010年度前期(第47回)より三段リーグに参加。4期目となる2011年度後期(第50回)で14勝4敗・2位の成績を修め、地元の高校を卒業するタイミングの2012年4月1日付けでプロ入り[1][2]。また、第1期(2011年度)加古川青流戦にも三段として参加、初戦でプロ棋士歴9年の藤倉勇樹四段から白星を挙げた。

プロ入り後

2015年度のNHK杯戦に初出場、本戦1回戦で村山慈明と対戦したものの敗退[注 3]

2017年2月11日2016年度の第10回朝日杯将棋オープン戦で一次予選から勝ち上がり棋戦初優勝[注 4]。同棋戦の歴代優勝者の中で、八代の22歳11か月は当時の最年少記録[注 5]、五段での優勝も同棋戦史上初[注 6]、更に一次予選から出場した棋士の優勝も同棋戦史上初であった[注 7]。また、全棋士参加棋戦[注 8]での優勝により、同日付で六段に昇段した[3]

2018年4月15日(放送日)、NHK杯戦に朝日杯優勝のシード枠で出場したが、1回戦で初出場の安用寺孝功六段に敗れた。

2019年4月23日、第32期竜王戦3組準決勝で三枚堂達也に勝って連続昇級を決め、七段に昇段した[4]。この対戦相手の三枚堂もまた連続昇級による七段昇段が掛かっており、この対局は文字通りの「七段昇段者決定戦」であった。八代にとっての「平成最後の対局」で七段昇段となった[5]

2021年3月24日、第34期竜王戦2組準決勝で当時の名人位であった渡辺明に勝利し、本戦出場と共に1組への昇級を決めた。これにより2021年度の八代は竜王戦では最上位クラスの1組、順位戦では最下位クラスのC級2組に属することになり、1995年度の先崎学[注 9]以来、26年ぶりの2例目となった。本戦トーナメントでは三枚堂達也久保利明を破り準決勝まで進出するも、ランキング戦2組決勝で敗れた藤井聡太に再び黒星を喫し敗退となった。

2021年12月10日、第35期竜王戦1組1回戦で稲葉陽に勝利し、史上初2期連続竜王戦1組、順位戦C級2組所属が確定した。準々決勝では前期も対局し勝利した渡辺明に勝利した。 第93期棋聖戦・二次予選決勝で屋敷伸之に勝ち、本戦トーナメント進出[6]第6期叡王戦・段位別予選決勝で横山泰明に勝ち、本戦トーナメント進出。

2022年度にはNHK杯戦でベスト4入り。

2024年11月7日、第37期竜王戦2組昇級者決定戦決勝で佐藤天彦に勝利し、1組への昇級を決めた。これにより史上初再び竜王戦では最上位クラスの1組、順位戦では最下位クラスのC級2組に属することになった。

棋風

本人によると、居飛車党で矢倉戦法を好むという[2]横歩取りも指す。

順位戦に星が集まらない棋士の1人として知られる。プロ入り同期の斎藤慎太郎とプロ入り後10年間、2022年3月末までの成績を比較すると、単純な勝率では 八代が.653(441局-288勝)[要出典]斎藤が.661(422局-279勝)[要出典]と高い水準で拮抗しながら[独自研究?]、順位戦に限れば昇級経験の無い八代に対して斎藤は2度の名人挑戦権を獲得と対照的な結果となっている。その間に竜王戦では1組まで昇級しており、必ずしも長時間棋戦を苦手としているわけではない。

人物

同世代の将棋棋士である高見泰地とは「親友にしてライバル」と評されており、他の棋士からも「二人の仲の良さは入り込めない」と言われている[7]

趣味はダーツカラオケ。同世代の棋士とお酒を飲みに行くのも好きであると語っている[8]

2023年2月10日、一般女性と結婚[9]

昇段履歴

昇段規定は、将棋の段級 を参照。

  • 2005年09月00日 : 6級(小学6年) = 奨励会入会 [2]
  • 2006年09月00日 : 5級(中学1年)
  • 2007年01月00日 : 4級( 〃 )
  • 2007年03月00日 : 3級( 〃 )
  • 2007年05月00日 : 2級(中学2年)
  • 2007年11月00日 : 1級( 〃 )
  • 2008年02月00日 : 初段( 〃 )
  • 2009年07月00日 : 二段(高校1年)
  • 2010年03月00日 : 三段(第47回奨励会三段リーグ〈2010年度前期〉より三段リーグ参加)[2]
  • 2012年04月01日 : 四段(第50回奨励会三段リーグ成績2位) = プロ入り[2]
  • 2015年05月12日 : 五段(竜王ランキング戦連続2回昇級、通算82勝44敗)[10]
  • 2017年02月11日 : 六段(第10回朝日杯将棋オープン戦優勝、通算133勝74敗)[11]
  • 2019年04月23日 : 七段(竜王ランキング戦連続昇級、通算197勝108敗)[4]
  • 2025年07月10日 : 八段(勝数規定/七段昇段後公式戦190勝、通算387勝198敗)[12][13]

主な成績

棋戦優勝

非公式戦優勝

将棋大賞

在籍クラス

順位戦・竜王戦の在籍クラスの年別一覧
開始
年度
(出典)順位戦
出典[14]
(出典)竜王戦
出典[15]
名人 A級 B級 C級 0 竜王 1組 2組 3組 4組 5組 6組 決勝
T
1組 2組 1組 2組
2012 71 C246 6-4 26 6組 -- 2-2
2013 72 C217 5-5 27 6組 -- 8-1
2014 73 C222 6-4 28 5組 -- 4-1
2015 74 C215 8-2 29 4組 -- 1-2
2016 75 C204 7-3 30 4組 -- 1-2
2017 76 C204 5-5 31 4組 -- 5-1
2018 77 C219 5-5 32 3組 -- 3-1
2019 78 C226 6-4 33 2組 -- 2-2
2020 79 C219 6-4 34 2組 2-1 3-1
2021 80 C220 6-4 35 1組 -- 2-2
2022 81 C219 7-3 36 1組 -- 0-2
2023 82 C211 8-2 37 2組 -- 3-1
2024 83 C204 6-4 38 1組 0-1 4-0 (1位)
2025 84 C218 - 39 1組 -- -
順位戦、竜王戦の 枠表記 は挑戦者。右欄の数字は勝-敗(番勝負/PO含まず)。
順位戦の右数字はクラス内順位 ( x当期降級点 / *累積降級点 / +降級点消去 )
順位戦の「F編」はフリークラス編入 /「F宣」は宣言によるフリークラス転出。
竜王戦の 太字 はランキング戦優勝、竜王戦の 組(添字) は棋士以外の枠での出場。

年度別成績

公式棋戦成績
年度 対局数 勝数 負数 勝率 (出典) 通算成績
2012年度 41 28 13 0.6829 [16] 対局数 勝数 負数 勝率 (出典)
2013年度 36 19 17 0.5277 [17]
2014年度 46 33 13 0.7173 [18]
2015年度 44 27 17 0.6136 [19]
2016年度 47 30 17 0.6382 [20]
2017年度 32 19 13 0.5937 [21]
2018年度 55 38 17 0.6909 [22]
2019年度 39 20 19 0.5128 [23]
2020年度 46 34 12 0.7391 [24]
2012-2020
(小計)
386 248 138 通算成績
年度 対局数 勝数 負数 勝率 (出典) 対局数 勝数 負数 勝率 (出典)
2021年度 55 40 15 0.7272 [25] 441 288 153 0.6530 [26]
2022年度 38 22 16 0.5789 [27] 479 310 169 0.6471 [28]
2023年度 50 39 11 0.7800 [29] 529 349 180 0.6597 [30]
2024年度 47 31 16 0.6595 [31] 576 380 196 0.6597 [32]
2021-2023
(小計)
190 132 58
通算 576 380 196 0.6597 [32]
2024年度まで

その他の記録

  • 朝日杯将棋オープン戦の一次予選から出場による優勝(第10回 史上初。後に藤井聡太も達成)
  • 竜王戦1組かつ順位戦C級2組在籍(2022-2023年、2025- 年度、先崎学に続き史上2人目。2期以上の在籍、2度目の在籍はいずれも史上初)
  • 順位戦C級2組在籍による竜王戦1組優勝(2025年度、史上初[33]
  • 順位戦C級2組から昇級なしでの八段昇段(2025年度、史上初)

著書

  • 徹底解明!横歩取りの最重要テーマ(2018年2月、マイナビ出版、ISBN 978-4-839-964047

脚注

注釈

  1. ^ 郷田真隆など、実際に7級降級を経験しながら後にトッププロとして活躍する例もある。
  2. ^ ちなみに、同い年で後にプロ入り同期となる斎藤慎太郎はこの時点で三段リーグ入りを果たしていた。
  3. ^ 村山はその後も勝ち続け、同年度のNHK杯優勝者となった。
  4. ^ 本戦の対戦相手は順に、戸辺誠行方尚史広瀬章人(準決勝)、村山慈明(決勝)であった。決勝の対・村山戦は、上述NHK杯のリベンジを果たした上で優勝を勝ち取る形となった。
  5. ^ 翌2017年度の第11回にて藤井聡太が全棋士参加棋戦優勝の年少記録を更新する15歳6か月での優勝を果たした。
  6. ^ それまでの低段優勝記録は2008年度の第2回における、阿久津主税(当時六段)であった。
  7. ^ 二次予選から出場した棋士に範囲を広げても、2007年度の第1回における行方尚史・2010年度の第4回における木村一基以来、同棋戦史上3人目であった。
  8. ^ 三浦九段は不参加。将棋ソフト不正使用疑惑
  9. ^ 翌1996年度よりC級1組へと昇級し、1年限りで解消している。

出典

  1. ^ a b c 宮田聖子「竜王戦で“仲良し同世代”とぶつかる八代弥七段は「三枚堂君からはパッタリ連絡がなくなった」 - 観る将棋、読む将棋」『文春オンライン』2021年7月1日。2021年7月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。
  2. ^ a b c d e f 斎藤慎太郎三段と八代弥三段が新四段に」『日本将棋連盟』2012年3月10日。
  3. ^ 朝日新聞DIGITAL・ニュース「八代弥五段、歴代最年少で優勝 朝日杯将棋オープン戦」(村瀬信也 2017年2月11日17時59分)ほか
  4. ^ a b 八代弥六段が七段に昇段」『日本将棋連盟』2019年4月24日。
  5. ^ 平成最後の対局で昇段 八代弥七段(「NHK将棋講座」2019年9月号より)」『NHKテキストView』2019年9月21日。2020年7月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。
  6. ^ 第93期棋聖戦二次予選決勝 屋敷伸之vs八代弥(2022年2月15日、携帯中継など)
  7. ^ 第3期叡王戦 決勝七番勝負 第1局観戦記『save your dream』第7譜 - ニコニコニュースORIGINAL・2018年4月26日
  8. ^ いつか「自分はA級だ」と言える日を目指して【八代六段インタビュー】|将棋コラム|日本将棋連盟”. www.shogi.or.jp. 2020年7月15日閲覧。
  9. ^ 八代弥七段が結婚」『日本将棋連盟』2023年2月16日。
  10. ^ 八代弥四段が五段に昇段」『日本将棋連盟』2015年5月14日。
  11. ^ 八代弥五段が六段に昇段」『日本将棋連盟』2017年2月13日。
  12. ^ 八代弥七段が八段に昇段」『日本将棋連盟』2025年7月11日。
  13. ^ 通算成績(2025年7月10日対局分まで)」『日本将棋連盟』。2025年7月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。
  14. ^ 名人戦・順位戦」『日本将棋連盟』。
  15. ^ 竜王戦」『日本将棋連盟』。
  16. ^ 2012年度棋士成績・記録 - 日本将棋連盟
  17. ^ 2013年度棋士成績・記録 - 日本将棋連盟
  18. ^ 2014年度棋士成績・記録 - 日本将棋連盟
  19. ^ 2015年度棋士成績・記録 - 日本将棋連盟
  20. ^ 2016年度棋士成績・記録 - 日本将棋連盟
  21. ^ 2017年度棋士成績・記録 - 日本将棋連盟
  22. ^ 2018年度棋士成績・記録 - 日本将棋連盟
  23. ^ 2019年度棋士成績・記録 - 日本将棋連盟
  24. ^ 2020年度棋士成績・記録 - 日本将棋連盟
  25. ^ 2021年度棋士成績・記録 - 日本将棋連盟
  26. ^ 通算成績(2022年3月31日対局分まで) - 日本将棋連盟(2022年4月1日時点のアーカイブ)
  27. ^ 2022年度棋士成績・記録 - 日本将棋連盟
  28. ^ 通算成績(2023年3月31日対局分まで) - 日本将棋連盟(2023年4月1日時点のアーカイブ)
  29. ^ 2023年度棋士成績・記録 - 日本将棋連盟
  30. ^ 通算成績(2024年3月31日対局分まで) - 日本将棋連盟(2024年4月1日時点のアーカイブ)
  31. ^ 2023年度棋士成績・記録 - 日本将棋連盟
  32. ^ a b 通算成績(2025年3月31日対局分まで) - 日本将棋連盟(2025年4月1日時点のアーカイブ)
  33. ^ 松本博文「竜王戦1組、快進撃の八代弥七段(31)初優勝 前期挑戦者・佐々木勇気八段(30)2位で決勝T進出 - エキスパート」『Yahoo!ニュース』2025年5月29日。2025年5月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。

関連項目

外部リンク




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