安用寺 孝功(あんようじ たかのり)
安用寺孝功
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/25 04:56 UTC 版)
安用寺 孝功 七段 | |
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名前 | 安用寺 孝功 |
生年月日 | 1974年8月30日(50歳) |
プロ入り年月日 | 1999年10月1日(25歳) |
棋士番号 | 234 |
出身地 | 京都府宇治市 |
所属 | 日本将棋連盟(関西) |
師匠 | 森信雄七段 |
段位 | 七段 |
棋士DB | 安用寺 孝功 |
2025年3月15日現在 |
安用寺 孝功(あんようじ たかのり、1974年8月30日 - )は、将棋棋士。
戦績
1988年のアマ名人戦で、中学2年にして準優勝。これは、ちょうど10年前の塚田泰明に並ぶ快挙であった。その2週間後に奨励会入り[1]。途中、1級から2級へ降級したり、第23回(1998年前期)三段リーグで暫定トップで最終日を迎えながら2連敗して逸機したりするなどの苦難を経験したが、その1年後の第25回(1999年前期)三段リーグで中盤戦を7連勝するなど好調を維持し、最終的に阿久津主税(14勝4敗で優勝)に次ぐ2位の成績(13勝5敗[注釈 1])を修め、奨励会入会から11年をかけてプロ入りを果たす。
2004年度(第30期)棋王戦で予選を勝ち抜き本戦に初出場。内藤國雄・森下卓・鈴木大介らを破りベスト8進出。あと1勝でベスト4に進出して、次年度のシード権を得るところであったが、深浦康市に敗れた。
若手時代は持ち時間が長い順位戦で力を発揮し、プロ入り6年目の2005年度(第64期)では9勝1敗を挙げてC級1組に昇級決定、2007年度(第66期)は8勝2敗で次点。そして、翌2008年度(第67期)でも勝ち星を重ね、最終局まで1局を残した第10回戦(第5回戦は抜け番)・塚田泰明戦で8勝目を挙げB級2組への昇級を決めた。尚、最終局でも長沼洋に勝ち、当期の最終成績は9勝1敗となった。
しかしB級2組昇級以降、それまで得意とされていた順位戦の成績が低迷し始め、昇級から2期目の2010年度(第69期)・2011年度(第70期)と2年連続で3勝7敗[注釈 2]。2013年度(第72期)では終盤の4連敗が響き、3勝7敗で降級点を喫し[注釈 3]、翌2014年度の第73期B級2組でも後半戦で失速し4勝6敗と降級点を消去できず、2015年度(第74期)では開幕から7連敗を喫し、8回戦(鈴木大介戦)・9回戦(島朗戦)と連勝して巻き返したものの降級点圏内を脱出できず最終的に2勝8敗、2つ目の降級点を喫してC級1組に陥落。B級2組への在籍は7年でストップした。
その一方で、プロ入り当初から苦手とされていた早指し棋戦では健闘が見られるようになり、第23期銀河戦(2014年-2015年)では予選で島本亮に、ブロック戦で千葉幸生及び高橋道雄にそれぞれ勝ち、初めて決勝トーナメント(ベスト16)に進出(決勝トーナメントは1回戦で当期優勝者の深浦康市に敗退した)。また、NHK杯戦でも予選初参加の第50回(2000年度)より18回連続で予選敗退していたが、第68回(2018年度)では予選を勝ち抜いて本戦への初出場を決めた。本戦では1回戦で八代弥に勝ったものの2回戦で広瀬章人に敗れた。第69回(2019年度)も予選を勝ち抜いて2年連続の本戦出場を決め、1回戦で谷川浩司に勝ったものの、2回戦で佐藤康光に敗れた。
順位戦ではC級1組に降級して以降も成績不振が顕著となり、降級から2期目(2017年度・第76期)及び5期目(2020年度・第79期)をいずれも2勝8敗で終え、この間勝ち越しも2期連続の指し分けもできなかったため、二度の降級点を喫してC級2組に降級した。
C級2組でも振るわず、降級2期目の2022年度(第81期)から2024年度(第83期)まで3期連続で降級点を喫して順位戦から陥落、2025年度からフリークラスに編入された。フリークラスの在籍期限は編入から10年後の2034年度末(2035年3月31日)となる。
棋風
振り飛車戦法を採用することが多く、飛車を振る場所が多彩な棋風である。三間飛車、相振り飛車のほかに、初手▲5六歩からの中飛車、角道を止めない四間飛車など、あまりオーソドックスではない指し方をすることがある。
人物
- 2006年4月、関西研修会幹事に就任。
- 2012年5月に結婚[2]。
- 2004年5月19日放送のフジテレビ系『トリビアの泉』で、伊藤博文六段(当時)と史上初の大局将棋の対局を行い[3]、計3805手、32時間41分で安用寺が勝利した[4]。対局後に安用寺は「もう二度とやりたくない」と語っていた[4]。
- 2024年8月1日の第83期順位戦 C級2組3回戦(対池永天志六段戦)で、相手駒を取った後にその位置とは異なる位置に駒を動かす「着手地点の誤り」という反則を犯した。反則の概要は「7七の地点」に位置する▲先手・安用寺の角で、「3三の地点」に位置する△後手・池永の角を取りながら「2二の地点」に先手の角を動かし「▲2二角成」としたものである(「部分図」参照)。隣室で対局中に対局相手の後方で安用寺の姿を目にしていた広瀬章人は「昨日の対局中、安用寺七段が突然声を発しながらズッコケた。その拍子に脇息までズッコケていた」と反則発生時の様子をSNSで明かした[5]。
部分図(1) ▽後手・池永
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部分図(1)から「反則」直後の局面 ▽後手・池永
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昇段履歴
昇段規定は、将棋の段級 を参照。
- 1988年奨励会入会 : 6級 =
- 1994年 : 初段
- 1996年 1月 : 三段(第19回奨励会三段リーグ〈1996年度前期〉から三段リーグ参加)
- 1999年10月 1日 : 四段(第25回奨励会三段リーグ成績2位)= プロ入り
- 2005年11月15日 : 五段(勝数規定/公式戦100勝、通算100勝)[6]
- 2009年 2月10日 : 六段(順位戦B級2組昇級、通算168勝129敗)[7][8]
- 2021年 1月26日 : 七段(勝数規定/六段昇段後公式戦150勝、通算318勝332敗)[9][注釈 4]
主な成績
在籍クラス
開始 年度 |
順位戦 出典[11]
|
竜王戦 出典[12]
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期 | 名人 | A級 | B級 | C級 | 期 | 竜王 | 1組 | 2組 | 3組 | 4組 | 5組 | 6組 | 決勝 T |
|||||
1組 | 2組 | 1組 | 2組 | |||||||||||||||
1999 | 58 | 四段昇段前 | 13 | 6組 | -- | 1-1/昇0-1 | ||||||||||||
2000 | 59 | C242 | 4-6 | 14 | 6組 | -- | 1-1/昇1-1 | |||||||||||
2001 | 60 | C231 | 5-5 | 15 | 6組 | -- | 1-1/昇1-1 | |||||||||||
2002 | 61 | C222 | 5-5 | 16 | 6組 | -- | 3-1/昇0-1 | |||||||||||
2003 | 62 | C220 | 8-2 | 17 | 6組 | -- | 2-1/昇3-0 | |||||||||||
2004 | 63 | C207 | 5-5 | 18 | 5組 | -- | 2-1/昇0-1 | |||||||||||
2005 | 64 | C225 | 9-1 | 19 | 5組 | -- | 1-1/昇0-1 | |||||||||||
2006 | 65 | C125 | 6-4 | 20 | 5組 | -- | 2-1/昇0-1 | |||||||||||
2007 | 66 | C115 | 8-2 | 21 | 5組 | -- | 0-1/昇1-1 | |||||||||||
2008 | 67 | C101 | 9-1 | 22 | 5組 | -- | 3-1/昇0-1 | |||||||||||
2009 | 68 | B221 | 5-5 | 23 | 5組 | -- | 2-1/昇1-1 | |||||||||||
2010 | 69 | B212 | 3-7 | 24 | 5組 | -- | 0-1/昇3-1 | |||||||||||
2011 | 70 | B219 | 3-7 | 25 | 5組 | -- | 0-1/昇0-1/残1-0 | |||||||||||
2012 | 71 | B220 | 6-4 | 26 | 5組 | -- | 2-1/昇2-1 | |||||||||||
2013 | 72 | B209x | 3-7 | 27 | 5組 | -- | 0-1/昇5-1 | |||||||||||
2014 | 73 | B224* | 4-6 | 28 | 5組 | -- | 1-1/昇1-1 | |||||||||||
2015 | 74 | B219*x | 2-8 | 29 | 5組 | -- | 0-1/昇1-1 | |||||||||||
2016 | 75 | C103 | 5-5 | 30 | 5組 | -- | 1-1/昇1-1 | |||||||||||
2017 | 76 | C113x | 2-8 | 31 | 5組 | -- | 0-1/昇0-1/残1-0 | |||||||||||
2018 | 77 | C136* | 4-6 | 32 | 5組 | -- | 0-1/昇2-1 | |||||||||||
2019 | 78 | C127* | 5-5 | 33 | 5組 | -- | 0-1/昇1-1 | |||||||||||
2020 | 79 | C119*x | 2-8 | 34 | 5組 | -- | 0-1/昇0-1/残1-0 | |||||||||||
2021 | 80 | C202 | 3-7 | 35 | 5組 | -- | 1-1/昇1-1 | |||||||||||
2022 | 81 | C241x | 3-7 | 36 | 5組 | -- | 0-1/昇0-1/残0-1 | |||||||||||
2023 | 82 | C245*x | 2-8 | 37 | 6組 | -- | 3-1/昇1-1 | |||||||||||
2024 | 83 | C248**x | 3-7 | 38 | ||||||||||||||
2025 | 84 | F編 | 39 | (開始前) | ||||||||||||||
フリークラスの在籍期限 2034年度末まで | ||||||||||||||||||
順位戦、竜王戦の 枠表記 は挑戦者。右欄の数字は勝-敗(番勝負/PO含まず)。 順位戦の右数字はクラス内順位 ( x当期降級点 / *累積降級点 / +降級点消去 ) 順位戦の「F編」はフリークラス編入 /「F宣」は宣言によるフリークラス転出。 竜王戦の 太字 はランキング戦優勝、竜王戦の 組(添字) は棋士以外の枠での出場。 |
年度別成績
![]() | この節の加筆が望まれています。 |
脚注
注釈
- ^ 当期三段リーグは、阿久津(前期成績に基づく順位は8位)・橋本崇載(17位)・宮田敦史(19位)が12勝4敗、安用寺(13位)他2名が11勝5敗の成績で、最終日を迎えた。そのため、安用寺の昇段条件は「阿久津が連敗」「橋本が1敗以上」「宮田が1敗以上」のうちいずれか2つが満たされることであったが、結果として阿久津及び安用寺が連勝・宮田が1勝1敗・橋本が連敗をしたことで、安用寺の逆転となった。
- ^ 第69期は最終局10回戦で安用寺が敗れ田中寅彦・桐山清澄・土佐浩司のうちいずれか2名が勝った場合、安用寺に降級点が付く状況だったが、安用寺自身も含め4名全員が敗れた。翌第70期も最終10回戦で安用寺が敗れ田中が勝った場合、安用寺に降級点が付く状況だったが、安用寺・田中いずれも敗れたため、安用寺は2期連続で降級点を剣ヶ峰で回避する形となった。
- ^ 2勝7敗で迎えた最終局は堀口一史座の休場に伴う不戦勝が内定していたが、畠山成幸・中村修・南芳一・窪田義行のうち1名でも勝った場合、安用寺に降級点が付く状況だった(結果的に南以外の3名が勝利したため、安用寺は降級点を回避できなかった)。
- ^ 2021年1月26日の対局終局後の安用寺の通算成績は、次局である第79期順位戦C級1組10回戦・田村康介七段戦(2021年2月2日対局)の棋譜中継コメント(8手目)より「安用寺の(略)通算成績は318勝332敗(0.489)」[10]。
出典
- ^ 以上、「将棋世界」2000年1月号付録より。
- ^ 安用寺六段の結婚式 - 森信雄のブログ
- ^ “「トリビアの泉」に伊藤六段・安用寺四段が出演”. 公益社団法人日本将棋連盟関西本部. 2012年4月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年2月26日閲覧。
- ^ a b フジテレビトリビア普及委員会『トリビアの泉〜へぇの本〜 9』講談社、2004年。
- ^ チーム広瀬(広瀬章人九段) [@abT00_hirose] (2024年8月2日). "2024年8月2日 午前11時08分の投稿". X(旧Twitter)より2024年8月2日閲覧。
- ^ 「棋士の昇段など - 日本将棋連盟からのお知らせ」『日本将棋連盟』。2005年12月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。
- ^ 「安用寺孝功五段が六段に昇段(2009年2月10日付)」『日本将棋連盟』2009年2月10日。
- ^ 「現役棋士通算成績(2009年2月20日対局分まで)」『日本将棋連盟』。2009年2月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。
- ^ 「安用寺孝功六段が七段に昇段」『日本将棋連盟』2021年1月27日。
- ^ (
要購読契約)「田村-安用寺 | 2021/02/02 第79期順位戦C級1組10回戦」『名人戦棋譜速報』2021年2月2日。
- ^ 「名人戦・順位戦」『日本将棋連盟』。
- ^ 「竜王戦」『日本将棋連盟』。
- ^ 2024年度棋士成績・記録 - 日本将棋連盟
- ^ 通算成績(2025年3月31日対局分まで) - 日本将棋連盟(2025年4月1日時点のアーカイブ)
関連項目
外部リンク
固有名詞の分類
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