佐原の山車行事とは? わかりやすく解説

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佐原の山車行事

名称: 佐原の山車行事
ふりがな さわらのだしぎょうじ
種別1: 風俗習慣
保護団体名: 佐原山車行事伝承保存会
指定年月日 2004.02.16(平成16.02.16)
都道府県(列記): 千葉県
市区町村(列記): 香取市
代表都道府県 千葉県
備考 7月9~18日までの金・土・日曜日八坂神社)、10月第2土曜日中心とする前後3日
解説文: 佐原の山車行事は、千葉県佐原市本宿ほんじゅく】の鎮守である八坂神社新宿しんじゅく】の鎮守である諏訪神社両社祭礼の附祭として行われてた行事で、巨大な人形など飾り付けた数多く豪華な山車佐原囃子調べにのって氏子区内勇壮に曳き回される
 佐原市は、千葉県北東部位置し近世以降利根川舟運によって江戸結びつき市街地流れ小野川両岸佐原河岸とも称され物資集散地として栄えとともに六斎市酒造業盛行などによって経済的な繁栄誇ってきた地域である。この小野川香取街道交差する周辺町並み形成され小野川を境にして東側本宿西側新宿称しそれぞれ十数町内分かれている。佐原では、町人層のこうした経済的な活況背景として、江戸祭礼文化の影響下に、享保年間一七一六三六ころから山車囃子中心とする行列祭礼登場するようになり、その後両宿ならびに町内意匠競い合いながら行事を伝承する中で、近世末期から大人形山車飾り物として現れ今日至っている。
 本宿山車行事は、七月中旬八坂神社祇園祭行われ寺宿【てらじゅく】、田宿【たじゅく】、仁井宿【にいじゅく】、船戸【ふなと】、下仲町しもなかちょう】、上仲町【かみなかちょう】、荒久【あらく】、本川岸【ほんがし】、八日市場ようかいちば】、浜宿【はまじゅく】の一〇町内から山車繰り出される一方新宿山車行事は、十月中旬諏訪神社大祭行われ下新町【しもしんまち】、新上川岸【しんうわがし】、南横宿【みなみよこじゅく】、上宿【かみじゅく】、新橋本【しんはしもと】、下分【しもわけ】、仲川岸【なかがし】、下川岸【したがし】、上中宿【かみなかじゅく】、下宿【しもじゅく】、東関戸【ひがしせきど】、西関戸【にしせきど】、上新町かみしんまち】、北横宿【きたよこじゅく】の一四町内から山車繰り出される。なお、新宿では中宿【なかじゅく】の山車が現在休止中である。
 山車は、いずれも四輪二層構造で、最上部の露台【ろだい】とその下の囃子台とから成る柱間には鳥獣説話などを題材とした重厚な彫刻飾り付けられるまた、露台周囲には幕や注連縄吊り下げられ露台の上には巨大な飾り物配される。この飾り物は、高さ三~五メートルにも及ぶ一人立ち大人形主流で、歴史上の人物取材した人形多く見られる。これらの人形は、胴部差し込んだ昇降させる迫り出し仕掛け」と呼ばれる装置上下動かされるかつては、各町内年々当世風新たな趣向凝らしなどを用いて飾り物製作してきたと伝えられるが、近世末期になると江戸人形職人飾り物の製作を依頼するようになり、等身大人形組み合わせた芝居物語場面象ったものから、一人立ち巨大な大人形へと展開していったとされる。ただし、大人形主流になってはいるものの、本宿山車には今日でも作られ大鷹や大飾り物として登場している。
 山車行事運営は、本宿新宿ともに山車所有する町内から持ち回り選ばれる当番中心に行われる。この当番本宿では山車年番【だしねんばん】、新宿では幣台【へいだい】年番呼び両宿とも任期三年である。年番務め町内は、年番町【ちょう】と呼ばれるまた、前期年番務めた町内を前【ぜん】年番次期年番務め町内を後【あと】年番とし、この三つ町内前後三町【ぜんごさんちょう】と称している。山車運行等の行事計画は、この前三町協議をして決定し行事に際して年番町一切取り仕切る山車行事に関する町内の組織には、古役【こやく】、当役とうやく】、若衆わかしゅう】といった年齢階梯的性格の強い役割があり、山車運行に関して当役責任任されていて、当役長【ちょう】を始めとする十数名の当役がいる。その下に若衆頭を筆頭とする若衆たちがいて、てこ棒や担ぎ棒巧みに山車の曳き回しを行う。古役当役指導助言をする役目で、当役経験者から選ばれる
 山車行事は、両宿とも三日間行われる。行事次第は、年番引継ぎが行われる年とそれ以外の年で異なり前者本祭式、後者例祭式称しそれぞれの山車が自らの町内を回る乱曳【らんび】きや、全町内の山車集まって順列組んだり、所定位置定めて行う番組ばんぐみ行事山車の曳き回し見せ場でもある曲曳【きょくび】きなどが当番町の指揮によって三日間の中で組み合わされ行われる番組行事は、山車勢揃いして氏子区内巡行巡行開始時に囃子順番演奏していく「通し砂切【さんぎり】」などがあり、年番町山車から順次行われるのが決まりである。

佐原の大祭

(佐原の山車行事 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/05/22 21:34 UTC 版)

年番引継ぎ行事のために並んだ山車(秋祭り)

佐原の大祭(さわらのたいさい)は、千葉県香取市佐原の市街地で行われる7月の本宿祇園祭と10月の新宿秋祭りの総称。川越氷川祭常陸國總社宮大祭(石岡のおまつり)とともに関東三大祭りの一つである。2016年12月にユネスコ世界無形文化遺産に登録されている[1]

概要

大人形の例(伊弉那岐尊・田宿区)
山車に巡らされた彫物の例(三国志や龍など・南横宿区)

二層構造の山車の上部(大天上)に、歴史上の人物の大人形や町内でを用いて製作した大きな飾り物を飾り付け、下段(中天上)に「佐原囃子」を演奏する下座連を乗せ、奏でながら町内衆により曳き回される。また、山車の前では手古舞の流れをくむ手踊りが披露される。

飾り物の他に多くの山車の周りには彫物が巡らされ、獅子や龍、物語等を題材にしたものが彫られている。

市街地を流れる小野川をはさみ東側を本宿(ほんじゅく)、西側を新宿(しんじゅく)と呼び、それぞれ別々に祭りが行われる。

  • 本宿地区・八坂神社祇園祭(山車10台)。7月10日以降の金曜、土曜、日曜日 (平成22年から夏祭りの日程が「7月10日以降の金土日」となる)
  • 新宿地区・諏訪神社の秋祭り(山車14台)。10月第2土曜日を中日とする金曜、土曜、日曜日

歴史

佐原は近世以降利根川舟運により河岸として発展してきたが、江戸の祭礼文化の影響のもと、享保年間には山車と囃子を中心とする祭礼が行われるようになった。飾り物については、当初それぞれの町内で趣向を凝らして製作していたが、近世末期に大人形の飾り物が出現し(関戸区)、江戸の人形職人に飾り物の製作を依頼するようになった。佐原の山車と囃子の形態は、市内の小見川地区、東庄町多古町など、茨城県の潮来市鹿嶋市行方市麻生などに見られ、周辺地域の祭礼に大きな影響を与え佐原を中心とする山車文化圏を形成している。

2004年(平成16年)2月6日に「佐原の山車行事」として重要無形民俗文化財に指定された。

2016年(平成28年)12月にユネスコ世界無形文化遺産に登録された[1]

2020年(令和2年)5月2日(土)新型コロナウイルス感染拡大防止のため、7月10日(金)~12日(日)に開催予定だった「令和2年佐原の大祭夏祭り(八坂神社祇園祭)」の中止が発表された。

2020年(令和2年)8月3日(月)新型コロナウイルス感染拡大防止のため、10月9日(金)~11日(日)に開催予定だった「令和2年佐原の大祭秋祭り(諏訪神社秋祭り)」の中止が発表された。

2021年(令和3年)5月21日(金)新型コロナウイルス感染拡大防止のため、7月16日(金)~18日(日)に開催予定だった「令和3年佐原の大祭夏祭り(八坂神社祇園祭)」の中止が発表され2年連続中止となる。

2021年(令和3年)8月10日(火)新型コロナウイルス感染拡大防止のため、10月8日(金)~10日(日)に開催予定だった「令和3年佐原の大祭秋祭り(諏訪神社秋祭り)」の中止が発表され2年連続中止となる。

組織

年番

本宿、新宿それぞれの祭礼を取り仕切るのが「年番(ねんばん)」と呼ばれる町内で、3年間に渡って重責を務める。3年で交代するため年番が周ってくるのに数十年を要する。また、前期に年番を務めた町内を「前年番(ぜんねんばん)」、次に年番を務める町内を「後年番(あとねんばん)」と呼び、年番とあわせ「前後三町(ぜんごさんちょう)」と呼ばれる。山車の運行などの行事計画は前後三町が協議して決定し、行事については年番が一切を取り仕切る。年番の引き継ぎの行事がある年の祭礼を「本祭」、それ以外の年の祭礼を「例祭」と呼ぶ。

町内の組織

山車行事の町内での組織はおおむね以下のとおり。

  • 区長(くちょう)・・・町内を代表する者。
  • 古役(こやく)・・・・当役を終えた者。
  • 当役(とうやく)・・・若連を経験した者の中から10人前後が選ばれる。町内の山車行事を運営する。責任者は当役長。
  • 若連(わかれん)(若衆)・・・実際に山車を曳き回す若者の集まり。責任者は若連(若衆)頭(かしら)。

曳き廻し・行事

年番引き継ぎ行事が行われない例祭の年には、町内ごとにルートを決めて曳き廻される「乱曳き(らんびき)」や山車の曳き廻しの見せ場の「曲曳き(きょくびき)」が行われる。曲曳きには、前輪を軸にして山車を時計回りに回転させる「のの字廻し」、楕円形を描くように山車を引き回す「こばん廻し」、数十メートルの距離を緩急をつけて直線的に往復する「そろばん曳き」がある。年番引き継ぎ行事のある本祭の年には、全町内の山車が年番町を先頭に順列を組み巡行し、所定の位置に山車が並び下座連による通し「砂切」の演奏などが行われる番組行事が執り行われる。

山車

  • 本宿祇園祭の山車と下座連
町内名 写 真 飾り物 額 字 主な彫物 下座連 備考
上仲町(かみなかちょう)
太田道灌 德威 二十四孝 東関戸連中 山車年番
荒久(あらく)
経津主命 威德 獅子 野田芸座連 後年番
本川岸(ほんがし)
天鈿女命 咲樂 日本書紀太閤記太平記 新和下座連
八日市場(ようかいちば)
の彫刻 太閤記 内野芸座連
浜宿(はまじゅく)
武甕槌命 柔和 獅子 与倉芸座連
寺宿(てらじゅく)
金時山姥 幣薹 佐原囃子連中
田宿(たじゅく)
伊弉那岐尊 雍泰 獅子 清水芸座連 -
仁井宿(にいじゅく)
仁愛 獅子、鷹、龍 潮来芸座連 -
船戸(ふなど)
神武 烝衎 酒呑童子羅生門金時山姥三上山 源囃子連中 -
下仲町(しもなかちょう)
菅原道真 頌德 鞍馬山、若木勧進帳 如月会 前年番
  • 新宿秋祭りの山車と下座連
町内名 写 真 飾り物 額 字 主な彫物 下座連 備考
仲川岸(なかがし)
神武天皇 博如天 太平記川中島作り 佐原囃子連中 山車年番
下川岸(したがし)
素盞鳴尊 宏遠 日本神話 清水芸座連 後年番
上中宿(かみなかじゅく)
鎮西八郎為朝 富士山の彫物 富士の巻狩り 和楽会
下宿(しもじゅく)
源頼義 誠意 平家物語 分内野下座連
東関戸(ひがしせきど)   大楠公 純正 太平記 東関戸連中
西関戸(にしせきど)
瓊々杵尊 神威赫奕 唐子 雄風會
上新町(かみしんまち)
諏訪大神 敬神 祭好会鹿嶋芸座連
北横宿(きたよこじゅく)
日本武尊 愛國 日本書紀 源囃子連中
下新町(しもしんまち)
浦嶋太郎 恩波 水滸伝 牧野下座連
新上川岸(しんうわがし)
牛天神 上河岸 前九年絵巻、平家物語酒呑童子 潮風會囃子連
南横宿(みなみよこじゅく)
仁徳天皇 高きやに昇りて見れば煙立つ民のかまどはにぎわいにけり 三国志 あらく囃子連 -
上宿(かみじゅく)
源義経 智勇 獅子 寺宿囃子連 -
新橋本(しんはしもと)
小野道風 雲龍 野田芸座連 -
下分(しもわけ)
小楠公 下分 獅子 潮来芸座連 前年番
中宿(なかじゅく) (山車破損の為出ていない) 桃太郎 豐煙

関連施設


参考文献

  • 月刊文化財486号(平成16年3月)

脚注

  1. ^ a b 佐原の山車行事 ユネスコ無形文化遺産登録決定”. 香取市 (2016年12月1日). 2017年9月25日閲覧。

関連項目

近郊の山車祭

外部リンク



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