自然
「自然」とは、「人間が作ったもの」でも「人間が手を加えたもの」でも、「人間自身」でもない、それ以外のあらゆるもののことである。簡単にいえば「人間が直接関与していない全ての存在や現象」を意味する表現である。
人間が造成したわけではない山河などの地形、人間が植えたわけではない樹木や草花などの植生、人間の力が及ばない天体の運行、気象現象、人間の介在を必要としない野生生物の営み(生態系)、あるいは元素や物理法則など、天地万物が「自然」に含まれる。
「自然」の対義語は「人工」「人為」「作為」などである。要するに「自然」は「人間」と対比されている。たとえば「自然災害」は「人為災害」と対比される。自然が織りなす世界は「自然界」と呼ばれ、人間が営む世界である「人間界」と対比される。ただし「自然界」は、「人間界」を包含する広い概念として用いられることもある。
意図的に変えようとしていない「本来のあり方」や「自ずとそうなるさま」は、形容詞や副詞として「自然である」「自然とそうなる」のように表現される。
「自然」の読み方
「自然」の読み方は一般的に「しぜん」であるが、古くは「じねん」とも読んだ。特に仏教の用語として扱われる場合に「じねん」と読まれることが多い。今日でも「自然薯(じねんじょ)」などにその名残が見られる。「自然」の類義語
「自然(しぜん)」の類義語として「天然」「野生」「本性」「生得」「ネイチャー」「ナチュラル」などが挙げられる。「天然」は「人の手が加わっていない」「自然のままの状態である」ことを意味する言葉であり、ほぼ「自然」と同義である。「自然」ほど多義的ではないため誤解を生みにくい表現といえる。
「野生」は動植物が自然界において生を営んでいるさま、つまり「生き物が人の手が加わっていない状況で生きている」さまを意味する言葉である。
「本性」や「生得」は「本来(生まれつき)備わっている性質」を意味する言葉である。つまり作為的に変えようとしていない自然な状態のことである。
「ネイチャー(nature)」は「自然」に対応する意味を持つ英語の名詞である。生まれつきのものという意味を持つラテン語の「nascor」を語源とする。
「ナチュラル(natural)」は「nature」の形容詞形であり、「自然の」「自然な」または「生まれつきの」という意味の英単語である。「ナチュラルメイク」のような表現では「誇張やわざとらしさがない」といった意味合いで用いられる。
「自然」を含む様々な用語の解説
自然数とは
「自然数」とは、数学において「正の整数」を意味する用語である。具体的に言うと「1、2、3…」のように1を足していくと得られる数字を指す。0(ゼロ)や0.5などの少数、1/3などの分数は含まれない。自然薯とは
「自然薯(じねんじょ)」とは、ヤマノイモの別名であり、山野に自生する(野生の)山芋のことである。ヤマノイモ科の多年生つる草で、日本原産。すり下ろして「とろろ芋」にすると強い粘り気を生じる。食材としては滋養強壮が期待できる美味として珍重され、薬用としては「山薬」という漢方名でさまざまな効用が期待される。自然史博物館とは
「自然史博物館」とは、自然の成り立ちや歴史、自然の営みやメカニズムなどについて、資料の展示などによって体系的に教え、人々の教養に資する施設のことである。日本の「国立科学博物館」は(名前とは裏腹に)国内の代表的な自然史博物館の筆頭に挙げられる。他にも全国各地に「自然史博物館」の名を関する博物館がある。自然公園とは
「自然公園」とは、法令「自然公園法」に基づき定められた国立公園、国定公園、および都道府県立自然公園の総称である。「自然公園法」第1条によれば、自然公園は「優れた自然の風景地を保護するとともに、その利用の増進を図ることにより、国民の保健、休養及び教化に資するとともに、生物の多様性の確保に寄与することを目的とする」。
自然公園は、公有地に限らず私有地に対して指定することが可能である。たとえば「日光国立公園」は「日光東照宮」をはじめとするいくつかの寺社、および複数箇所の温泉郷などを範囲に含んでいる。
自然災害とは
「自然災害」とは、自然現象として発生して人間社会に影響を与える災難や被害の総称である。「天災」ともいう。「人為災害」(人の営みによって発生する災害)と対比される。自然災害の例としては、地震、台風、津波、噴火、洪水、地すべり、竜巻、落雷、暴風雨なども挙げられる。落雷などの自然発火により生じた山火事(山林火災)も自然災害である。
「災害対策基本法」第2条では、「暴風、竜巻、豪雨、豪雪、洪水、崖崩れ、土石流、高潮、地震、津波、噴火、地滑りその他の異常な自然現象又は大規模な火事若しくは爆発その他(攻略)」が「災害」と定義している。「防風~地滑り」の部分は「自然災害」と明記こそされていないものの「自然災害」のことであると解釈できる。
「被災者生活再建支援法」第2条では、「暴風、豪雨、豪雪、洪水、高潮、地震、津波、噴火その他の異常な自然現象により生ずる被害」が「自然災害」であると明確に定義されている。
し‐ぜん【史前】
し‐ぜん【四善】
し‐ぜん【四禅】
し‐ぜん【自然】
読み方:しぜん
[名]
1 山や川、草、木など、人間と人間の手の加わったものを除いた、この世のあらゆるもの。「—に親しむ」「郊外には—がまだ残っている」
3 人間の手の加わらない、そのもの本来のありのままの状態。天然。「野菜には—の甘みがある」
4 そのものに本来備わっている性質。天性。本性。「人間の—の欲求」
5 哲学で、
㋐他の力に依存せず、自らの内に生成・変化・消滅の原理を有するもの。
㋑精神とは区別された物質的世界。もしくは自由を原理とする本体の世界に対し、因果的必然的法則の下にある現象的世界。経験の対象となる一切の現象。
1 言動にわざとらしさや無理のないさま。「気どらない—な態度」「—に振る舞う」
2 物事が本来あるとおりであるさま。当然。「こうなるのも—な成り行きだ」
[派生] しぜんさ[名]
[副]
1 ことさら意識したり、手を加えたりせずに事態が進むさま。また、当然の結果としてそうなるさま。おのずから。ひとりでに。「無口だから—(と)友だちも少ない」「大人になれば—(と)わかる」
「都へ上らばやと思ひしが、—舟なくてはいかがあるべきとて」〈伽・一寸法師〉
3 たまたま。偶然。
し‐ぜん【至善】
しぜん 【自然】
しぜんと同じ種類の言葉
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