三省堂 大辞林 |
もじ もぢ 1 【▼綟/▼綟子】
もじ もぢ 1 【▼錑】
もじ 1 【文字】
(2)文章。また、読み書きや学問をいう。
「並(ならび)に―のある人であつた/北条霞亭(鴎外)」
(3)家紋の一。字を図案化したもの。一文字・山文字など。
(4)言葉。用語。
「下衆(げす)の詞には、必ず―余りたり/枕草子 6」
(5)仮名で表された音の数。音節。
「うたの―も定まらず/古今(仮名序)」
(6)ある語の後半を省き、その代わりに添えていう語。そのものを品よく婉曲に表すのに用いられる。上に接頭語「お」を付けていうこともある。女房詞の一つで、文字言葉といわれるもの。「湯―」「髪(か)―」「そ―」「おは―」など。
もじ 【門司】
物語要素事典 |
文字
★1.虫喰いによる文字。
『今物語』第35話 蓮花王という童が七歳で死に、遺骸を帳(とばり)の中に入れたところ、まもなく虫が帳を喰った。見ると「帰命蓮華王、大聖観自在、広度衆生界、父母善知識」と喰って、果ての文字の所に虫が死んでいた〔*同第34話にも、虫喰いとは明記せぬが、木を割ると黒みがあり「南無阿弥陀仏」の文字だった、との説話がある〕。
『北野天神縁起』 円融院の御代、七年のうちに三度も内裏が焼けた。その折の内裏造営工事の時、大工が鉋をかけた南殿(紫宸殿)の裏板に一夜のうちに虫が喰って文字の形をなした。それは「つくるともまたも焼けなむ菅原やむねのいたまのあらぬかぎりは」と判読でき、菅原道真の霊が「北野の社を修造せよ」と要求した歌だった〔*『大鏡』「時平伝」に類話〕。
『熊野の御本地のさうし』(御伽草子) ちけん聖が読経しようと机に向かうと、文字の形の虫喰いがあり、「むなしごのすみくる山を聖とて木の葉かきわけ尋ね給へよ」と読めた。ちけん聖は、この歌にしたがって山を探し、三歳ほどの男児を見つける。男児は善財王の王子だったので、ちけん聖は王子を養い育て、王子七歳の時、善財王の宮廷へ送り、父子の対面をさせた〔*『神道集』巻2-6「熊野権現の事」では、蜘蛛が糸で文字を書いた、とする〕。
『御曹子島渡』(御伽草子) 御曹子義経は大日の法という兵法の巻物を見るため、千島の都のかねひら大王のもとへ到り、ひそかに巻物を書き写す。写し終わると、巻物は白紙になってしまう。
『南総里見八犬伝』第9輯巻之12上第114回 行方不明の浜路姫の部屋から、犬江親兵衛に宛てた艶書が見つかるが、それは妙椿尼の幻術によって作られたもので、後に見ると文字が消え白紙になっていた。
『南総里見八犬伝』第9輯巻之52第180勝回中編 丶大法師が、白浜に流れ着いた沈の木を刻み四天神王像を造って安房国の守護神とし、仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌の八つの珠を、その玉眼としようと考える。しかしその時、八犬士の持つ珠はすべて文字が消えて白珠となっていた〔*同時に八犬士の身体の痣も消えていた〕。
『大岡政談』「村井長庵の記」 悪医者村井長庵は、質両替商伊勢屋の養子千太郎から五十両を借りて、受け取り証文を渡すが、後日訪れた千太郎に対し「汝は知らぬ人。五十両借りた覚えもなし」と白を切る。千太郎が怒って証文をつきつけると、それは白紙に変じていた。長庵は烏賊墨で証文を書き、烏賊墨の文字は時間がたてば消えるのだった。
『本朝桜陰比事』(井原西鶴)巻3-2「手形は消て正直が立」 問屋が、ある人に銀子五貫目を貸したが、八年たっても返済しない。「借用証書の手形を持って来れば返済しよう」と言うので、問屋が手形を入れた箱を開けると、白紙になっている。烏賊墨に粉糊を混ぜて書いた文字は、三年たてば消えるのだった。
★2c.消えぬ文字を消す方法。
『力(りき)ばか』(小泉八雲『怪談』) 麹町の金持ちの屋敷に、左掌に「力ばか」という文字の書かれた男児が生まれた。この文字を消すには、前世の身体が埋めてある墓の土で膚をこするしか手だてがないので、下男たちが、九ヵ月程前に死んだ牛込の「力ばか」の家を捜し尋ね、墓の土を少し取って持ち帰った。
『南総里見八犬伝』肇輯巻之5第9回 伏姫は夏の伏日(=夏の末の最も暑い頃)に誕生したので、父里見義実が伏姫と名づけたのだったが、「伏」の字は人にして犬に従うのであり、伏姫は生まれながらに、犬の八房と夫婦となる運命に定まっていたのだった。また、子犬の八房を育てた狸は別名「玉面」と言い、これを訓読みすれば「たまつら」で、里見家を呪う玉梓(たまづさ)と似通い、不吉なことであった。
『南総里見八犬伝』第2輯巻之2第14回 八房が銃弾に倒れ(*→〔穴〕1)、伏姫が自害して、数珠の八つの玉が八方に飛び去った。「八房」の二文字は分解して配列すれば、一尸八方「ひとりのしかばねはっぽう(にいたる)」となり、伏姫の死が、やがて関東の諸地方からの八犬士の出現をもたらすことを暗示していた。
『白楽天』(能) 「歌とは何か」と問う白楽天に、住吉明神の化身である漁翁が「天竺の霊文を唐土の詩賦とし、唐土の詩賦を日本の歌とする。三国をやわらげ来たるゆえ、大いにやわらぐる歌と書いて大和歌と読む」と説く。
『義経千本桜』2段目「渡海屋」 渡海屋銀平が、刀に手をかける相模五郎主従に「刀脇差は人を切るものではなく、身を守るもの。武士の武の字は、戈(ほこ)を止(とどむ)ると書く」と言う。
★4.文字の読み方。
『一尼公(つれなしのあまぎみ)』(御伽草子) 独り住みゆえ「つれなしの尼公」と呼ばれる尼が、「一」に「つれなし」の訓があるので自分の名を「一」と表記する。和泉国から京の尼公に手紙を届ける使いが宛て名「一尼公」の読み方を忘れ、往来の人に問うが、誰も正しく読めず、使いは空しく手紙を持ち帰る。
『平林』(落語) 平林という家へ使いに行く男が、往来の人々に「平林」と書いた紙を見せ、読み方を尋ねる。「たいらばやし」「ひらりん」「一八十の木木(いちはちじゅうのもくもく)」「一つと八つで十木木(ひとつとやっつでとっきっき)」などと教えられ、男はそれらの読みを連呼して平林家を捜す。
★5a.文字の力。
『蒙求』222「蒼頡制字」 黄帝の時代。蒼頡(そうけつ・そうきつ)がはじめて文字を作った。すると鬼どもは、自分たちの罪が文書に記録され、弾劾されるのを恐れて、夜泣いた。
『文字禍』(中島敦) 紀元前七世紀。ニネヴェのエリバ老博士は、単なる線の集合にすぎぬ文字に一定の音と意味を持たせるものは、文字の霊であることを発見した。そして調査の結果、文字を覚えた人々は身体が虚弱になり、頭が悪くなり、心が臆病になることが明らかになり、老博士は「文字の崇拝を止めるべし」との研究報告をまとめた。文字の霊は、ただちに老博士に復讐した→〔地震〕1。
★5b.特定の文字の力。
『西遊記』百回本第66回 弥勒仏祖の召し使う黄眉童子が逃げ出して悪事を働くので、黄眉童子を瓜畑におびき寄せて捕らえるべく、弥勒は孫悟空の左掌に「禁」の字を書く。悟空が拳を開いて見せると、黄眉童子は「禁」字のまじないにかけられ、退くことも武器を使うことも忘れて、ひたすら悟空の後を追う→〔腹〕1。
『捜神記』巻3-9(通巻57話) 劉柔という人が寝ていて鼠に左手中指を噛まれる。占者淳于智が「鼠は君を殺そうとしたのだ。今度来たら逆に殺してやろう」と言い、劉柔の手に一寸二分ほどの大きさの「田」の字を朱で書き、「この手を出して寝よ」と教える。そのとおりにすると、翌朝大鼠が枕元で死んでいた。
『あいごの若』(説経)5段目 十五歳の愛護の若は、母を亡くし父にも見捨てられて絶望し、きりうが滝に投身する。その時、若は左指を食い切り、岩のくぼみに血をため、柳を筆として小袖に恨み言を記し、「神蔵やきりうが滝へ身を投ぐる語り伝へよ杉の群立ち」の歌を残した。
『伊勢物語』第24段 宮仕えに出た夫が三年ぶりに家へ戻るが、妻がすでに別の男と結婚したと知って、去る。妻は夫のあとを追い、力尽きて清水のそばに倒れ、指の血で岩に「あひ思はで離れにし人をとどめかね我が身は今ぞ消え果てぬめる」と書いて死ぬ。
『南総里見八犬伝』第6輯巻之4第57回 文明十一年(1479)五月十六日未明、犬坂毛野は、父や兄たちの仇馬加大記一族を対牛楼で皆殺しにした。その時毛野は壁に、仇討ちの趣意と自らの姓名など五十余文字を、敵の血で書き留めた。
『緋色の研究』(ドイル) ジェファースンは、恋人を奪い死にいたらしめた二人の男をつけねらい、二十年後に復讐を遂げる。彼は、二つの殺人現場に自らの血で「RACHE(復讐)」と書き残し、捜査の攪乱をはかる。
『保元物語』下「新院御経沈めの事」 讃岐国に配流された崇徳院は、指先から血をしたたらせて五部の大乗経を三年間で書写し、都近くの社寺に納めたいと願うが拒否される。院は髪も剃らず爪も切らず、生きながら天狗の姿になって「我、日本国の大魔縁とならん」と祈り、舌先を食い切って流れる血で大乗経の奥に誓文を記す。
『カター・サリット・サーガラ』「『ブリハット・カター』因縁譚」 かつてシヴァ神が語った物語をカーナブーティが口誦し、それを大詩人グナーディヤが七年間で七千頌の「ブリハット・カター」となして、墨がなかったため自らの血で書いた。しかしサータヴァーハナ王がこの物語を軽んじたので、グナーディヤは六千頌を焼き捨て、一千頌のみを残した。
『かるかや』(説経)「高野の巻」 弘法大師空海が天竺目ざして流沙川を越えると、文殊菩薩が童子に変じて現れ、空の雲に「阿毘羅吽欠」の文字を書く。空海は流れる水に「龍」の字を書き、点を打つと、「龍」の眼のところに筆が当り、洪水が起こる。
『弘法大師の書』(小泉八雲『知られざる日本の面影』) 弘法大師が少年(文殊菩薩の化身)に請われて、空に文字を書き、川に文字を書く。少年が「私もやってみよう」と言って川に「龍」の字を書くが、点が一つ打ってなかった。弘法大師が点を打つと、「龍」の字は本物の龍となって昇天した。
★8.形が類似した文字。
『今昔物語集』巻28-29 博士の紀長谷雄は、陰陽師から「某月某日に物忌みせよ」と注意されたが、それを忘れた。その日、長谷雄邸では怪事が起こった(*→〔見間違い〕2)。人々は、「博士なのに『忌』と『忘』を間違え、『(物)忌ノ日』が『忘ル日』になった」と言った。
*「雷」と「電」・「太」と「犬」→〔書き間違い〕1の『剪燈新話』・『ドラえもん』。
★9.筆跡。
『球形の荒野』(松本清張) 昭和三十六年。もと外交官野上顕一郎は、約二十年ぶりにひそかに日本に戻った。彼は奈良の古寺を訪れ、芳名帳に変名で記帳する。ある男がそれを見て、特徴ある筆跡から、野上が日本に来ていることを察知する。男はもと軍人であり、野上を、日本を敗戦に導いた売国奴と見なしていた(*→〔死〕4)。男は、野上を殺そうと、つけねらう〔*野上は無事で、日本訪問の目的である娘との対面を果たし、国外へ去った〕。
★10.文字の起源。
『蒙求』222「蒼頡制字」 昔、黄帝の臣下蒼頡(そうけつ・そうきつ)が、砂上についた鳥の足跡の形を見て、文字を作った。それまで人間は純朴だったが、文字を知るとともに偽りが芽生えた→〔落下〕7。
隠語大辞典 |
もじ
モヂ
文字
名字辞典 |
JMnedict |
漢字辞典 |
出典:漢字辞典 |
綟
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