食品
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/04/05 07:51 UTC 版)
概説
「食糧」と「食品」と「食物」といった近接した意味の用語があるが、おおむね、「食糧」は食品よりも材料寄りの概念で、食物は食品が調理されたものとされる[2]。例えばイネから収穫した米(イネの実)はそのままでは「食糧」であるが、それを精米すると「食品」という位置づけになり、精米された米を炊飯すると「ご飯」(米飯)という「食物」になる[2]。ただし「食物」という表現は、指す範囲がはっきりせず、漠然と用いられる傾向がある[2]。
食品には、さまざまな分類法がある。植物性食品・動物性食品といった大分類以外にも、タンパク質性食品・デンプン性食品・脂肪性食品といった栄養学的分類、生鮮食品・加工食品という加工状態による分類、醸造品・缶詰食品・レトルト食品・冷凍食品といった加工法による分類法などがある。
食品は安全・栄養・経済・実用・嗜好などの価値で評価・分析できる。食品は、品質低下の防止、輸送・供給の安定、食の安全、栄養価の保持などのために保存が行われている。食品をそのまま保存する方法には、冷蔵、冷凍、包装、乾燥などの方法があり、加工した上で保存する方法としては塩蔵、砂糖漬け、酢漬け、醤油・味噌づけ、瓶詰・缶詰などがある。
食品の定義
日本
日本食品衛生法第4条は「この法律で食品とは、全ての飲食物をいう。ただし、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和三十五年法律第百四十五号)に規定する医薬品、医薬部外品及び再生医療等製品は、これを含まない。」と規定する[4][注 1]。食品安全基本法2条における「食品」の定義も同様である。
米国
米国の制度上の分類では「食品及び栄養摂取の目的で口から入るもの」について主に保健福祉省(Department of Health and Human Services、HHS)のアメリカ食品医薬品局(Food and Drug Administration、FDA)の食品安全・応用栄養センター(Center for Food Safety and Applied Nutrition、CFSAN)の所管としている[6]。
食品の分類
主な分類に以下のようなものがある。
- 大別的分類:植物性食品 / 動物性食品 / 合成食品[2]
- 細分的分類(植物・動物などの細分):穀類 / 種・実類 / 芋類 / 豆類 / キノコ類、また野菜類 / 果実類。魚介類 / 鳥獣肉類 / 卵類 / 乳類 。海藻類 等[2]
- 栄養学的分類:タンパク質性食品 / デンプン性食品 / 脂肪性食品...[2]
- 加工の有無による分類 : 生鮮食品 / 加工食品[2]
- 食習慣上の分類:主食品 / 副食品 / 嗜好品 / 調味料 [2]
- 生産形態による分類:農産食品 / 畜産食品 / 水産食品[2]。 また「天然品 / 養殖品」[2]
- 加工法とパッケージングによる分類:醸造品 / 缶詰食品 / レトルト食品 / 冷凍食品 / フリーズドライ食品[2]
- 調理形態による分類 : インスタント食品 / チルド食品 / キット食品 / 調理済み食品[2]
法制度上の分類
日本
日本の制度では食品は医薬品などと区別され、食品はさらに一般食品と保健機能食品(特定保健用食品及び栄養機能食品)に分けられる[6]。
米国
米国の制度では食品は一般食品、添加物、栄養補助食品、医療食に分類される[6]。
コーデックス食品分類システム
国際食品規格委員会のコーデックス食品分類システム(Food Category System: FCS)では16種類の食品に分類される[7]。
- 乳製品及び類似製品
- 油脂及び脂肪エマルジョン
- シャーベット及びソルベを含む食用氷
- 果実及び野菜(キノコ類、根・塊茎、豆類・マメ科植物、及びアロエを含む)、海藻、並びに種実類
- 菓子類
- ベーカリー製品を除く穀粒、根・塊茎、豆類、マメ科植物及びヤシの中果皮又は柔らかい芯に由来する穀物及び穀物製品
- ベーカリー製品
- 家禽肉及び猟鳥獣肉を含む食肉及び食肉製品
- 軟体動物、甲殻類、及び棘皮動物を含む魚類・水産製品
- 卵及び卵製品
- 殻付きの生卵(10.1)、生卵の代わりになる製品(10.2)、その他の卵製品(10.3及び10.4)など[7]。
- ハチミツを含む甘味料
- 食塩、香辛料、スープ、ソース、サラダ、タンパク質製品
- 特殊栄養用途食品
- コーデックス食品分類システムでは「特定の身体的又は生理的状態及び/又は特定の疾患又は障害を持つことによる特殊な食事上の要件を満たす ために、特別に加工又は調整された特殊用途食品」を「特殊栄養用途食品」という[7]。
- 乳製品を除く飲料
- そのまま食べられる香味製品
- 調理済み食品
- 他の食品分類に含まれない食品[7]。
栄養学上の分類
日本では、栄養による食品の6つの基礎食品群による分類がしばしば使われる。
群 | 食品 | 備考 |
---|---|---|
第1群 | 魚、肉、卵、大豆、大豆食品 | 主にたんぱく質の供給源。筋肉やさまざまな組織をつくるもの。 |
第2群 | 牛乳、乳製品、海藻、小魚類 | 主にカルシウムの供給源。骨や歯をつくり、体の各機能を調節するもの。 |
第3群 | 緑黄色野菜 | 主にカロチンの供給源。皮膚や粘膜を保護し、体の各機能を調節するもの。 |
第4群 | 淡色野菜、果物 | 主にビタミンCの供給源。体の各機能を調節するもの。 |
第5群 | 砂糖、穀類、芋類 | 主に炭水化物の供給源。エネルギー源となるもの。 |
第6群 | 油脂類、脂肪の多い食品 | 主に脂肪の供給源。エネルギー源となるもの。 |
注釈
- ^ 法改正前の食品衛生法第4条では、「この法律で食品とは、すべての飲食物をいう。ただし、医薬品医療機器等法(昭和35年法律第145号)に規定する医薬品及び医薬部外品は、これを含まない。」と規定していた[5]。
出典
- ^ 他言語では、羅: alimentum 独: Lebensmittelなど。
- ^ a b c d e f g h i j k l m 小学館『日本大百科全書』「食品」河野友美 執筆。
- ^ 広辞苑第6版
- ^ “用語解説(食品ロス参照)”. 京都府. 2020年6月1日閲覧。
- ^ “食品衛生法(昭和二十二年十二月二十四日法律第二百三十三号)”. e-Gov法令検索. 総務省行政管理局. 2009年11月30日閲覧。
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